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「大怪獣のあとしまつ」の適当な感想(ネタバレ注意)

 みなさんは怪獣映画が好きですか?
 私は好きです。
 一番好きなのは、平成ゴジラシリーズウルトラマンコスモスです。特に「VSメカゴジラ」とかコスモスなら怨霊鬼・戀鬼っていう怪獣(?)が好きでしたね。
 とにかくマニアって程じゃないにしても、それなりに特撮とか怪獣には触れて育ってきたつもりです。
 そんな私が2月5日、巷で話題の「大怪獣のあとしまつ」を観てきました。公開初日のツイッタートレンドにはこの作品の感想として、「クソ映画」とか「つまらない」「令和のデビルマン」など悪口雑言にまみれたツイートを多く観測しました。
 今回はこの映画におけるポイントとその感想をここに吐き出してこの映画に対する興味関心を終わらせたいと思います。
なお、基本的にはネタバレまみれで進めていくので、まだ観てないよという人は必ず絶対に、劇場に本作品を見に行ってください。

 1. はじめに

 2016年に庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」が公開され、最近の怪獣映画としては類い稀なほどに大ヒットしました。人によって好き嫌いが分かれる作品となりましたが、その勢いは応援上映という奇っ怪なイベントから時の総理大臣がこの作品に対して言及するなど、一大ブームを巻き起こしました。
その後も、ハリウッド版ゴジラの二作目やゴジラvsコング、さらには庵野秀明監督による「シン・ウルトラマン」、「シン・仮面ライダー」なども発表され、テレビ放送においてもウルトラマントリガーなどは堅調な放送を続け、ちょっと前から考えれば日本における特撮というものの地位は大きく向上したように思います。
 そんな中、2月4日公開された「大怪獣のあとしまつ」。これはいったいどういう映画だったのでしょうか?

 2. 「大怪獣のあとしまつ」の概要

 「大怪獣のあとしまつ」という映画はざっくりと言えば「ヒーローが怪獣を倒した後に死体が残ったとして、それって実際にあったとしたらどうしてるんだろう」という疑問がテーマとなっています。
 大体、怪獣といえばヒーローの必殺技を受けて木っ端微塵になるのがお約束ですが、「シン・ゴジラ」においてはゴジラを凍結させ、活動停止に追い込むという結末を迎えました。他にも「怪獣8号」という漫画では、怪獣の死体処理というテーマを取り入れ、なかなかに流行しています。
 そんな死体処理をテーマにした本作は、日本国の内閣と主人公が所属する特務隊という特殊部隊がメインに描かれ、首都圏を蹂躙した驚異の怪獣が突如現れた謎の光によって息絶えたその後のお話が進行していきます。
 主人公はHey!Say!JUMPの山田涼介、ヒロインに土屋太鳳、その他に濱田岳や西田敏行、オダギリジョーなど豪華な俳優陣が集結しています。
前置きはこのくらいにして、さっさと私の感想に移りたいと思います。

 3. この映画の感想

 まずはじめに結論から言うと、この映画はクソつまらない映画だと思いました。どうしようもなく、途方もなくつまらない。超つまらない、呆れるほどつまらない映画です。
でも、決してクソ映画ではないなと本心から思います。一般的には「クソつまらない映画はクソ映画だろ」と思うかもしれませんが、私の尺度で言えば、つまらない映画≠クソ映画なのです。もう少し補足するとすれば、「ただつまらないからと言ってクソ映画と断定するのは過言だ」ということです。
 考えてみれば、これまでクソ映画と言われてきた作品は演技ダメ、シナリオダメ、テンポダメ、映像ダメなどダメダメ尽くしで観ることが苦痛になるような作品のことを指すのではないかなあと思います。一番有名なのは言わずもがな「デビルマン」なのでしょうか。AmazonPrimeで観ましたが、信じられないくらい下手な芝居、アクションシーンもなんだか陳腐で、かなり適当に進んで、原作をバツバツに切り貼りしたみたいなシナリオはマジで観てるのがダルいなあと思わせる仕上がりです。
 そんな作品に比べれば、この映画は全然観られる方です。比べる対象がおかしいだろといわれればそれまでなんですけども。

