【名古屋グランパス✖アビスパ福岡】変化かノリか?~2021.02.28(第一節)
長いシーズンがスタートした。2021シーズンの開幕の相手は昇格組のアビスパ福岡。「堅守速攻」「奪取速攻」を売りに前評判も高くJ1に乗り込んで来た。
スタメンは以下の通り
福岡の形
福岡は名古屋の最終ラインがボールを持って溜めを作っていると、ファンマとメンデスが2CBにプレッシャーに行く。その時に2CH(稲垣、米本)が前を向く事を塞ぐ役割を“石津”とCHのどちらか一人が担っていた。石津は成瀬が低い位置の時は稲垣の前に立つ。そうしなければいけなかったのはCHの一人が柿谷に楔が入らないようにマークについておくことを徹底したからだ。
成瀬とマテウスがサイドで推進力をつけようとビルドアップの最中に上がる素振を見せれば石津はセンターを絞めずにワイドへ開いて引いていく。そうすると中央が空く為に福岡の柿谷をマークしていない方の選手はスライドすることになる。そうなると逆の選手までスライドしてくる形になりノーリスクでサイドへの展開が可能に。名古屋としては柿谷がいない方へ展開すればスペースが使い放題な状態となっていた。
○なぜ福岡はこの形だったのか
結果的に福岡は後半の数回のチャンスしかなかったわけだったが、そもそも前述にある通りパッとみるとマイナス面しか出てないような形を取ったのか?
①縦の渋滞のメリットがない
名古屋はSBとSHが縦関係になってからでも攻撃のスイッチを入れられる。外で縦関係になることで相手のブロックは広がり、ハーフスペースも使いやすくなり2列目の選手がプレーする幅を横方向に取れる。崩しの幅も広がる。しかし、福岡は縦の渋滞が発生してももう一枚崩しに選手を足すことができない。メンデスとファンマでは地上戦での引き出しが限定されており縦の渋滞を発生させるメリットがなかった。
但し、金森が投入されてからはハーフスペースに侵入する意図が明確になりオウンゴールを誘発した。
②攻撃時、ボール方向の単一性
福岡の攻撃を見ていると縦にロングボール、落とすのも縦方向。溜めをつくっても鋭角な縦方向にパスや侵入。福岡の「速さ」はチームの時間が速いわけではなく、プレーのベクトルが連続して同じ方向の為に早く感じるように見えるマジックのようなものだった。結果的にプレーが遅く見えても時間が速いチームや、J1に居続ける同じ方向を使って戦ってくるチームを相手にしていた名古屋にとっては昨シーズンのFC東京や柏と対戦ほど脅威は感じなかったかもしれない。
福岡としては…
前半で石津が交代しという事を見ると、福岡としてはこの形で1点取って残りは引いていこうというプランが崩壊してしまったんだと思う。
しかし、77分にメンデスが放ったシュートまでの展開は福岡が想定してる理想の形を取れていた。前半は相馬の守備も光った為、ああいった展開が作れなかったのも悔しい所だろう。
名古屋側のポイント
ざっと対戦相手の振り返りが終わった所で、名古屋側のポイントを振り返る。
○この試合でのシステム
昨シーズンと大枠は変わらず、4231、442という綺麗な表現はできず、中央1.5列目とCFがラインを作ってお互いフレキシブルに動く。特に今回は柿谷を支点に山崎が一番最初に動き出す。
去年と違う点があるとすれば受ける山崎のプレーの基準が浮いてるスペースに入って受ける意識がかなりある点だ。
2020年山崎シーズンヒートマップ
アビスパ戦ヒートマップ
(引用元:sofascore)
受け方も昨シーズンのように受けたいところで待つのではなく、「攻撃のスイッチとなる瞬間に点で入ってくる」それをされると相手のDFが瞬間的にずれを起こしてくる。
○山崎が点で入ることでどうなったのか?
昨シーズンはハイプレスの脱出の際、最終ラインで逆まで流してスライドし直していてからサイドで推進力を持たせた名古屋だったが、今回は相手のハイプレスに対して縦のスペースに早く出しても山崎自身がそれを感じてくれるため、相手の同サイドのサイドバックが前目にプレッシャーに行くことがし辛くなった。吉田やマテウスがプレッシャーの中で縦に出したら画面外から山崎が受けに来たシーンは印象に残っているはずだ。そこから中央の柿谷に渡ることで「速い攻撃且つ、攻撃方向の左右の選択ができるようになった。」
阿部とシャビエルに比べてゴールまでのビジョンが強い柿谷と山崎を組ませたことで速い攻撃の引き出しが増えた。
王様には有能な軍師がつきもの
○守備の意識改革?
福岡のサイドが1レーン内側に立つシステムだからかもしれないが、今回は守備の意識が変わったように見えた。ピッチ内でのプレッシャーに行く行かない論争はなくなり、センターが詰めればそれに合わせて全体がスライドし、内側に立つサイドバックを飛ばされて大外に流されそうになれば相馬やマテウスがきちんと守備をする。
少しだけ守備が整理されたように見えた(だけかもしれない。)
○変わらぬサイドのユニット攻撃とサイドバック
サイドでの有利の作り方は変わらず、全員が内側も外側も走り込める三角形でカットインも匂わせる。その場面で良くなったことは崩すユニットの逆側の選手が1レーン内側に立てるようになった事だ。
まとめ
アビスパが試合強度慣れしてない所もあり、慣れる前に1点取ってしまったので嚙み合わせの妙は見れなかった。メンデスのヘディングがゴールポストに当たったシーンは斎藤ではなく相馬がスタメンで起用されたのが分かるシーンのようにも思えた。
とにかく今年は「選択肢を増やす」という所に注目して攻撃は見ると面白いかもしれない。
過密日程で「新加入選手はなれるまで!」なんて言ってられない。チームでの崩しなんかは去年より整理された部分は確実に見えたので、それを成功体験に早く持っていけることを願っている。次節は個人技ではなくユニットで崩すところに期待したい。
試合結果
2021.2.28 13:05(ベスト電器スタジアム)
アビスパ福岡✖名古屋グランパス 1-2
得点者 4‘マテウス 55‘マテウス 82‘オウンゴール
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