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映画「僕のエリ 200歳の少女」をU-NEXTで見ました。少年はゆっくり少女に魅入られていく。

映画「僕のエリ 200歳の少女」を見ました。先週の「ダーク・ニア」先々週の「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」に続き、これも吸血鬼映画です。文芸という感じの映画ですね。エンターテイメントではない気がする。見てて飽きるということはないですが。冒頭から少年オスカーはぶつぶつと独り言を言っている。「この子は何でこんなこと言っているんだろう」と思わせて、オスカーのいる集合住宅に女の子が越してくる(わざわざカメラに映しているということは、これには意味がある)。何かが始まる予感をさせる。興味を惹かせるにはちょっと印象が弱い気もするが、続きが見たい始まり方。オスカーがいじめられていることがわかる(独り言はいじめっ子のセリフ。心の中で自分が相手に言うことを夢見ているのだろう)。そしてオスカーは、冒頭に出てきた引っ越してきた少女エリ(自分は女の子じゃない的なセリフを言っていたけれど、女の子でいいんだよね。歳を取りすぎて少女じゃないという意味か。吸血鬼だから人間ではないという意味か。男ってことではないよね?)と出会う。この映画は基本的にオスカーとエリの交流を描いている。

「ダーク・ニア」や「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」が、ヴァンパイアについての物語なら、こちらはヴァンパイアに出会ってしまった少年(人間側)の物語。同時に少年少女の淡い恋愛物語でもある。そして、恋をすることによって変わろうとする少年の物語でもある。確かにその側面もあるが、最後まで見ると、映画の印象がガラリと変わる。少年が吸血鬼に取り憑かれてしまった物語とわかる。

エリには、一緒に引っ越してきた中年の男性がいた。どういう関係かはわからない。エリの方が立場が上にも見えるが、主従関係があるかもわからない(死を覚悟してエリのために血を取りいくのを、止めようとしていたところから決して単純な主従関係とかではなさそうだ)。ただ、わかっているのは、その男性がエリのために血を取ってくる役目を負っていること。前半はその場面が効果的に入れらており、緊張感を出している。興味を持続できたのは、全般のこの展開だろうと思う(エリ自身が血を取りに行く場面もあった)。しかし、この男性は間抜けで、全然血が取れない。覚悟を決して、血を取りにいくも「何でそんな場所。そんな人間を選んだ」というところに行く。脚本上わざとなのか、ここだけ適当なのか、「それはないんじゃないか」と思った。

エリが血を吸うところから(血以外は受け付けないらしい。キャンディがなめられなかった)吸血鬼だとは判明していた。しかし、他にどんなことができるかわからなかった。男性が捕まったあたりから、エリはその超人的な能力を見せ人間でないとわかってくる。

オスカーはエリに恋して、今の自分がみっともないと思ったのか、体を鍛えたえていく。いじめっ子にも反抗の意思も見せる。「最愛の人に出会い成長したものの、最愛のものは異形のものだった」という展開で、一夏の恋(映画はやきが降っているので冬だと思う)、そして別れを経験して少年が成長していく物語かと思ったら、どうやらそんな展開にはならない(もちろん吸血鬼ゆえに、オスカーから嫌われた苦悩なども描かない)。エリはオスカーに「自分から離れろと警告を出すも」、エリ自身がオスカーから離れない。エリが吸血鬼とし知ってオスカーは動揺するも、やはりエリから離れない。オスカーにエリの正体がわかってから、序盤とは逆にエリが積極的にオスカーに会おうとして、エリからのオスカーへの思いが伝わり(吸血鬼のルールとして、部屋の持ち主から「入っていい」と言われないと、部屋に入れないというルールがあります。エリはオスカーが「入っていい」と言わないのに、オスカーと交流したいがために部屋に入り全身から血を流します。他のルールは「血を吸う」「陽光に弱い」「血を吸って生きていると、吸った相手が吸血鬼になる(実際には陽光に弱いだけだったが)」でした)、オスカーも再び心をゆるしていく。とにかくふたりは離れない。別れがないので、別れによる成長物語は完結しない。ラスト、エリが血を吸った人間の知り合いが、復讐にエリの部屋に来る(何で部屋知っているんだとは思った)。オスカーの機転で危機を乗り越え、その人間をエリは殺す。ここで二人は別れるのだが、「これでひとときの恋」の終わりかと思った。

