記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

映画「リコリス・ピザ」を見てきた。世代間のすれ違い。

映画「リコリス・ピザ」を見てきました。面白いかといわれると考えてしまいますが、大変良い作品でした。娯楽を求めると違うかもしれません。70年代、15歳の少年ゲイリーが、高校の写真撮影のためにやってきていたアラナに一目惚れし、デートに誘います。誘い方がユニークだったのか、アラナはゲイリーに会うためにやってきます。そんな二人の関係を追っていく形で物語は展開します。アラナはところどころでゲイリーに魅力を感じますが、ゲイリーの年齢からくる子供っぽさからか気持ちが愛へとは変わりません(しかし、ゲイリーが他の女性といると嫉妬するわけですが)。そんな世代間の違いからくる、すれ違いの果てに二人が結ばれていくまでを描いています。

どう見れば楽しんで見られるのか、難しい映画でした。15歳の少年が、25歳の女性に恋をする。ユニークな誘いで最初のデートにこぎつけるも、恋人同士というよりはアラナは保護者という感じです。ラストの場面までキスもしてないんだと思います。
世代間で揺れるゲイリーとアラナの心の動きを考え、楽しむ作品なんだなと思いました。テーマは愛でしょうか。ゲイリーの恋が愛へと変化するまでの物語であり、アラナのゲイリーに対する興味が愛へと変わっていく物語でもあります。その過程を丹念に描いています。

ゲイリーは子役として何本かの作品に出ています。保護者帯同で行かないといけない撮影に、アラナは保護者としてゲイリーに付き添います。見ている時は感じませんでしたが、ここではっきりと世代間を示しているんですね。アラナはこの同行で、恋人を見つけてしまっていますしね。ゲイリーは若いとはいえプレイボーイだと認識していたので、それを見て何もしないので少し驚きました。プレイボーイではあるけれど若さゆえに自信はないんですね。
10歳年上の女性に声をかける時点で、映画の人物としての魅力的はありますね。そして、上記のような行動(この場合何もしないという行動)から、性格も見えてきます。行動する選択を強いられている時、何を行うかでその人の性格が見えてきますね。たとえ何もしなくても、その行動が勇気のなさ故か、熟考のゆえかでもまた変わりますね。何にしても、その行動ひとつひとつから視聴者は登場人物を知り、その登場人物へ何を期待するかも変わりますね。
アラナが好意をもつ、役者や代議士候補なども面白い人物でした。ウオーターベッドを置きに行ったところの人(スターっぽい人)は一番興味深い面白い人物でした。ほとんど画面に映っているだけですが、ゲイリーの弟など。人物たちは特徴がある人が多かったですね。

アラナはゲイリーとの関係を維持しながら、いろいろな人へと心が移っていきます(明確に付き合って感じなのは、撮影時に出会った人だけだと思いますが)。
アラナは恋人がいない間、ゲイリーと一緒います。ゲイリーには子役としての魅力だけでなく、商才もありました。アラナはゲイリーの商売を手伝っていきます。アラナはゲイリーのそういう面を認めていくのでしょう(明確に認めている場面はありません。ただ、ゲイリーは誰かの愛、10歳差の女性を振り向かせるに十分な魅力があるのは伝わります)。ゲイリーはアラナを女優にしようともします。ゲイリーはアラナのことを近くに置きたくて、必死に色々なことをしているようにも見えますね(これも今思いついたことです)。
一時だけゲイリーは警察の勘違いにより捕まるのですが、アラナがそれを追っていく場面はとても印象的です。ここで、初めて二人の心が交わったような気がします。
アラナの心はなかなか捉えるのは難しいです。私は世代間の違いによってアラナのゲイリーの気持ちは揺れていると思ってますが、そういう説明が作中にあるわけではないです。そう推測される場面はありますが、台詞などでは説明されません。私は「歳の差による心の揺れ」ということに気づくまでは、「アラナひどい人だな。ゲイリーが他の女の子と仲良くしていると、嫉妬しているから『好き』という感情あるだろうに」と思ってました。アラナの感情を自分なりに「歳の差による心の揺れ」と推測してから、アラナに魅力を感じました。そうと理解してからこの映画を面白く見られるようになった気がします。

その後もアラナは大人の恋へと踏み出そうとしますが、それは失敗し、その度にゲイリーは走りアラナに近づき、アラナを守るように優しくします。しかし、アラナはゲイリーの子供っぽさに離れて行こうとするのです。
ゲイリーはアラナではなく同世代の女性に声をかけ、アラナはそれに明らかに嫉妬している場面もありました。世代間の考え方の違いだけでなく、25歳の女性と若い女の子という対比でビジュアルでも世代間を見せてますね。ゲイリーが明確に他の女性に興味を持ったのはこの場面くらいでしょうか?
新聞を読み報道を見、石油不足からゲイリー商売が立ち行かなくなることを予測するアラナにたいして、ゲイリーはそれらを見てもそのような考えは浮かびません。そここらも年齢差を感じさせますね。
ゲイリーは商売していたウォーターベッド設置の時、腹が立つ客に悪戯をします。それが成功すれば喜び。その時、ガソリン不足でトラックが動かなくなった時アラナがバックですごいうまい運転を成功させるとすごい喜びます。それに対して、うんざりするアラナ。このトラックのバック運転場面は、映画の一番のアクションポイントです。ここは娯楽作品のように楽しめましたね。そして、ここで私はやっと「アラナはゲイリーに対して今うんざりしている。これは年齢違いによる認識の違い考えさせる作品だ」と気づきました。それまでは、二人のうまく行かない恋愛模様を楽しもうとして見ていました。さまざまな示唆があったのに年齢差の認識の違いからくる心の動きを見る映画だと気づきました。この感覚のままで、もう一度見たらより楽しめそうです。

