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第四回 副産物

2021.6.9
第四回

 さて、今日も書いていきます。現時点で6,061文字を書いています。今日は8,000文字まで書いていきます。原稿用紙20枚分となりますね。とにかく書くだけ書いて、書く筋肉を付けようと思います。

 今日は、左手で文字を書くときに、「何を」書くのか、について書いていきたいと思います。まず、そもそも僕が左手で文字を書き始めたのは、職場で暇を持て余したからですが、そのときに書いていたのは、職場でもらった、基本知識の載っている小冊子です。それを、左手ではなく右手で書いていて、一人で「ボールペン字講座」をやっていたのですが、それを右手で3周ぐらいして支給されたノートも使い果たし、マニュアルの裏紙にまで文字を書くようになって、とにかくひたすら書きまくっていました、右手で。そうです、左手の前に、まずは利き手の右手で文字を書きまくっていたのですね。そもそも文字を書く行為自体が、僕は好きなんでしょうね。そうじゃないとそんなこと普通しませんよね。

 ただ、右手で書き始めたときは、左手で文字を書こうとは全く思っていませんでした。隣の席の人から、左手で書いてみたらと言われたことがあったのですが、「そういうんじゃないんだよね」とか言って、一蹴してました。あ、今結びついたのですが、昨日彼が右手を二回骨折した話をしていたのですが、そういうときに左手で文字を書けると助かる、と言いたかったのでしょうね。合点です。でも、そういうんじゃないんですよね、やはり。

 そもそも、左手で文字を書くことに関して、何らかの、得を得るためにやろうとしているわけでは全く無いのです。そういう思考回路があるならば、そもそも左手で文字は書かないでしょう。右手を骨折することも、あるかもしれませんが、そんなことはごく稀なことであるので、そんな機会のためにわざわざ左手で文字を書く特訓なんてまっぴらごめんです。

 僕はただ、右手で書きまくった結果、ある程度満足して、未開の地である左手に目が行ったんですね。それで書いてみたら、面白かった。だから書いている、それだけです。でも、その行為自体が面白い、ということ自体がもう一番嬉しいことなわけで、既に得をしているわけです。だからそれ以上に何かを求めているわけでもないのですが、何かをやると、必ず跳ね返りがあって、その跳ね返りは一方向だけでなく、拡散します。そして拡散した部分がいわゆる「副産物」ってやつです。その副産物も、僕は好きです。その副産物に何が生まれるのかも気になるし、ただ単純に楽しくてやっていたことの副産物は、また純度が高くて質の良いものが多いことが経験上分かっています。言ってしまえば、楽しくないと身につかないということです。その身につくことが、「副産物」なのです。

 前置きがかなり長くなってしまいましたが、今日左手で書いた文章は、「安保徹のやさしい解体新書」という本のテキストの一節です。この本は、僕が好きな俳優の窪塚洋介氏がインスタグラムで紹介していた本なのですが、何しろかなり分厚い本で、百科事典スタイルのものなので、普段なかなか読み進めることが出来ません。そういうときに、この「左手で文字を書く」のテキストとして使うのは非常に効果的なのです。

 普段読めなくても、左手で文字を書くことは休日もやるので、そのテキストとしてこういった本を使うと、少しずつですが読み進めることが出来るし、文字を書くペースが遅いので、嫌でも書いた内容は覚えます。つまり身につくのです。とりわけこういった百科事典的な、多くの知識や専門用語が載っているものには打ってつけのやり方かもしれません。奇しくも、左手で文字を書きながら、神経細胞の増殖を体感しながら、体全体の知識を左手を通して紙の上に記すのは、体全体を使った学びのような感じです。運動している感じにも、専門書を読みこなしている感じにもなる、不思議な感じです。こういった体験も、左手で文字を書くまでは知らなかったものでした。やはりやってみないと分からないですね、何事も。

 まあ、基本的にこの「左手で文字を書く」シリーズは、テキストは何でも良いのです。書きたいものを書く。どうせただの左手の運動なので。そして上手くなりたいわけでもないので。でも何かしら書けば、書いた分だけ左手は経験するので、必然的に上手くなります。結果的にその経験は、書くこと以外の左手の動作にも現れると思います。そのとき何が起こるのか、実は、その一番の副産物こそが、自分が継続的に書いている理由かもしれません。

 全ての物事はつながっていて、それはその中心に自分という意識と体が存在するからであり、その中心に何らかの変化があると、周りの全てに変化が及ぶ。その様をただ見たい、それが根源的な行動の動機です。さて、これを読んだあなたには、どんな副産物が生み出されるでしょうか。それも気になります。

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