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映画「素晴らしき日曜日」をU-NEXTで見ました。ある日曜日、一日だけの話。

映画「素晴らしき日曜日」を見ました。戦争が終わって直後の時代、雄造と昌子、恋人同士のある日曜日、一日だけの話です。デートの待ち合わせから始まるのですが、雄造は最初から鬱屈としています。お金がないからです。あと戦争に行く前に持っていた夢をなくして、現実的になっています。デート中最初こそは鬱々とした態度を示していますが、子供たちの野球に混ざったりして少しは機嫌が良くなりますが、演奏会の安い券をダフ屋に買い占められ、自分たちが持っているお金では買えないとわかり、怒りで殴ってしまいらまた気分が鬱屈となります。そのあと二人は雄造の家に行くのですが、必死に話の糸口を探そうとする昌子に対して、雄造は常に黙っています。昌子は帰ってしまいます(この前の描写は雄造が体を求めているのか? あまり説明がないから、見ている人の判断に任せているのだろう)。この後、雄造が昌子の大切さに気づくところを映像で見せていく。昌子が戻ってきて、コートを脱ごうとするのは体を許すことを示している描写なのだろうか? 昌子は泣いて途中でやめて、雄造は「いいんだよ」というが。この後、また仲が良くなっていく描写を映像で見せていきます。

内容は雄造の機嫌が変わっていく話ですね。若いからなのか、時代なのか、雄造が自分の不機嫌さを見せて女性を支配しようとしている態度はあまり見ていて気持ちいいものではありません。直情的で、不正に対して喧嘩してしまう性格とかは好感が持てますが。昌子は昌子でいい人すぎて、いくらなんでも幻想だろと思いました。映画は夢を見せるものとも言えるから、いいですが。映像は素晴らしいです。あまり言葉で説明せず、映像で語ってところも良いです。昌子の登場場面、昌子だけ白い服を着ているので視線がそこに誘導されます。雄造が拾ったタバコを吸おうとするのですが、まさこに止められます。ラストでは雄造は落ちているタバコを踏みつけます。成長を表してますね。演奏会にいく前雨が降ってくるのですが、これが雄造の心を鬱屈とさせる予感をはらんでいます。演奏会に行くために二人は走ります。ダイナミックで良いですね。雨が上がると同時に、雄造と昌子の仲は再び良くなります。喧嘩の場面では殴る前に、間を置くように顔のアップになるのですが、そこでこれから起こることを予感させて、緊張感を高めますね。そのあと、喧嘩で怪我したところを治して立っている雄造の顔のアップは放心状態でこれから二人の仲が悪くなることを予感させます。昌子のアップもありますが、これは雄造を心配している昌子の説明ですね。その二人を後ろから映しているのは、二人の中の暗さを示していますね。雄造の部屋の中では、昌子と雄造の間に雨漏りの水を貯める桶が置かれます。これを、どかしたり、中の水を動かすことによって画面に動きを与えています。昌子が部屋からいなくなり、昼寝をはじめる雄造でしたが、画面が一瞬変わって外の風景になり(音楽が鳴り始め、部屋の前の電気屋のスピーカーがアップで映される)、その次の画面では部屋を歩いている雄造が映されます。時間経過を表してますね。二人が仲良くなって、電灯が映されら喫茶店の中に二人がいます。二人とも同じ格好をしているので、仲が戻ったことがすぐわかります。その喫茶店のお金が払えなくなり(いくらなんでも、お金持ってなさすぎだろ、と思いました。ここら辺の感覚は戦後の状況を知らないとわからないですね)。そのあと、雄造は「あんな喫茶店は作らない」というようなことを言って、昌子と一緒に理想の喫茶店を演じる場面は良いですね。雄造の心が昔に戻ったことを示していますし、見ていてしあわせになる。そのあと音楽場で誰もいないところで、雄造が指揮して幻想の音楽を昌子に聴かせる場面。長いなと思いつつも、いい場面でした。雄造が指揮をしようとしても、風の音が邪魔してなかなか動けない。風の動いもいいですね。昌子が、実際の映画の観客に語りかけます。「皆さん、お願いです。どうか拍手をしてやって下さい。世の中にはあたしたちみたいに貧乏な恋人がたくさんいます。そういう人たちのために、どうかみなさんで拍手を送ってください……」。当時はこんなにお金がない人がたくさんいたのでしょうか? その必死の訴えに感動しましたが、しかし気持ちはやはり戦後のその時にしかわからないですね。そのあと音楽が聞こえてきます。それに元気を得て、雄造は指揮を始めます。良い場面です。音楽が聞こえてから、指揮をはじめるのではなく、雄造の意志で指揮をして音楽を奏でて欲しかったと思いましたが、音楽が聞こえたから勇気が出たのだし、その音楽は幻想でそれを聞こえているのは、昌子の訴えを聞いた雄造の意志から聞こうとしたと考えれば、「まあこれでいいか」と思いました。

テーマは若者(当時)を映すことですかね。普遍的なテーマですが、時代が変われば若者の持つ悩みが変わってしまうので、そのテーマを抽象化して現代に置き換えて見るか、当時のことを知識に入れて見ないとなかなか楽しめないかもしれません。戦争から帰ってきた物の大変さ(雄造は戦争で両親を亡くしているそうです)お金の悩みや(喫茶店でコーヒー飲んでお金が払えなくなるって、と思いました。コーヒーの値段と演奏会の入場料が同じなので、今とは物の価値がまるで違うかも知れませんが)、貞操観念も今とは違いますしね。これは作っている時は意識してないかもしれませんが、当時のことを知るという歴史的(市井の人の歴史)なテーマもありますね。今から見ている人間の視点ですが。

一日だけの話です。戦後直後の経済状況がいまいちわからないので、特に雄造の心を理解するのは難しいです。雄造の鬱屈した態度が、昌子との衝突をはらんでいて緊張感を持ってみられますが、話としてダイナミックな動きはありません。映像が、やはり素晴らしく、物語の筋より映像自体に緊張感を生む要素が沢山あって、それが映画を面白くしているのではないかと思います。良い映画でした。


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