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映画「ドラゴン・タトゥーの女」をNetflixで見ました。信頼を得た先に。

映画「ドラゴン・タトゥーの女」を見ました。推理サスペンス作品でしたね。四十年前に行方不明になった女性の謎を追う物語。原作小説は未読です。

記者ミカエル・ブルムクヴィストは大物実業家ヴェンネルストレムの武器密売をスクープし、名誉毀損で訴えられ裁判で敗訴し全財産を失う。失意のミカエルに、別の大物実業家から電話がかかってくる。一族の謎を解明して欲しいとの依頼で、見返りに裁判判決を逆転させるような証拠を渡すという。謎とは、40年前に行方不明になった16歳の少女のことであり、一族の誰かに殺されたという。
依頼を引き受けたミカエルは、猟奇連続殺人に関わる一族の秘密を知ることになる。ミカエルは、彼に興味を持ったドラゴンの刺青をしたフリーの天才女ハッカーであるリスベットとともに捜査を進め、すべての謎と事件を解決していく。

出典:wikipedia

と同時に、リスベットの物語でもありますね。

面白く視聴しました。が、「少女行方不明」話が解かれあと思ったことは、謎があってただその謎が解かれただけだな、と思いました。「推理サスペンス」とは冒頭に書きましたが、推理の部分は、トリックとかがあるわけではなく、最新の技術によって、過去では見えなかったものが見えてくるという形です(こう考えれば、ここにテーマ性があったのかもしれません)。あと、聖書の描写の一部に則って殺人を行なっていく人物が出てきます(映画「セブン」とかもそうでしたね。キリスト教圏の国の作品では割とあるのではないでしょうか。見立て殺人というやつですかね)。その方向性は素晴らしかったです。ミカエル単独での捜査段階では、わりかし展開がゆっくりしていて、なかなか真相に辿り着けない過程が私としては良かったのでしょう(色々と考える余韻がある)。リスベットが操作に加わってからは、リスベットの天才性で割とさくさく謎に迫ってしまいます。原作小説とかなら、そこら辺もじっくり描いていてきっと楽しめただろうと予測されます(小説は自分のペースでも読めますしね。まあ元々推理ものは小説の方が良いですよね。映画だと推理に必要な要素を与えられても、強制的に時間が進んで、ゆっくり考える余地がない。正直言えば、推理パートは雰囲気で見ている)。さくさく謎を解かれると、ちょっと物足りなくなりますよね。推理部分が私にとってはつまらなくなったところくらいから(リスベットが捜査に参加するくらいから)、ミカエルの住まいに誰かが入った様子、猫が殺される(この猫をリスベットは写真に撮ります。映画の展開に何か関係あるのかと思いきや、何もなかった。リスベットと性格を描くエピソードでしかなかったですね)、ついにはミカエル自身も狙われる展開になっていきます。謎解きより、サスペンス要素で見せていく展開になっていきます(あと捜査を依頼した一族の中に犯人がいる。誰か? と考えさせる展開)。物語展開の構成が上手いから楽しんで見れてしまう。
行方不明になった少女「ハリエット」はある連続殺人を追っていた(知っていた?)。その殺人を追う方向からミカエルは捜査していくことになります。犯人は一族のひとり「マルティン」と分かります(連続殺人自体はその父「ゴットフリード」から始まっています)。血塗られた一族という感じですね。映画ではそこら辺はドロドロ描いてなかったですね。小説ではここら辺をきちんと描いているのではないでしょうか。「引き継がれる異常性」。ここら辺を強調していたら、私はそこにテーマ性を感じて楽しめたのかもしれません。しかし、たくさんの人が見る映画でそこを強調するのは難しかったのかもしれませんね。もしくは、映画の製作陣がそこに興味を持てなかった(こっちの方が強いかも)。その辺を軸とした「流れ」(小説で言えば多層的な「声」の一つ)を感じられなかったから、見終わった後「壮大だけれど、普通の作品だ」と思ったのかもしれません。こうやって、感想を書いていると色々見えてくるのですが、映画を見終わった直後は映画を見終わった後、考えることもなく「面白い映画」だったで終わってしまいました。考えさせるフックを感じられない。それは鑑賞者である私のせいかもしれません。

