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【私の本棚紹介】その1 『ダ・ヴィンチ・コード』

 二か月以上ぶりの更新となってしまいました。
 将棋の記事や時代劇の記事を書こうかと思っていたのですが、なんだかイマイチ進みが悪かったので没にしてしまいました…また需要がありそうかなと思ったら書き進めて投稿してみようかと思います。

 ここからは少し趣向を変えて、自分のこれまでの歩みを振り返っていく記事を少しずつ上げていきたいと思います。
 私は積読趣味や本の虫という訳でもないのですが、書籍をそれなりに収集しはじめてからそこそこ本棚っぽくなってきたこともあり、自分自身の読書遍歴を少し振り返ってみようかと思います。

記念すべき第一弾の書籍は

『ダ・ヴィンチ・コード』

です。

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〈書誌情報〉
『ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン著、越前敏弥訳
2006年発売 角川書店より

1.あらすじ

ハーヴァード大学の宗教象徴学教授ロバート・ラングドンは講演のためパリのホテル・リッツに投宿していたが、深夜、フランス司法警察中央局のジェローム・コレ警部補の訪問を受ける。急用による同行を請われ、到着したルーヴル美術館で館長のジャック・ソニエール(76歳)が、レオナルド・ダヴィンチのウィトルウィウス的人体図を模した猟奇的な形の死体で発見されたと伝えられる。

司法警察は、事件に対するラングドンの宗教象徴学者の立場での見解を聞きたいと協力を要請した。しかし、実際はソニエール館長と会う約束をしていたラングドンを容疑者として疑い、逮捕するために呼んだのである。ソニエール館長の孫娘でフランス警察の暗号解読官ソフィー・ヌヴーの助力により、ラングドンはその場を脱する。ソフィーは祖父の死の状態を、自らに遺した自分にしか解けない暗号であると考え、ラングドンの潔白に確信を持つが、これを上に報告しても顧みられないと察して、ラングドンと協力するため彼の逃亡に手を貸す。しかし、そのことによって米大使館は封鎖され、ソフィーとラングドンは、ともどもフランス司法警察に追われることになってしまう。

いっぽう、ジャック・ソニエール殺害の犯人とその黒幕らは、かつてソニエールが秘匿したとされる聖杯の秘密を追っていた。そして、その毒牙もまたラングドンたちを狙う。ラングドンとソフィーは、聖杯の探求に生涯を捧げる宗教史学者リー・ティービングの助力を得て、司法警察の追及をかわしイギリスへと飛ぶ。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89 から引用(2020/07/20閲覧))

簡潔に言えば、宗教に詳しい大学教授が事件に巻き込まれたので、その濡れ衣を晴らすついでに聖杯伝説の謎を解こうというミステリー作品という感じです。

2.この作品の面白い所

 この作品はダン・ブラウンの「ロバート・ラングドンシリーズ」の時系列では第二作目にあたる作品ですが、真っ先に映画化されたこともあり、知名度が非常に高い作品です。
 実在する宗教団体や著名な宗教芸術、建造物などをストーリーに絡めながら、そこに隠された大きな謎や陰謀、伝説の類いを解明していくという大衆小説としては珍しい部類の作品になっています。

 思うに、この作品の面白い所は聖杯伝説の絡み方ロケーションの想像しやすさという所にあるのではないかと思います。

 まず、出版当時の日本ではそもそも「聖杯」という概念の認知度が著しく低かったことを思い出します。私がこの本を買ったときは小学校の5年生くらいであったことを覚えていますが、当然そんなころには日本に「聖杯」という言葉をアホ程広めた「Fate/Grand Order」という作品は存在していません。2004年には「Fate/stay night」が発売されていましたが、当時は18禁ゲームという事もあり、そこまで著名ではなかったのではないでしょうか?

 一方、『ダ・ヴィンチ・コード』の原版が発売されたイギリスを始めとするキリスト教世界では「聖杯」という存在は中世から神聖視され、聖書に語られる「最後の晩餐」でイエスが弟子にワインを飲ませた杯とされ、騎士がこぞって聖杯を探し求めるという「聖杯伝説」を題材にした文学作品があまた作られました。その中にはかの「アーサー王伝説」も絡んでおり、かなり古くから存在し、親しまれてきた題材であることがわかります。

 ダン・ブラウンは認めてはいませんが、この話の下敷きには『レンヌ=ル=シャトーの謎』という書籍の存在が大きく関わっています。日本でも1997年頃に荒俣宏が書いた『レックス・ムンディ』という小説がありますが、正直言って『レックス・ムンディ』の方が文学的な作品としては出来がいいように感じます、これはあくまで余談ですが。

 他にも、各所の謎解きに登場する「ウィトルウィウス的人体図」や「モナ・リザ」などのレオナルド・ダ・ヴィンチの芸術作品群、舞台となっているルーブル美術館があるパリ、そしてロンドンはしっかりしたロケーション取材の下、地図を見ながらラングドンたちの足取りを辿ることもできます。今であればグーグルのストリートビューなどを使って疑似的に見ることもできます。それが高じて実際にその場所を訪れるファンも数多くいるとか。

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「ウィトルウィウス的人体図」(レオナルド・ダ・ヴィンチ - Leonardo Da Vinci パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2738140による)


 「聖杯」としての予備知識がほとんどないために、「聖杯っていったいどんな物だろう」、「そんなに血眼になって探す理由があるんだろうか?」といった知的好奇心を湧き立たせ、読んだ後には登場した芸術品や場所を見てみたい、調べてみたいと思う事間違いなしといえる作品ではないでしょうか。

 この探求心をくすぐられる「聖杯伝説」という題材、瞬く間に場面が転換し、スリリングな状況を迎えたと思えば謎を解くためにじっくり考慮に沈む場面が続くという緩急自在な展開などは、難しい題材の小説をうまいこと大衆向けにシフトチェンジさせたダン・ブラウンの妙技ではないかと感じます。

おわりに

 自分の好きな書籍を紹介しつつ、自己反省というか総括というのを行えるというのは一石二鳥のことのように感じます。今回紹介した『ダ・ヴィンチ・コード』という作品は読みやすく、比較的楽しみやすい作品ではないかと思います。
 まさかとは思いますが、これはあくまでフィクションです。<現実と虚構>との区別をつけて作品を楽しんでいただければと思います。

【画像引用元・参考資料など】
『ダ・ヴィンチ・コード』<上>
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%80%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%80%88%E4%B8%8A%E3%80%89-%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3/dp/4047914746

荒俣宏(1997)『レックス・ムンディ』集英社、533頁
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3-%E9%9B%86%E8%8B%B1%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%8D%92%E4%BF%A3-%E5%AE%8F/dp/4087472140



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