ラストはピンボール屋を始めたゲイリー、政治家の候補者のボランティアをはじめ、その代議士候補に恋するアラナ。アラナは代議士に夜レストランに誘われて行くも、そこには男性が。男性との関係を疑われたくなかった代議士が、そこに女性混ぜるためにアラナを呼んだだけでした。
恋に敗れたアラナはゲイリーを探しにいきます。その時、アラナが会いたいと一番に感じたのはゲイリーでした(いい感じに思っていた、選挙事務所の男性もいたのに、頭に浮かばなかったのでしょう)。アラナには帰るところとして、常にゲイリーがいたんですね。その時、アラナはゲイリーを自分が「愛している」と気づいたのではないでしょうか? ゲイリーもまたアラナを探していました。二人はキスし、物語は終わります。恋が愛へと変わるまでの映画でした。

いろいろ考えさせられて、後から映画のことを考えると面白い映画ですね。見ている時は退屈な場面もあります。映画館だからじっと見てましたが、家だったら途中でスマホとか見ていたかも。年齢差の恋。といっても二人ともまだ若い。アラナも25歳であり、大人の世界に行きたいと思っている。25歳と35歳での10歳差の物語では、こういう作品はとしてくれませんね。この作品のように、15歳と25歳の男女の物語でも、性別を逆にしたらここまで青春な感じの物語にばできなかったかもしれないですね。25歳の男性には制欲を表現する必要がありますしね。15歳の少年に性欲がないわけではないでしょうが、そこを越えるにはハードルがあります。ゲイリーはアラナに胸を見せてくれと言いますが、逡巡の結果アラナは見せますが、触らせはしません。品がなくなってしまいますが、最後の場面で触らせて終われば明確に成長が示せてよかったのではないかな、と思いました。
説明が少なくてわかりにくい部分もありますが、説明が多いとゲイリー、アラナの悩みを見せねばらなず。深刻な感じの作品になりそうです。説明がないからこそ、からっとした美しくみえる作品になっていたと思います。

アクションで見せる作品ではありません。この映画のような作品を見る時は、人々との関わりの中で、感情の揺れをどういう点を主として見せているか、その点を常に意識して作品鑑賞すれば、もっと早く映画の楽しみ方に気付けたかもしれないですね。良い作品でした。ハッピーエンドなので、幸せな気分になりますね。

恋人を想い、相手を助けたいと考えたとき、ゲイリーもアラナも走ります。その映像がとても印象に残ります。何回かそういう場面がありますので、視聴者に意識されるように演出しているのですね。見ている私も気分も高揚し、ゲイリーやアラナの気持ちに同化するような感情が押し寄せてきます。大変良い場面でした。 

私が新しく感じた要素は、すれ違いの主要因を「世代間」としていることでしょうか。恋愛作品でのすれ違いは、相手のことを思った行動が勘違いされたり、たまたまの行動(例えば男性が後輩の女性と仕事として食事に行ったのを、彼女に見られるとか)なんてパターンが多いかと考えますが、この作品でのすれ違い(すれ違いという表現が)は、ゲイリーを子供と思っていながら、魅力に思っているアラナの感情のためです。好きでありながらも、常識や思い込みから自分の気持ちを素直に認められないアラナの心がすれ違い要因です。ゲイリーは時に、同世代の女の子に興味を持ちますが、ずっと素直かと思います(子供のままです)。商売をみせたり、しているのは背伸びしていることを示しているとも解釈できますが。それをわかりやすい形で提示していないので、色々考えさせる要素があるのもいいですね。

物語の進行は、アラナとゲイリーの印象深い場面を積み重ねていか形でした。作中でどのくらい時が流れているのだろう。中盤くらいでもゲイリーが18歳と言ったような気がしますが、作品の中で訂正して15歳と言っていた気もします。もう一度見ないとわからないですね。

下記動画に「アラナは何物でもない自分から脱っしようとしている」という感じのことを語られていた。確かにそういう場面があったね。
恋愛要素だけでなく、多様な見方ができる映画でもあるんだね。こういう映画は良い映画だ。


更新情報はtwitterにUPしてます! フォローお願いします!

https://twitter.com/yuto_mori_blog

テーマを探求を中心とした映画ブログ書いてます。リンクは下記です。


映画の感想や、小説風の日常の記録でみなさんを楽しませたいと思っています! よろしくお願いします! 楽しめたら「スキ」「サポート」など頂けたら嬉しいです!