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映画「酔いどれ天使」をU-NEXTで見ました。画から伝わる予感。

映画「酔いどれ天使」を見ました。1/3くらい、音が聞きづらくて何を言っているかわからなかった……。それでも面白かったです。画面の作りでしょうか。

物語は、感情的だが真摯に患者を見る医師、真田の元に松永というやくざがやってくる。診察すると真田には結核の疑いがあった。結核に病みながらも酒をやめない松永、それを止めようとする真田。出獄してきたやくざの兄貴分の岡田との確執でますますその命を縮めていく。松永は岡田を襲おうとするも返り討ちにあい亡くなる。

画作りに関しては、先日見た「天国と地獄」の方が良かった(「天国と地獄」の方が後に作られた作品であり経験と、監督しての指示の力上がり理想の画面を作れるようになったのだと思う)とは思いますが(モノクロの画面の白と黒の対比で人物を見せたり、人物配置で対象をクローズアップのように見せたり)、それでも画面からは「不安」や「緊張感」にあふれていて、強い予感を感じます。黒澤明監督が他の作品よりすごいと思える点は、画面から伝わる「予感」というものだと思う。画面を見るだけで、話がわからなくても(とは言い過ぎかもしれないが)、先が気になってしまう。力強さがある。

この作品に関しては、人物性も高い。真田は医療用のアルコールを飲料して呑んでしまうような人間であり、口が悪い(物事をはっきりいう。今時はこんな人は、漫画じみていて出すのは難しいが、昔はいたのでしょうか)が患者のことは気にかける(特に結核に関しては感情的になる)。松永も、暴れん坊でモテるというこういうやくざの人は物語でよく見るよねという感じではあるが、特徴的である(こういう人もいたのかな。よく見ると言っても、それは今現在の時代の観点から言っているからね)。その二人がぶつかりが物語のひとつの見せ場になっている。人間と人間のぶつかりで緊張感を出していくのは、物語の基本だが、絵から感じる「予感」からも緊張感を感じるのだ。まず、映画を通して出てくる汚い沼。作中で真田が、松永に「お前はちょうどこの沼みたいなものだな。お前の周りには腐り切ったやつばかり沸いている、そいつらと綺麗さっぱり手を切らないとダメだな(結核は治らない)」(台詞は少し端折っています)。汚い沼の中にいるのに、沼を綺麗にしないで、自分だけ綺麗にしようとしてもダメだと言っているんですね。沼というのは、この地域全体のことを言っているのかもしれません(一帯の街のお店はやくざの下にある)。当時の社会情勢がどうだかは、調べないとわかりません(画面からは戦争で壊れた建物もありました)。こういう街も多かったのかもしれず、この映画では松永の結核を通して、日本の社会情勢を見せているのかもしれません。これが一つのテーマかもしれませんね。結核自体も当時問題だったのかもしれませんが。汚い沼というものを用意し、一人の人間と当時の社会をつなげるというのはうまい作り方ですね。そして、この沼の存在が映画全体に不安感を与えている。岡田の帰還を恐れる真田のところに同居している女性美代の表情や、撮られた時の佇まいが岡田に対する恐怖感を与える。ギターから流れる音を変えることで、岡田が出獄したことを伝える演出も秀逸。結核の治療をしている女学生がきている時は、すごく平穏な場面なのだが外では雨が降り平穏さを作らない。そしてどんどんと衰弱していく松永、それに比例するようにやくざとしての立場も落ちていく、というリンクが不安感を煽る。沼で真田と松永が話す場面では、下から煽り気味にとって撮って顔をよく見せ不安感を出している。終盤の松永と岡田の争いでは、3つの鏡に映る松永を見せ松永の狂気を演出している。松永の持つナイフがクローズアップで映される(クローズアップはここだけかな)。ペンキの上の争い。松永が刺されて、室内から屋外に出る場面は解放感がある。松永にとっては、死が解放だったのかもしれない。洗濯物の動きが画面に躍動感を与えます(黒澤明監督の作品は常に動きがあると言いますよね)。

不安な予感は緊張感を与えますが、ホールで歌っている場面があって、そこは楽しい雰囲気ではありましたね(ここから本格的に松永は落ちていくのですが。最後の輝きってところでしょうか)。

顔のアップは、多くはないですがあったと思います。頭が画面外に出ているカットも。

物語の最後は、女学生の結核が治ったことを示し終わる。それは希望の暗喩でもある。

音声が聞きづらいところが多く、字幕でみたい気持ちもありましたが、素晴らしい作品でした。


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