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第1回BBC読書会 テッド・チャン『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』

2023年10月28日、記念すべき第1回めの読書会を開催しました。
題材はテッド・チャンの『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』。店主がちょうど読んだ直後で面白くて人と感想語り合いたいなあと思っていた本が投票で通ってしまいましたのでこちらを扱うことになりました。
自分が本格的な読書会を主催するのはほぼはじめて。当日はかなり緊張しましたが参加していただいたみなさんのおかげで和やかで楽しい会となりました。

『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』、実はテッド・チャンの短編としては最長だと訳者解説で書かれています。
ヒューゴー賞、ローカス賞、星雲賞とSF界の錚々たる賞を受賞しています。
主人公は元動物園の飼育員の女性で、育成や愛玩を目的としたディジエントという学習機能を持つソフトウェアの会社に転職します。主にジャックスというロボット型のアバターを持つディジエントを育成していきますが、開発元でありブルーガンマが倒産し、サービス終了を余儀なくされます。
ディジエントを手放したり停止させたりするユーザーがほとんどの中、一部の熱心なユーザーは愛着ゆえにディジエントをなんとか生きながらえさせる道を模索しますが…というのが大筋です。

参加者さんからは「こういうバーチャルな世界がやってくるのを想像しながら読んだ。」「子離れのイメージを強く感じた」「これくらいテーマ性があり、主張があるものを読んだのは久しぶりだった」「バーナード嬢曰くで知った」「犬を飼っているから読んでつらくなったしアナのロボットの感触の描写に感情移入した」「人格みたいなものがあるからこそ虐待などのマイナスの感情も喚起させる」「フィクションなのに生々しい」「生命や倫理といったスケールの大きい話を卑近な例に手繰り寄せてわたしたちにとって普遍的な問題として落とし込んでいる」「火の鳥未来編でヤマノベマサトが生命が生まれ、文明が発達しては滅んでいくのを見守ったように、それを火の鳥もまた見守っていたように、そんな生命のサイクルを見守ったような気持ちにさせられた」などなどいろんな意見が出てきました!

実際にソフトウェア関連のしごとをされている参加者さんは現場の用語や描写が違和感なくリアルとおっしゃっていました。

まるで、世界最大の爪楊枝彫刻を完成させた相手を誉め称えるような口調だった。

ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル…264P

なんの条件もついていない無償の愛などという概念は、バイナリー・ディザイアが売り込んでいる愛とおなじくらい幻想だ。だれかを愛するというのは、そのために犠牲を払うことを意味している。

ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル…272P

などの箇所が印象的だったと盛り上がりました。
物語のラストシーンのその先をみんなで想像を膨らませたりもしました。
さらに、『息吹』短編集内で他にどの話がよかったか、テッド・チャンのもう一つの作品集『あなたの人生の物語』についても話題が広がりました。

まだまだいくらでも話せそうな題材でしたが一段落ついたところで次回の題材本決めをおこないました。
こんな本を扱いたい、最近読んで面白かった本などいろんなタイトルが上がりましたが最終的に4つの候補の中からじゃんけんで『プリズン・ブック・クラブ』に決まりました。


こちらも読みたい本だったので個人的に楽しみです!

日時:12/2(土)18:00〜
題材本:『プリズン・ブック・クラブ』
場所:ゆとぴやぶっくす(南浦和)

参加希望の方は下記フォームからご連絡ください。

最後に記念写真を撮って終了。

至らない司会すぎて終了後即脳内反省会でしたがほんとうに参加者のみなさんに助けられました…。ありがとうございました!
その日の朝に読書会をやることを知って急遽読んで参加してくださった方もいらっしゃいました。本当に感謝です。4人というこじんまりな会でしたがその分ひとりひとりの意見をたくさん聞けてよかったなあと感じます。

こんな感じで引き続きやってまいりますのでみなさまどうぞよろしくお願いいたします。

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