オスカーは反抗したいじめっ子の兄により制裁を加えられるのだ。自分よりずっと力が強い存在に何もできないオスカー。そこにエリがやってきて、助けてしまう(いじめてた少年たちは一人以外惨殺される)。「ここは、少しでも自分の力で解決する方向にもってかないと成長物語としてまとまらなくないか?」と思う。この出来事があったプールから、場所は電車に、オスカーとエリが移動している場面で物語は終わる。「これは、何なのだ?」と思って、しばらく考える。オスカーは、最初にエリと一緒いた男性の代わりではなかろうかと。エリは200年生きている。意図的ではないのかもしれないが、こうやってエリは人間の中から長い人生を共にいきる存在を見つけては、暮らしてきたのではなかろうかという考えにたどり着いた。それを思うと恐ろしい。なぜならオスカーの人生はもう決まってしまっているから。エリと共にいた存在のように、エリのために血を取りに行く人になっていくのだろうと。

全然、方向性というか着地点が見えない映画だった。なので、見ているのが辛いところもあった。先の予測が出来ないから。エリとオスカーの二人の関係性で見ていることができた(いじめっ子への反抗や、別居している父との交流、他の誰かが来たら全く見向きもされないと気づく展開なども、これらの問題がどう絡むのかななんて思ってみることができた)。物語がいまひとつ中途半端に進んでいて、ラストが来るまで「この映画は何が言いたいんだ? 作った意図は」と考えてしまった。考えてしまった以上「この映画は何が言いたいんだ? 作った意図は」こういう様子は大切なんだな、気付く。最後に「この映画は何が言いたいんだ? 作った意図は」に気付いたときは、視界が開くようなパッとした印象が表れて快楽を感じた。閉じられた視界が、突然開く快楽。こういうの計算して作っているんだろうね。人の心に運動を生まれさせているんだね。

スウェーデンの映画だから、舞台はスウェーデンなのかな。ずっと雪が降っているし、降らない時も雪も常に残っている。場面から感じるのは「暗さ」と「冷たさ」、オスカーとエリの交流を見ていても、その冷たさは消えない。明るくさせようという音楽はない。なので、画面上では二人の幸せそうな場面もあるが、常に暗い未来の予感がつきまとっていた。

いわゆる「ファム・ファタール」ものというのだろうか。今日的にこういう言い方が適切かわからないが。別にオスカーは身を滅ぼしたわけではない。逆に、家族からも、友達からも逃げられ、恋した女性と出かけられるということで、幸せそうにも見える。しかし、見ているこちらからとしては、未来が見えてしまうのだ。ラストは静かだ、静かすぎて衝撃が薄らいだもうにも感じるが、衝撃には変わらない。面白いかというとわからないが。すごい作品ではあると思う。

引きの画面が多かったです。アップが比較的少なかったのだと思う。静謐さを感じさせたのはこれが理由でもあるだろう。

男の子(オスカー)の裸が多かった。

押井守さんの本(押井守の映画50年50本)を再読したら、男の子って書いてある。本の中でモザイクとあったが、私が見たのはモザイクが手で来る場面もなかったぞ(リメイク版には、その画面もないらしい)。オスカーがエリに付き合ってと言ったのは、それを知っててなのか、それとも知らない時なのか。この違いで印象が変わるぞ。同性間の恋は今現在でも、忌避する人はいます。異性間の恋には、映画の制作者が意味を付与しないと、それ以上の意味はありません。同性間となると、二人の恋愛以上の意味が付与されます。それを知って見るのと、知らないで見るのでは作品から感じる緊張感も変わります。緊張感が変わるということは、面白さも変わります。私の感想の最後の「ファム・ファタール」もおかしなこと言っている感じになっちゃいますね。まあ、そういう存在だということで。

吸血鬼については、まったく説明がない。エリが自分の存在が吸血鬼とういことについて悩んでいたりする場面も全くないね。エリの素性とかは、あまり明かされていない。意図的に説明しなかったのだろうけれど。エリの悩み、心情もあえて詳しく描いてない。

映像を調べたけど、モザイクがあっただろう場面は終わり30分くらい前のオスカーが、襟が着替えているところを見ちゃうあたりかな。終盤あたりだね(確かにモザイクではなく、薄くしているところあった。初見では、オスカーはエリの肩あたりを見ていると思っちゃった。背中と左腕に見えませんでしたか?)。告白は随分前にしているから、オスカー自体は知っていたけど(覗いて見てびっくりするのは、見てはいけない秘密を見てしまった気まずさから)、視聴者には謎として残していて(告白場面で男と言っているし)、知らせるという構成だったのだろう。

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