 それでも、この作品はつまんないので誰にもおすすめできません。割と普通につまんない。

つまんないポイントその1 何もかもが中途半端

 大体の人はお察しかと思いますが、この映画はシン・ゴジラを堂々とパロっています。だからこの映画に対する予習をせずにこの映画を観た人は、冒頭部分を観た結果として基本的にはシリアスな雰囲気を漂わせる感じになるんだろうなあと推測するはずです。でも、最後まで観た方は当然ながらこの作品が特撮の皮を被ったコメディであることを理解していますね。怖いもの見たさに観に来たとしても、前評判的に笑かす方向に持っていくんだとそう認識していたはずです。私もその一人でした。
 しかし、この作品はシリアスにしてからドッと笑わせるとかコメディの中にもハッとさせられる皮肉とかそんな高等なものは少しも出てきません。よく物語には緩急があるべきだという話があります。確かにシリアスな場面から急に小ボケをかまされたり、緩い雰囲気の場面からいきなり緊迫すると場面の印象が強く残り、観る側の感情の起伏が分かりやすく出ます。ですが、この作品はシリアスな雰囲気を醸成しきらないままボケに走り、映画の方向性をどっちらけにしたまま進行します。別に下らない下ネタを連発する演出やボケまくりの進行にしてもいいんですが、緩急が無さすぎて飽きます。緩急っていうのは160km/hの豪速球の後に120km/hのチェンジアップを投げたりする感じのことを指すのであって、80km/hの緩い球の後に75km/hのスローボールを放るようなことではありません。
 加えて、この作品には若干の社会風刺要素が含まれます。原発や新型コロナウイルスの蔓延などに対する政府の対応や社会の状況などになんとなく釘を指してる風になってましたね。あくまで風です。
 社会風刺をやるならもっと本気でやってほしいものなのですが、相変わらずの下らないボケが緩く続くので風刺の雰囲気が風と共に去ります。社会風刺ってことだけを考えれば、「新聞記者」観た方がよっぽどマシな気がします。あれってなんか酷評されたりしてましたけど、雰囲気作りとかシナリオの進み方とか映画としてはそれなりにできてたんだなあと今更ながら感心しました。

つまらないポイントその2 テンポがぬるい

 先ほど、この映画は特撮の皮を被ったコメディであると言いましたが、コメディであるからにはテンポよくボケたり、ツッこんだりするとかして笑える雰囲気を作り出すことが必要かなと感じます。しかし、この作品にはツッコミという要素があまり感じられませんでした。あったかもしれないけど、基本的にはボケっぱなしで誰もツッこまない印象しか残りません。緩急もないし、ボケっぱなしだし、シリアスなんだかコメディなんだか捉えにくい方向性で永遠に滑ってる様はもうなんだかため息が出ます。クソだのゲロだの陰〇だのセ〇クスだの、下らないボケしかやらないもんだからちょっと辟易しました。

つまらないポイント その3 オチがひどい

 deus ex machina、機械仕掛けの神というのはギリシア演劇の舞台構造の有名な典型で、叶わぬ恋やどうにもならない困難をどうにかこうにか解決して舞台を締めてくれる存在のことです。この舞台構造は科学的解決や論理、経験が不足している時代背景から考えて、演劇の黎明期である古代ギリシアとか古いものであれば仕方ないものとして納得はできます。
 だけども、シン・ゴジラを模倣するならせめて「超常的な存在である怪物を実際にありそうなもので対処するにはどうしたらいいのか?」という問題を放棄してはいけないと思うんですよね。別にトンチで解決してもいいし、「とにかく見えないようにして安全宣言を出す」みたいな社会風刺にしても構いません。
 それなのに、突然特撮ヒーロー要素の伏線をデカデカと見えるように張っておいて、「伏線を回収しましたよ!」と言いたげなドヤ顔をしつつ映画を終わらせるってのはなかなか不誠実というか、もっと真面目にやれと思いました。この映画、コメディでも特撮でもいいけど、もっと真面目にやれよ。
 こんな終わり方をするならもっと早く終わらせてしまってもよかったのではないかと思います。土屋太鳳が提案した怪獣を海に流す作戦が成功してハッピーエンドみたいな終わり方でもよかったと思います。個人的にはあのシーンで「まだ終わんないのかよ」と思わず心の中でツッコんでしまいました。

