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食卓に秋をお迎えしました。

先日、こんなつぶやきをした。

外の木々が赤や黄に色付き始めたばかりだというのに、建物の中は赤と緑のクリスマスカラーに染まっている。

まだ秋をきちんと迎えていないのに、もう冬がそこにいるのに動揺した。

そんなわけで、友だち2人と秋を迎える会を開くことにした。

友だちの「うちに栗あるよ」の一言により、デザートはモンブランに決定。メインには秋鮭のホイル焼き、スープにはえのきのポタージュを作ることにした。

そのほかは「椎茸にする?」「鰹もいいんじゃない?」なんて言いながら、スーパーに向かう。

ホテル暮らしをしていたぼくにとって、久しぶりのスーパーは秋を詰め込んだ宝箱だった。レンコンや里芋、秋茄子など、次から次に目移りしてしまう。

ぼくの心を射止めたのは、ぶり。冬が旬だけどいいの?とつぶやく自分もいたが、ぶりの輝きには逆らえず、そっと買い物カゴに入れた。

友だちはかぼちゃを選んだ。ナッツと合わせるサラダがおいしいから、2人にも食べてほしいんだいう嬉しい言葉を添えて。

スーパーの次は、パンを買いに行く。犬が店内に寝転ぶパン屋さんで、フランスパンとフォカッチャを手に入れた。

気分がよく、歌いながら家へ向かう。思わず早足になる友だちに「ちょっと待って」と言いつつ、ぼくも歩くペースを上げる。早く料理を始めたくてうずうずしていた。

2口のIHの前に3人で立つ。さすがに狭いか…と、1人にはモンブラン用の栗を剥く担当をお願いした。

2人で協力しつつ料理を作っていく。部屋が秋のおいしい香りに包まれていくのに伴って、空腹感も高まっていく。空腹が限界だったので、モンブランを絞るのは後でということにした。

そして出来上がったラインナップはこんな感じ。

・えのきのポタージュ
・ぶりのカルパッチョ
・かぼちゃとナッツのサラダ
・秋鮭のホイル焼き

秋を全力でお迎えした食卓。友だちの素敵な器たちのおかげで、魅力が5割増しになっている。

友だち2人が好きだという映画『マンマ・ミーア!』を見ながら、秋の料理をいただく。

えのきのポタージュは優しく、脂の乗ったぶりのカルパッチョは満足感があった。かぼちゃのサラダにはナッツとレーズンが入っており、味と食感のアクセントが嬉しい。

ぼくが作った秋鮭のホイル焼きは改善の余地が大いにありそうだったが、秋が並ぶ食卓は、味覚も嗅覚も視覚も存分に楽しませてくれた。

『マンマ・ミーア!』を見て、「ギリシャに行って白い世界を歩きたい」「人生なんとかなるよね」などと、たわいもない話をするのも幸せだった。

待ちに待ったデザートの時間は、栗の裏ごしから始まった。味噌漉しを使い、力を込めて裏ごしをする。あまりのがんばりに持ち手が変形してしまうほど。

裏ごしした栗のペーストに6分立てした生クリームを合わせていく。少しずつモンブランに近付いてきた。

モンブランの土台にはビスケットとフィナンシェ。それぞれ自分が食べるものにクリームを絞っていく。完成したモンブランは不恰好ながら、それすら愛おしかった。

味は上品で、素材の甘みを感じられる。優しい栗の味わいに、あたたかい紅茶がよく合った。

秋をきちんと迎えてあげた夜。もう秋が終わっても思い残すことはない。

3人で歩く駅までの道で「次は冬を味わう会をしよう」と話した。フォンダンショコラでも焼こうかなと、今から幸せな計画を立てている。

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