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映画「今夜、世界からこの恋が消えても」を見てきた。こんなの泣くだろ。

映画「今夜、世界からこの恋が消えても」を見てきました。
私はもうおじさんです。邦画の高校生の恋愛映画は普段なら見に行きませんが、今月いっぱいで使わないと無くなってしまうU-NEXTのポイントがあったので、使いたかったのです(U-NEXTのポイントて映画が見られる)。「目ぼしい映画ないかな?」と探していたところ、この作品を見つけました。
キラキラ恋愛作品かと思いきや、初めから切なさを感じさせる映画でした。ずっと涙腺がゆるゆるでした。見に行って、よかった!

「前向性健忘」という眠ると眠る前の記憶を全て忘れてしまう記憶障害(事故でそのような記憶障害を患った)を持つ女性、日野真織と、友達を助けるため真織に嘘の告白をした神谷透。この二人の恋愛を描いた物語です。

この作品のサイトのあらすじを見ると「僕の人生は無色透明だった。真織と出会うまでは――」とあります。「僕」という一人称から始まっているので、透が主人公に感じますね。私は、真織もしくは、真織の友達である綿矢泉を中心に作品を見ていました。なので、正直透の家族話はノイズに思ってしまいました(父親の影響で小説家になった透の姉、早苗は物語に必要でしたが)。

冒頭は真織が起きるところから始まります。真織の部屋には沢山の張り紙が。前日までの記憶を残した日記をノートPCで見ることを示唆しています。「これから、一日で記憶を無くす女性の恋愛話が始まるのか」と思いきや、真織が記憶を少し取り戻していることが描写され、病院で段々と治っていることがわかります。記憶障害から回復していることがわかり、張り紙を取るなど部屋を整理していく真織。部屋の中から、同じ青年だけを描いたスケッチブックが出てきます(真織は絵を描くことが趣味なのかな。ラストで美大を目指していることがわかります)。泉に相談すると「図書館にいた人」と言われます。

最初はよくわからなかったのですが、泉が日記を読む形で過去の話が描かれます(顔は見えたのだけれど、泉がなぜ真織の日記を読んでいるのかわからなかったので疑問に持った)。
透の嘘の告白からの恋の始まり(実際に記憶障害があったら、こんなに簡単に告白をOKするかな。透はいい人だから良かったけれど。「もう二度と恋愛できないかもしれない」「この人はいい人そうだから、大丈夫」という気持ちだったのかも。高校生だし、憧れが先行したと思っておこう。しかし、真織は人気者だったらしいけれど、今まで告白とかされなかったのかな? なんて考えしまう。まあ、ここらへんはご都合主義でもいいか。物語のテーマと恋の始まり方はあまり関係なさそうだし)。「放課後までお互い話しかけない」「連絡のやり取りは簡潔にする」「本気で好きにならない」という条件(ほぼ泉が真織の日記を読むという形で物語が進むが、ラストは真織の語りになる。その中でこの条件の理由がわかる。「記憶を整理するため」「前日のやり取りを連絡してほしくないから」「好きになっても叶わないとわかっているから」)で、付き合ったふりををするということで、行動をともにすることになる二人。真織は誰かと恋をしたかった。しかし、記憶障害があるから真剣には付け合えないとわかっていた。だから「付き合ったふり」をしたかったのだろう。うまく言葉にできないけれど。

真織は記憶障害なんです。そして、冒頭から真織の中に透がいないことが示されている。もう悲恋になることが分かりきっているんですよ。こんなの見ちゃうでしょ。なぜ真織の中に透がいないのか。記憶障害というものを持ちながらどう男性と付き合うのか。あと何で泉の語りなっているのかも、前者2つほどではないにせよ、気になりますね。この点に注目しちゃって見逃せないし、行動ひとつひとつが切ない。真織の笑顔も切ない。涙腺が緩くなりますね。
二人のぎこちない行動(最初は学校から一緒に帰るだけなのかな)。必死にメモや写真、映像を残す美織。美織を心配する泉の行動、などなど見せていきます。

