飛田友宏元教諭が記事の削除を求める裁判(5) 「取材・報道の自由」を脅かす名誉毀損裁判の実態!
2023年4月20日にnote運営事務局からメールが届き、〈横浜市が性暴力教諭の懲戒免職を隠蔽〉の記事を削除するよう求める仮処分が提起されたことを知って以来、私は何回も同記事を読み直した。しかし、同記事が名誉毀損で訴えられても、負ける可能性がある部分が見つからなかった。そもそも、そのような弱点がある記事ならば、公開していない。
4月25日、私は、飛田友宏元教諭(代理人:櫻町直樹弁護士)が東京地裁民事第9部へ提出した「削除仮処分命令申立書」を提供された。しかし、同申立書は、飛田元教諭が記事を名誉毀損と主張する理由が全部黒塗りだった。飛田元教諭はnote株式会社を相手どり、記事の削除を求める仮処分を提起しているので、「第三者」の私には、こういう扱いが許されてしまうのである。
それでも、5月8日までに記事の削除を拒否する理由を証拠つきでnote運営事務局へ知らせなければならない。私は以下の3点について「陳述書」としてまとめ、「添付資料」(証拠)と一緒にnote運営事務局へ提出することとした。
(1) 実名報道の正当性。
(2) (1)に加え、教員の懲戒免職の場合、「実名報道の必要性」があること。
(3) 「取材・報道の自由」を侵害する裁判は許されないこと。
(2)については、「削除仮処分命令申立書」の黒塗りされていない部分に以下の記述があることに対する反論でもある。
〈とりわけ、債権者(寺澤注:仮処分では、通常の裁判の原告を債権者という。飛田元教諭のこと)は「教員」という職にあるところ、教え子やその保護者が債権者につき検索することによって、本件記事を発見、閲覧することも容易に想定される〉
5月7日から8日にかけて徹夜で完成させた「陳述書」は以下のものだ(全文)。
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陳 述 書
2023年5月8日
東京地方裁判所民事第9部御中
寺澤 有
私は、飛田友宏元教諭が削除を請求している記事「横浜市が性暴力教諭の懲戒免職を隠蔽」(以下、本記事)を執筆し、公開しているジャーナリストです。
本記事の削除には理由がありません。
以下、私の主張を陳述いたしますが、主要な部分が黒塗りされた「削除仮処分命令申立書」のみしか見せられていないことには、十分、ご留意ください。
1.教諭の懲戒免職は実名報道
私が2021年10月14日に公開している記事「新横浜市長の記者会見でフリーランスは質問できるのか(11)」でも、横浜市立小学校の教諭の不祥事を取り上げています(添付資料1)。
2022年3月25日、当該教諭は懲戒免職となり、「中尾武彦教諭」と実名報道されました(添付資料2)。
飛田元教諭も懲戒免職ですから、実名報道されるのは当然です。
2.飛田元教諭の懲戒免職の実名報道は文部科学省の施策にも合致
2021年10月28日に飛田教諭(当時)が懲戒免職となり、その理由が「教育職員免許法施行規則第74条の2第8号イ」すなわち「児童生徒性暴力等」に該当することは、2021年12月21日の『官報』に掲載されています(添付資料3)。
『官報』に教員の懲戒免職の理由が記載されるようになったのは2021年度からで、文部科学省がわいせつ教員問題の対策を強化するため、省令を改正したからです(添付資料4)。
飛田元教諭が「児童生徒性暴力等」の理由で懲戒免職となっていた事実を実名報道することは文部科学省の施策にも合致します。
3.本記事の削除を請求する真意
通常、記事の削除が請求されるのは、記事が公開された直後です。
本記事が公開されたのは、2022年6月22日。本記事の削除が請求されたのは、今回の仮処分命令が申し立てられた2023年4月14日。約10カ月も経過してから本記事の削除が請求された真意については、疑問を抱かざるをえません。
しかも、本記事が公開された半日後、私は山中竹春横浜市長の記者会見で本記事に基づく追及を行っています(添付資料5)。本記事の影響を言うならば、なおさら速やかに削除が請求されていなければ不合理です。
本記事で証言しているA子さんと母親は、刑事と民事の両面で飛田元教諭の責任を問うべく動いています。
また、本記事が公開されてから現在まで、私の元に飛田元教諭の好ましくない情報が寄せられています。
早晩、続報が公開される可能性が高いと言えます。
もし、飛田元教諭が上記のような状況を憂慮し、本記事の削除で事態を打開しようと考えているのなら、大変な考え違いです。
従前、私はフェイスブックのメッセンジャーで飛田元教諭に取材を申し込んできました(添付資料6)。
飛田元教諭が釈明したいことや希望していることがあるならば、直接、私へ言えばいいことです。釈明は必ず記事に記載されますし、希望がいれられる場合もあります。
なお、私は、本記事の削除が請求されたことは、日本国憲法第21条が保障する「取材・報道の自由」が侵害されたと認識しており、今後も侵害行為が継続されるのであれば、法律面でも報道面でも毅然と対応するつもりです。
以上
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「陳述書」は添付資料と一緒に、5月8日5時2分にメールでnote運営事務局へ送った。すでに夜は明けていた。
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