債権者集会

倒産した出版社から未払い印税を回収した話(2)

 1991年、篠山紀信撮影の女優・樋口可南子の写真集、『water fruit』(朝日出版社)が発売された。これは陰毛が露出しているヌード、いわゆる「ヘアヌード」だったが、警察は摘発しなかった。それまで、警察は「陰毛が露出しているか否か」をわいせつ取り締まりの基準にし、「表現の自由を侵害している」と批判され続けてきたから、大きな姿勢の転換であった。

 以後、ヘアヌードは一般週刊誌のグラビアまで飾るようになり、一大ブームが到来する。

 そのようなおり、「F書房」は設立された。「学園祭の女王」と呼ばれたS・Aのヘアヌード写真集で大当たりし、急成長していった。

 出版のメインはヘアヌード写真集だったが、単行本も手がけていた。その中には、世界情勢や学校のいじめ問題などを扱う「社会派」と分類されるものもあり、私も、そういうジャンルの単行本を2冊出版した。

 ところが、ヘアヌードのブームは長く続かなかった。1990年代半ばになると、写真集の売り上げはガクンと落ちてきた。F書房は一気に出版点数を増やしていたため、業績が悪化するのも早かった。

 私は2冊目の単行本を1995年12月に出版していたが、その報酬(印税)の支払いは滞っていた。F書房の要請で分割払いに応じたものの、それでも支払いが予定どおり履行されなかった。

 1996年10月中旬、F書房の弁護士から「債権者集会開催の御通知」という書面が郵送されてきた。

 それによれば、F書房は「負債総額が約6億5000万円に上り、資金繰りができなくなり、(中略)精算していく方向」であり、「債権者集会を開催し、(中略)現状および今後の方針の詳細についてご報告致したく存じます」という。債権者集会は約10日後にあわただしく設定されていた。

 その時点で私への未払い報酬は25万4000円だった。

債権者集会(大)

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