鑑賞者である自分の責任と考えるのは、もう一つの物語があまり見えてなかったからです。「ヴァンゲル一族」に関しては、この作品ではあまり強調していません(一族の一人が第二次大戦当時ナチスで傾倒していたというエピソードなどはありましたが。私にはあまりそこに特別なものは感じなかったです。戦争当時ならそういう人もいたでしょう。現代において傾倒していたなら、また違ったかもしれませんが)。「ヴァンゲル一族」に関してではなく、「リスベット」についてです。
この物語はリスベットが他者(男)に絶望し、ミカエルと一緒に行動することによって、その絶望を(ミカエルに対してのみかもしれませんが)回復していくまでの物語です。
リスベットは特別な能力(見たものをそのまま記憶できる能力かな。映画内で説明はなかったけれど、描写でそんな感じがした。優秀なハッカーでもある)を持っています。その能力から、警備会社の調査員として働いています(wikipediaを見るとフリーの調査員らしい)。父に対して殺人未遂を起こしており、精神病院に隔離されていた。今でも、後見人に対して行動の報告義務を負っています。
リスベットとミカエルが出会うのは、1:20:00以降です(ヴァンゲルの弁護士? がミカエルを雇うにあたって警備会社を通してリスベットに調査させていたんですよね。その関係でミカエルがパートナーが欲しいと言ったとき紹介される。上手い展開ですね)。それまでは、ミカエルの捜査と同時に、リスベットが後見人に変態的行為を強制される描写をこれでもかと流します。見ていて辛いですが、そこからリスベットの人間性が見えてきますね。男性に対して嫌悪感(男性不振というわけではないです。仕事では普通に交流を持てるので)を持っていることと、強烈な性格であることが分かります。ある意味丁寧に描いていいますね。
そのリスベットがミカエルと行動をともにすることで変わっていきます(と言っても、事件の捜査の間の描写ではあまり分かりませんが。慰めにミカエルと寝る場面もありますが。リスベットの性格から、仕事をうまく行うためであり、そこに感情があるとは思いませんでした)。
「ヴァンゲル一族」の事件解決の後で映画の蛇足のように、ミカエルが一時仕事(経済ジャーナリスト)を離れた理由(実業家の不正を暴いた記事で訴えられ敗訴)である出来事のその後を描いています(ヴァンゲル一族のことを調べたのも、それを依頼した「ヘンリック・ヴァンゲル」から、実業家の不正の裏付けがあると言われたから。結局、その情報は古すぎて使えなかった)。
リスベットが実業家のPCをハックして、不正の情報を暴きミカエルに渡します。その不正が裏付けされても、実業家には大きく傷がつかないとわかると、リスベットは実業家の金を動かし(間違っているかも。正直、映画を見ている時はよくわからなかった。その結果を見て何のために行なっていたかわかった)、実業家が殺される方向に持っていきます。
映画を見ていたときは、ここら辺の描写は蛇足だなと感じたのですが、映画を見終わった後、少し時間をおいてこの場面の重要さが分かりました
リスベットは元後見人(現在の後見人がひどい男で、この人は悪くない人のようだ。と言ってもほとんど描写がないが)に対して、友達ができたと言います。リスベットはミカエルに対して、クリスマスプレゼントを買います。それを渡しにいくも、ミカエルが不倫相手とともに出ていくのを見てしまい、プレゼントを捨ててしまいます(友達だったら気にしないだろうし、恋だったのかもですね)。
ここから、リスベットはミカエルに対して仕事のパートナー以上の感情を持ったことが分かりました。ミカエルを敗訴させた実業家に対して行なったこともミカエルのためだったのですね(これを行うための準備金として高い金をリスベットはミカエルから借りています。大金を貸すということは、ミカエルもリスベットに対して信頼はしているのでしょう)。とわかると、必要な場面だったと分かります(難点は最後まで見ないと蛇足に見えてしまうこと。蛇足に見えない方法あるかな?)。

とはいいつつ、これではリスベットがただ恋に敗れただけなので、そんな感情をもちつつ、今後ミカエルに対してどういう態度をとり、そし彼女が変わるのかを見たくはありますね。この作品は小説の第一部です(この映画は小説を原作としたスウェーデン映画のリメイクのようですが)。続きがあれば、そこら辺もあったのでしょう(原作とスウェーデン映画版ならある)。

映画自体は面白かったのですが、消化不良感はあります。「ヴァンゲル一族」の事件がただ殺人事件だったこと(見立て殺人を推理する過程は楽しかった。「楽しかったのだからいいのでは」と言われればそうだけれど)、リスベットが報われない点(報われないこと自体が悪かったのではなく、リスベットがミカエルを見て、どんな感情を持ったのかもう少し見せて欲しかった。まあ、見せると野暮かもしれなけれど)。消化不良の原因はここら辺でしょうか。

映像で印象的だったのは、リスベットが後見人にマスターベーションを強要される場面(45:00あたり)。立っている後見人が座っているリスベットを見下ろす構図です。見下ろす後見人と、俯くリスベット力関係がその構図からわかって緊張感が出てますね。二人は同じように下を見ているわけですが、見ている対象がいないリスベットには怯えを、対象がいる後見人には圧迫感を感じます。多分よくある構図かもしれませんが、わかりやすくて良いですね。画面からの圧があるのは、監督の手腕なのかな?

リスベットが資料室で調べながら犯人に近づく。と同時にミカエルは物理的に犯人と思われる人物に近づく。この描写が同時に展開するわけですが、私が「ゴットフリートって誰(マルティンの父。何となく理解していたけれど。「何となく」と「明確に」では違う)」となってしまっていて、あまりこの描写を楽しめなかったです。理解していればもっと緊張感あったんでしょう。

物語は良かったです。映像も良かったです。すごい大作感がある。それゆえに期待しすぎたのかもしれません。面白く視聴できました。


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