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映画「竜とそばかすの姫」を見てきた。少女の成長物語。

「竜とそばかすの姫」を見て来ました。面白かった!

細田守監督の作品を見るのは「おおかみこどもの雨と雪」以来です。昔の日記を見たら、今日と同じ日8月1日(2012年)に見に行ってました。

全世界で50億人以上が集うネット上の仮想世界<U>の中では、有名「As(<U>の中の分身の総称)」、歌姫「ベル」である、普通の女子高生すずが主人公の物語。すずは幼い頃に母親を亡くし、そのことがきっかけか(物語上では明言れていない)好きな歌が歌えなくなっていた(ちょっと歌っただけで吐いている描写がある)。彼女がネット世界を通して、現実界でも変わっていく。

始まりは、<U>の説明のナレーションから入っていく。いきなり世界のルールの説明から入るのはわかりにくくないかな、とも思ったが、あまり私自身はこんなアバターを作るような仮想現実世界のアプリに触れてはいないのだが、アプリを立ち上げて説明から入るのはわりと現実世界でもあるかな、とも思えてそれほど気にならなかった。

鯨の上に立ち、<U>の世界では有名な歌姫ベルが歌っている場面になる(世界観の説明のナレーションは続いている)。わりとすぐに、それがすずとわかり、そのすずがなんとなく自信なさげな少女でもあることもわかる。ベルと、すずのギャップに興味を惹かれる。人物への興味から物語入っていけて、良い演出だなと思う。

すずの描写を通して、彼女の過去、親子関係、友達関係をスムーズに紹介していく。すごいなと思う。二時間の映画だから仕方ないけど、友達関係は小さくまとまっているなとは思った。学校の人気者の男子に好かれている、冴えない女の子と言う構図はベタな感じでもある(物語の主題が恋愛ではないから、これはこれで良いと思う)。すず(ベル)を<U>に誘った、ヒロは毒舌で個性が強くて気になる存在だった。存在として、何かやる、やらかす感じがあってよかった。優等生であるルカも、すずの恋敵としてぶつかる存在になるかと思い、もしそういう展開になったら個性が出ていたかもしれないが(対立した時の行動で個性が出る)、そんな展開にはならなかった。ルカは最後までいい人だった。

ベルのコンサートを竜という謎の存在が邪魔することにより、ベルと竜に関係性ができ、物語が進む。竜は何故コンサートを邪魔したのだろうか? 追われていたからたまたまだったかもしれないけど、広い世界っぽいから何もコンサートを邪魔しなくてもと思う。ベルには「俺を見るな」と言っているし。見られたくなかったら、こんな注目されるところに来なければいいのにとも思う。現実の世界の竜は、ある目的(弟を元気に)で竜として強さを示しているらしいので、目立ちたかったという解釈はできなくもない。それか、竜の弟がベルと竜を会わせたくてこうなるようにしたのかもしれない。ベルを最初に認めたAsが竜の弟だと私は思っている。単純に弟がベルを見に来るのに、ついて来ただけかもしれない。潰されない成功したコンサートの場面も見たかったな。冒頭の場面だけで、ベルの歌姫としての場面は十分と判断したのかもしれないけれど、私としては一場面欲しかった。最後にも歌う場面があるから、そことかぶるのを嫌ったのかもしれないけれど。

そして、ベルが竜のことを「正体は誰だろう」と妙に気にするところも、なんでだろうと思った。正体を気にするところまでは、まあ好奇心として思えるけれど、すごい執着しているんですよね(コンサート潰されたのに嫌悪というより、好意の方面で興味を持っている気がした)。私が丁寧に見ていなかったかな。自分を邪魔した存在を、調べていくうちに興味を持ってしまったのかもしれない。調査自体はヒロが主体だったかと思う。竜の正体は、物語上の引っ張る力にもなっている。竜に興味を持った人はベル以外にもいただろうに、竜の城に行き着いたのはどうやらベルだけ見たい。これは竜の弟が、ベルに会わせたかったのだろうと、私は解釈している。兄の何か行き詰まる感じをベルなら変えられる、という幼い子どもの夢のような考えで。以上の考えから、竜とベルの関係性はなんで、あんなに深くなるのだろうとは思った。

まあとにかく現実では全く出会ったことがない、ベルと竜が交流の中で気になる存在になっていく。竜は<U>の中では爪弾き者であり、そして竜の城が壊され、その存在が<U>の中で見えなくなる。

現実世界の竜も問題を抱えており、ベルはそれを現実世界でも助けに行こうとする。その過程の中で、すず(ベル)はある決断して、変化していく。その決断は感動をおぼえるものであり、この映画のクライマックスだ(最後の歌う場面のこと)。心が震える。

仮想現実で得た自信が、現実世界の自分にも勇気を与えているわけ。そのようなことは今までは物語の中でのSFやファンタジーのなかだけしかなかったことで、しかし今は現実にそういうこともありうる。新たなテクノロジーを物語に取り込み、成長を物語を作っている。とても、現代的だ。

ベルと竜は実際に会ったことはない。現実の世界の姿も知らないのだ。それでも、すずは仮想現実でしか会ったことがない竜を助けたいと思う。ニュースでたくさん悲惨なニュースは見る。だからといって、そこに映された会ったこともない人を自ら助けに行く人はほとんどいないだろう。しかし、実際に会ったことがある人の不幸でであれば、それがニュースで見た出来事より悲惨でなくても、助けたい、実際に助ける人も多いだろう(すごく多いとは言わないが)。この映画では、すずは竜を助けたいと思う。しかし、彼らは生身な存在としては会ったことがない。でも、助けたいという強い感情が生まれている。ここには、テクノロジーによって生まれた新たな感情があると私は思う。生身として会ったことがないのに「助けたい」という感情が埋まるということ。それを示すことが、この映画の主題なんではないかなと、私は考える。この映画は人間の成長物語としても素晴らしいと思うが、その成長を促す装置として、仮想現実が使われており、仮想現実だからこそ生まれる感情によってすずが変わることは、新しい形も示していて素晴らしいと思う(こんなの他の作品にもあるよ、と言われるかもしれないが)。

まあ、現実に助けに行っちゃうすずは行動力ありすぎだろと思ったけど。竜の家族の確執は特に過去の描写がないので、物語上の装置に見えなくもなかった。母親を亡くして、父親も辛かったのだろう。子どもにぶつけちゃいけないが。この父親とすずのやりとりも、まあこういうこともあるよなとも思った(すずに対して何もしないんだと、もちろん一瞬は思ったけれど)。この父親は身内にしか(反抗しないと確信している存在にしか)、強い力を見せられないのでしょう。

現実界でも世界は少しずつ変わっていて、すずがしのぶ(すずの幼馴染)を好きな友達(後に勘違い気付く)を応援する、と連絡し、自分がしのぶのことを好きと気付たりする。

現実世界の出来事や、仮想世界の出来事を通し、自分の母がなんで人を助けたかを知り、最後には父との和解もあり、すずが変わったことが示される。

素晴らしい作品でした。

絵も素晴らしかったですね。色彩豊かで、眼福です。

飼っている犬が、片足怪我しているのは何か意味があったのだろうか。怪我している犬でも、気にせず愛しているであろうすずの根の優しさを示しているかな。

<U>のなかのキャラクターの造形がなんとなくディズニーの3Dぽく見えた。絵として似てるってわけでもないんだけれど。3Dにすると、みんな似通うってわけでもないよね。最近は細かく作れるし。

エンドクレジットにウェブサイトって項目があり、映画のウェブサイトを作ると映画のエンドクレジットにのれるのか、と思った。


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