透の家族の問題も出てきますが「正直あまりいらないな」と私は感じました。母親を心臓病で亡くしていて、父親と二人暮らし(後から姉がいることがわかる)、というバックボーンがわかれば十分かな。美織の家族はいい家族っぽいので、対比になっているわけでもないし(むしろ両親が離婚調停中という泉との対比とは考えられる)。物語の終盤で、透の姉が芥川賞を取って、それを父親が知る場面があるのだけれど、そこで透が「逃げたくないんだ」と言います。劇中で彼が何かから逃げている描写は特になかったように思います(原作にはあったのかもしれないけれど)。父親は母が死んで、逃げていたようだけれど。
透の姉が小説家ということが、物語に重要な役割を果たすから(あと母の存在も)、透の家族の描写は必要だと思うので「いらない場面ってどこだ」って言われると困るけれど。私は「記憶とか思い出ってなんだろう」ということを考えさせる映画だと思っていたので、透の家族話は「そんなに必要ではない」と思ってしまう。こういう家庭で育ったからこそ、透は優しいのだろうけれど。であれば、透の優しさの理由として家族との関係性の中で説明とかあればよかったのにと思う。
泉が真織の日記を読む形で物語が進行していくので、泉の記憶か真織の日記にないことが描かれるはずがないような気もする(透の家族のことは日記にも、泉の記憶にもないだろう)。
透が作ったサンドイッチが、真織とのつながりを示すものとしてラスト出てくるのですが、それは「母親がいなくて料理をしている」ということが劇中で語られるので、それで十分だしね。

真織は初デートが描かれる。しかし、そこで真織は寝てしまう(寝るの怖いだろうになんで寝るんだ、と思いつつ余程幸せだったんだなとも思う)。真織が起きると目の前には知らない男が。真織は逃げる。
真織は毎回毎回、初めて会う人と会っているんだねと考えると、緊張をすぐするわたしには苦行に思えてくる。「朝起きると絶望だけれど、透とあっている時はすごく幸せと」のようなことを後に語られるので、彼女の中で記憶とは違う形で透のことは覚えているのだろう。
真織は持ってきていた日記など読んで、探しにきた透に自分の記憶障害について話し、もう恋人のふりはやめる提案をするが、透は「今日のことは日記に書かないで、また明日から恋人のふりを続けよう」と言う(台詞違うと思うけれど、こんな感じのこと)。真織はそれを受け入れ、恋人のふりを続ける。
透は真織にたくさんの思い出を残したい(日記に)と言っていて、めちゃくちゃ優しい存在である。優しさに全ふりという形の女性の理想なのかな。

透と小説家である姉、早苗とのことなどを描写し、真織と透(泉もたまにいる)の描写が続く。水族館でのプレゼント、早苗の芥川賞受賞を真織の家で泉、透の三人で聞くことになること。真織がプレゼントのことを覚えていなくて、悲しむ透と「わかっていたことでしょ」と言われる。
透の絵を描く(昔、描いていたらしい)真織に「手続き記憶(絵とか自転車とかは体が覚える。自転車に乗る描写も劇中にある)」について伝える。真織は絵を描き始める。
夏祭り。花火をバックにキスをする二人。良い場面。
「忘れたくない」と願う真織に、透は「忘れない。残っている(のような台詞)」を伝える。

そして高校卒業の場面。透はいない。透は心臓病で亡くなっていた。
なんか死ぬだろうなと思っていましたよ。最初からいなくなることはわかっていたので。でも、他に手はなかったのかなって思っちゃう。綺麗に終わらせるには、死なせるしかないよね。今の時代、離れ離れになっても連絡は取れないわけでもないし、SNSとかで繋がれるし(たとえ真織に前日までの記憶がないとしても)。それ以外の別れとなると、透が悪い人間になってしまうし。
心臓病かもしれないことを泉に伝える時「僕も君のことが好きだ」なんていうかと思った(泉が透に対して好きという。告白とかではなく、人間として好きという感じで。でも泉は透のこと好きだったと思う。泉の心が語られることはほぼないから、推測だけれど。泉と透は同じ作家が好きだしね。あとで透の姉とわかるけれど。この映画の中で泉は魅力的でしたね)。
恋人の死に、心を壊してしまう真織(楽しい思い出の日記から死んだ事実を知って、絶望がさらに深くなるのだろう)。
透から「真織から僕の記憶を消してくれ」と頼まれていた泉は真織の日記を変えることを決断する(早苗に相談、協力してもらう)。こんなの辛いよね。親友の記憶(記録なのかな?)変えるなんて。早苗が日記を変えていく場面。透が泉に変わり、映像としてもどんどん真織の前から泉が消えていく。映像としては「みせるなあ」と思うけれど、悲しくなるよね。

そして真織の元へと行こうとする泉。時間軸は真織が記憶を戻しかけているところに戻る。この後、泉は真織に本物の日記を返しにいくのだが、その決断をするまでの描写が見たかったな。記憶障害が治りかけているから、思い出してしまうから、とか泉は色々考えたのだろうか、その葛藤を見せてほしかった。

