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映画「シティ・オブ・ゴッド」をU-NEXTで見ました。ある町の凄惨な終わらない時間。

映画「シティ・オブ・ゴッド」を見ました。ブラジルのスラム地域(ファヴェーラ)を舞台に、記者見習いであるブスカ・ペという青年の回想を語り手として、スラム地域の一時の時間、リトル・ゼというギャングのリーダーが力をつけていく過程から、その死までの約20年(60年代、70年代)くらいを描いている。そういう形の表現なので、映像だけで語るのは難しいですね。ブスカ・ペの声で説明が入ります。

実話を元にした原作小説があるそうです。とにかく人が死んでいきます。語り手である、ブスカ・ペはギャングの一員ではないですが、ギャングから麻薬を買って、吸ったりしています。ギャングに加担することはなくても、街には暴力、麻薬、強盗など犯罪が常に隣にある世界です(リトル・ゼが街を牛耳ることで平和が一時的にはあったようですが)。そんな世界の中でも特にリトル・ゼには狂気があって、当たり前のように人を殺してのし上がっていきます。麻薬の扱っていた人間を暴力で追い出し、麻薬を取扱い街を牛耳っていきます。物語は、ギャングの祭りのような場面から始まり、そのギャングたちを取材しにいくブスカ・ペから始まり、そして回想が始まります。ブスカ・ペの兄も所属していた小さな犯罪集団を見せていくところから回想は始まります。その弟分としてリトル・ダイスと呼ばれる、のちのリトル・ゼもいます。その後には、ブスカ・ペの学生時代や恋、リトル・ゼがどうやって街を牛耳っていったか、リトル・ゼの親友のベネの物語、ベネの死、ブスカ・ペがお金を取ろうとするも結局できない話、マネの恋人がリトル・ゼに暴行され、さらに弟と叔父も殺される(マネはリトル・ゼに何もしてないのに)、マネがリトル・ゼと対立しているギャングのリーダーセヌーラに協力し、本格的に2グループが対立、そして回想は終わり映画時間の現代に2グループの対決、リトル・ゼの死まで、という街の歴史にとって作者が重要と思っているエピソードを並べる形の構成となっています。約20年という長い期間を描いていますが、よくまとまっていてわかりやすかったです。こういう物語展開なので、人物の性格でよくわかるのはブスカ・ペとリトル・ゼの二人くらいですね。ベネとマネの性格も少しわかるかな。ベネはリトル・ゼの一番の親友ですが、何度も殺して解決するリトル・ゼに反対する場面があり、性格が浮かび上がります。マネは最初は優しい人物として登場しますが、復讐からギャングの一員になったことで、殺しを仕方がないと思っていきます。物語の主役は人物というより、この街そのものですね。この街で起こることのみ、映像は映していますし。犯罪が当たり前にある街が舞台です。それだけで見ている人に恐怖の予感をさせて、先を見たくさせます。リトル・ゼの強烈な悪の心は、「この人はこの後何をするのだろう」という気持ちにさせて、惹きつけます。

テーマはなんでしょうか? 犯罪が当たり前にあった街がかつてあった(かつてではないかもしれません。リトル・ゼは死にますが、殺したのはリトル・ゼのギャングの一員の子供です。映画内では街は何も変わってません)ことを見せることでしょう(警官の不正なども見せていきます)。その中で生きる人々を見せる。世界観を見せるという形でしょうか。平和はリトル・ゼという暴力の頂点が存在しないと、維持できない。そんな街であっても、恋はあるし、友情もある。ブスカ・ペというか、その街の若者たちの青春の話でもあります。日本であったら、問題がある学園という形で描かれるのでしょうね。さすがに街まで、舞台を広げたら日本ではリアリティがなくなってしまう。この作品は始まりと終わりで変化はありません。リトル・ゼがいなくなっても、次のリトル・ゼが生まれるだろうこと作中で示唆しています。街の姿は変わっていきますが、街を支配している空気は変わりません。悲惨な現実(子供たちが当たり前のように犯罪を犯す世界)を、悪とはいえ魅力的でもある(人によっては見てられない人もあると思います。魅力的というか動きが激しいと言い換えることもできます)リトル・ゼという存在を中心において娯楽性を担保し、見せていくという形になっています。抗争など、動きが激しいですよね。そこも、惹きつける要素ですね。抗争がこれから始まるという予感も含めて。

冒頭、短いカットが続きます。カットが短いと、そのカットとカットの間で時間が飛んでいるように感じるので、時間の流れが早いように感じますね。その後の鶏が逃げるところを追う場面はカメラが揺れていて、見ているのが辛かったです。私はあまりカメラが揺れる表現は好きではないです。カベレイラが警察に撃たれて倒れている場面を、まず車を俯瞰で撮って、それから遺体に近づいていくのはすごいなと思いました。子供が撃たれる場面もあるので、なかなか見ていて辛いですね。最後の対決の一瞬前の集合写真を撮ろうとしている画はよかったです。

日本では考えられない世界の話です。面白かったというと語弊があるかもしれませんが、時間を忘れて鑑賞できました。


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