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ラポール 3:日常的に起こる巻き込まれ
木之下:この時限では、巻き込まれることは、日常的なことで、まったくめずらしいことではないことに触れていきます。
むしろ、人が社会生活を送っている以上、当然のように起こります。
君たちがこれまでの人生で、巻き込まれたと感じたことがありますか?
円山:多分、これがそうだだと思うのです。友達の恋愛相談で起きました。
木之下:具体的にはどういったことですか?
円山:親友に好きな男の子ができて、どうしたらいいか相談されたのです。私はアドバイスを行いました。でも、それだけではすまなくて、どういうわけだか、彼女が書いた手紙を男の子に渡すことになりました。
その結果、私が、その男の子を好きになっているといううわさが立ち、ややこしくなりました。
木之下:うんうん。ありそうな話ですね。
円山:そんな気楽に言わないでください。予想以上に苦労したのです。
木之下:ごめんなさい。分かります。
橘:私も友達の恋愛ごとに巻き込まれたことがあります。手紙こそ渡しませんでしたが。
木之下:じゃあ、円山さんよりも傷が軽くてすんだのですね。
橘:いえ、それが…
木之下:それがどうしたのですか?
橘:私は、手紙を届ける代わりに、バレンタインのチョコを渡すはめになったのです。
木之下:えー。それって、受ける誤解が大きいですよね。
橘:そうなんです!でも、私、割り切ってチョコを渡して、後は知らん顔をしました。
木之下:橘君は、気が強いですね。
橘:私も否定しません。
チョコを渡した翌日、その男に「俺にほれているのか?」と聞かれました。
「いいえ」と顔をみないで答えると、「ウソつけ」と言われたので、そのまま立ち去りました。
後、2回ほど迫られましたので、改めて自分で選んだチョコを渡しました。
木之下:さらに大きな誤解を生みませんでしたか?
橘:それから、声をかけられなくなりました。
円山:何を贈ったの?
橘:思いっきり精巧でリアルに作られた、ウ○コ型のチョコ。
円山:えー、涼香ちゃん、過激すぎない?
木之下:爽快な武勇談ですね。
それでは、二人とも「巻き込まれ」を実感した体験があるのですね。
さきほどの2人の話は、偶然、「友達」と「恋愛」という2つのファクターが組み合わさったものです。
では、他にも近しい関係である、「家族」とは何かありましたか?
円山:はい。母が卵巣癌だと宣告されたとき、一家全員が凍り付きました。検査結果が分かるまで、会話も減って、食事の味もなくなりました。家の中が暗くなりました。
木之下:それは、心痛む出来事でしたね。
円山:ええ。手術したら、初期段階で取り切れただろうと言われましたが、病理検査に結果が出るまではハッキリしませんでした。さいわい、周囲のリンパ節への転移はないということが分かって、ずいぶん安心しました。
家の中も明るさを取り戻しました。
木之下:よかったです。
ところで、橘さんには、何か家族にまつわる「巻き込まれ」の体験談はありますか?
橘:私は直接の当事者ではないのですが、親戚がらみの問題があります。
おじさん、つまり母の兄がペットショップを作るために借金をしました。また、借金するために、祖父が保証人になりました。
おじが作ったペットショップは、始めの3年間くらいはよかったようなのですが、次第に経営が悪化して、5年後に倒産してしまいました。
おじと祖父は、ともに自己破産しました。
さいわい、母は保証人になっていなかったので、債務はまぬがれたのですが、2人に気を配り、お金の援助もして、けっこうやつれてしまいました。
母は大いに気力をなくしました。あれは、巻き込まれたのだと思います。
私も母の影響を受けましたが、ちょうどその頃、独立心が旺盛な時期だったので、客観的に眺めることができたのだと思います。
木之下:よく1人で乗り切りましたね。
かなりプライベートなことを言わせてしまってごめんなさいね。
橘:いいえ。こうして、少し考えただけで、「巻き込まれ」の問題は、ごく身近にあることを思い知りました。
木之下:それは、とても大きな気づきです。
「巻き込まれ」の問題は、すぐ近くにあるのです。
橘:先生、いつになくマジメな顔つきですね。
木之下:いや、ぼくは、基本的にマジメな質(たち)なのですよ。
橘:全面的に否定はしませんが、私は、木之下先生に関して、ある噂を聞いています。
ドラクエが発売された日、3日寝ないでゲームをした結果、ゼミを欠席したという、逸話?武勇伝?厚顔無知?の話が出回っています。
木之下:えー、あれは、「類い稀なる集中力」と解釈してくれませんか。
円山:橘さんほどではないですが、私も少し耳にしています。
その上で、このゼミに参加することに決めたのですから、私たちの意も汲んで下さい。
木之下: ぼくには子どものような好奇心があります。
君たちには、観音さんのような慈悲があるようですね。
円山:先生、では、話を進めて下さい。
木之下:はい!君たちの口撃の前に私は、ある重要なことを述べました。
これを、少し言葉を変えて、補足します。
「親しい人にこそ、巻き込まれやすい」
親密度と巻き込まれ度とは、正の相関関係にあるのです。
・親子は巻き込まれやすい
・家族・親族も巻き込まれやすい
・守りたい人には巻き込まれる
・恋した人には、巻き込まれる
・友人に巻き込まれることがよくある
・親切な人には巻き込まれやすくなる
自分の気持ちの親密度と巻き込まれやすさは比例する。
どう、思いますか?
橘:まだ精査はしていませんが、直感的に理解できます。
円山:私も、そうなのかな、と思いました。
木之下:この時限のエッセンスは、ここにあるのです。
では、次の時限では、「巻き込まれ」にみられる、もう1つの「特徴」について話し合いましょう。
橘、円山:はい。
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考察:親密度と巻き込まれは、正の相関性がある
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