 あーつまんないと思ってここまでその感想を書きなぐりましたが、面白いポイントとか良かったポイントも当然あります。一応楽しむために映画を観にいったつもりです。

良かったポイント1 俳優が豪華

 「なんだよ、ジャニオタみたいなことを言うな」という過激な意見があるかもしれませんが、キャストが豪華ということは、映画を見るという行為において最も苦痛な要素の一つである”演技が下手くそで観るに耐えない”という可能性が大きく減るからです。
 Hey!Say!JUMPの山田涼介さんは俳優が本業ではないですが、特撮のヒーローっぽい演技が出来ていますし、何しろ顔がイケメンなのでこの映画の救いになっています。ヒロインの土屋太鳳さんは特撮出演経験ありの人でもありますし、何しろとても可愛い。キチンと演技経験がある俳優がメインを張っている、これだけでもこの映画が楽しく観られる重要なポイントになっています。
 西田敏行さんや岩松了さん、ふせえりさんや濱田岳さんなど技量に長けた俳優陣がこれでもかと揃っているので本当に有り難い。真面目に芝居をしている人というのはたいしたことない脚本・演出でもある程度カタチにしてくれるということを本当に実感しました。
 あと、菊地凛子さんが出てます。菊地凛子さんって格好いいのに可愛いという無敵の俳優さんですよね。しかも、アクションもできるし、演技も凄い。めっちゃ好きです、菊地凛子さん。

良かったポイント2 予算がなさそうなのに頑張ってる

 これは褒めてるのか貶してるのか分かりませんが、CGとかVFXの予算が思ったより少ない感じをうまーくごまかすようなカメラワークやそういうものを写さなくてもいいようにする演出が随所に見えました。確かにそうしたものを見せろよという意見も分かるのですが、それは予算を出す側の問題であって現場で制作しているスタッフのことを思えば、限られた予算の中で上手く作るというのは充分称賛されて然るべしと思います。本当に偉い。

良かったポイント3 緩い演出

 ダメなポイントとして挙げたはずのこのポイントは私に合わなかっただけで、他の人には合っているのかもしれません。現に私が見に行った時には下ネタやキノコのシーン、環境大臣が落っこちるシーンなどで笑っている人が少なからずいました。この脚本を書いた人は地上波のドラマなども制作しているので好きな人は好きなんだと思います。100人が観て99人ないし100人が嫌うような演出ではないということは明らかではあるのではないでしょうか?つまんないといっても最初から最後まで席を立つことなく見ることが出来るというのは最低限、評価できることでしょう。

4. おわりに

 なんでこんな映画に時間を割かなきゃいけないんだと思い始めたのでそろそろ締めたいと思います。
 とにかく私が言いたいのは、この映画はクソ映画ではなく、ただのつまらない映画であるということです。断じて「令和のデビルマン」なんかではない。「この映画と比べるなんてデビルマンに失礼」なんて若干皮肉と言うか冷笑する感じの御意見もあるかと思いますが、この映画はしっかりとドラマや映画として成り立っていますので評価するポイントも大きく異なるような気がします。とはいえ、この映画は何につけても中途半端でつまらないので、特撮を見るならウルトラマンとかゴジラを観ればいいでしょうし、社会風刺を観たいなら「新聞記者」を観たらいいと思いますし、コメディを観たいなら三谷幸喜とかを観たらいいんじゃないですかね。あくまで邦画に限ればの話ですが。本当にその程度の映画なので、特段騒ぐようなものでもないだろうなという総評でした。
 おわり

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