そして真織の語りになり、透のお墓参りを早苗とともにする真織。「人は忘れていくものと」なんかありきたりのことを語る早苗(記憶がある早苗と、日記でしか恋人の存在を知らない真織では感じ方がまるで違うだろう。真織には忘れる記憶がないのに、と思った)に対して、「思い出していきたい」とか語る真織。これが未来の希望なのかよくわからない。ただ、真織が前に進もうとしていことは感じる。
いつか通るときたように、泉と公園にきた真織。真織はサンドイッチを作ってきていた。以前、透が持ってきたように。サンドイッチの作り方日記に残っていたのかな? 一緒に作ったことがあって、作り方を「手続き記憶」として覚えていて作れたと信じたい。真織の頭の中には透はいないかもしれないが、身体の中にいると考えたい。
身体のなかの記憶と頭の中の記憶。「記憶ってなんだろう」と考えさせますね。これがテーマなのかな。
実際に記憶障害の中で、恋愛をするのは難しいだろう。もしかしたら、同じような境遇の人にしたら辛いのかもしれない。こんな美しい恋愛ができるかもと希望を持つ人もいるかもしれない。病気が絡む恋愛話は「お涙ちょうだい」の話になってしまうかもしれないし、この映画に対してそう思う人もいるかもしれない。
透の優しさには胸が打たれるし、優しさで人を救えるということを示しているかもしれない。現実は厳しいことが多いけれど、映画を見て希望を持てるならこんな優しい人がいてもいいかもしれない。
心臓病で突然亡くなってしまう透に対しては少しご都合主義的に感じなくもないけれど(亡くならなくても物語は終われるじゃん、と思う反面。いなくなってくれないと「記憶とは」と考える要素がなくなるし。「思い出していきたい」という真織の決意は語れないしね。忘れるのは心を傷つけないためにだいじなことだけれど、でも「思い出していきたい」という記憶を持てない人間にしか考えられない発想は、わたしの中でなかった考え方なので、こういう考え方知れただけでも良かったと思う)、真織の記憶障害に対しては真摯に向き合っているのではないかな、と思う。辛さが伝わってくるしね。
泉の優しさ、決断。親友のためにどう行動できるかもテーマとして考えられるね。
真織にとっては、最初はただできないかもしれない恋愛への憧れだったかもしれない。だんだんと好きになる。花火の時に「三つ目の約束破っていいですか?」と言う(透の答えは「僕はもうとっくに破っている」)。二人の幸せそうな姿を見ていると、人を好きになることの素晴らしさを伝えてくれる。真織とっては、それは当たり前にできないから、より一層強く。それをこの映画は伝えたかったのかもしれない。

最後の「心は君を描くから」というのもいいね。真織は透の絵を何も見なくても描ける。身体が覚えているから。
もし記憶から愛する人のことをだんだんと忘れていっても、身体が覚えているとしたら、それはひとつの希望とも考えられますね。「そういうふうに考えられる」と、いままでなかった考え方を知ることは、物語に触れるひとつのだいご味ですね。

今の高校ってこんな感じなんだ、と思いました。私服OKなのか。私は私服OKな高校だったけれど、制服もあったのでだいたい制服をきていたけれど。あんな大学みたいな、教室はなかったね。
なんかいじめみたいな感じで始まったけれど(告白したらいじめをやめる)、その後いじめとか、記憶障害を利用しようとするような人間が出てこないのは良かった。

今の自分なら透ほどではないが、多少は人に優しくできると思うが、高校生の自分がこんなふうに好きだからとは言え、優しくなれるとは思えない。大人になったからか自分自分とはならないけれど、高校生の自分だったら相手のことより、もっと自分を相手に見て欲しいと思ってしまうな。そんな人と出会えた奇跡の物語でもあるね。

「みんないい家に住んでいるな」と思いました。父子家庭で父が働いてない透の家も一軒家っぽかったし。まあ、そこで家の貧しさを強調したら、さらに真織の物語を語る時間が減るから、強調してほしくないけれど。

「寝るときに記憶をなくす恐怖があるのに、朝早く起きる(最初6:00頃起きていたのかな? 私も若いのに早いなとは思った。早く起きるということは寝るのも早いということ)のはおかしい」というのを感想で見た。まあ、確かにそう言われるとそうですね。寝ると記憶を無くすという経験がないわたしには、そこまで考えがいたらなかった。描写がないと、それは気づかない人にはないこと、としてとらえられるね。
でも、若いから早くねられてしまうのかもしれない。それもまた、わたしにはわからない。

こうやって書いていくとより素晴らしい作品だったと思える。寝ると記憶を無くすという事実はあるけれど、それを考えなくても高校生の純粋な付き合いを美しく描いていて「なんか良いな」と思える。幸せを感じられる。
良い作品でした。見に行って良かった。
冒頭は日記をPCで書いているのに、恋愛中は手書きで日記を書いていたのに気づかなかったのは秘密だ(手書きを早苗がPCの日記に変えた)。


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