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飛田友宏元教諭が記事の削除を求める裁判(3) 「取材・報道の自由」を脅かす名誉毀損裁判の実態!

 2023年4月25日、私はnote運営事務局の羽鳥氏からメールで「削除仮処分命令申立書」のコピーを受け取った。4月14日に飛田友宏元教諭(代理人:櫻町直樹弁護士)が〈横浜市が性暴力教諭の懲戒免職を隠蔽〉の記事の削除を求めて、東京地裁に仮処分を申し立てたというものだ。

削除仮処分命令申立書(印影にはモザイクをかけた)

 ただし、債務者(通常の裁判でいえば、被告)は、記事を執筆し、公開している私ではなく、記事を流通させているプロバイダのnote株式会社である。紙の本でいえば、著者や出版社を訴えるのではなく、書店を訴えるようなものだ。債権者(通常の裁判でいえば、原告。今回のケースでは、飛田元教諭)が、このような手段をとったことについて、山下幸夫弁護士は次のように言う。

「事情を知らないプロバイダを相手にして、仮処分を得ようとしているのではないかと思います」

 本来、「当事者」であるはずの私は蚊帳の外に置かれ、自分の記事が削除されるかもしれない裁判が進行していく。極めて理不尽な話だ。

「第三者」の私の要請ではあったが、当事者から「削除仮処分命令申立書」のコピーは送られてきた。しかし、飛田元教諭が記事を名誉毀損と主張する理由は全部黒塗りだった。

 私は山下弁護士のアドバイスを聞いたうえで、4月26日10時45分、以下のメールをnote運営事務局へ送った(全文)。

――――――――――――

羽鳥様

 マスキングした申立書の写しを送っていただき、ありがとうございます。

 しかし、昨日、当方の代理人の山下幸夫弁護士(東京弁護士会)へ転送しておいたところ、今朝、以下の指示のメールが来ました。

〈昨日、申立書の転送を見ましたが、肝心の部分が黒塗りのため、回答しようがないので、昨日連絡してもらった照会書(寺澤注:前日、寺澤が山下弁護士の指示を受けて、note運営事務局に「侵害情報の通知書兼送信防⽌措置に関する照会書」を送付するようメールで連絡している)にある「侵害されたと考えられる権利」「侵害されたと考えられる理由」を記載して送付するように求めて下さい。黒塗りのある申立書の転送では不十分です〉

 くり返しとなりますが、本件は、日本国憲法第21条が保障する「表現の自由」「取材・報道の自由」に関する重要判例ともなりうるものです。

 note株式会社も「表現の自由」の庇護のもとで事業を展開されているわけですから、事後に不備を批判されるような対応は避けるべきと考えます。

 当方からの回答書と証拠の提出は5月8日が目処とのことです。

 相手方が「侵害されたと考えられる権利」「侵害されたと考えられる理由」としているものの詳細がわかりしだい、回答書と証拠の準備にとりかかります。

 速やかな返信をお願いいたします。

――――――――――――

 羽鳥氏から返信が届いたのは、同日16時18分。「大変恐縮ではございますが」で始まるメールには、以下の記述があった。

〈意見照会時にマスキングしたもの以上のものをクリエイターに提示すると、請求者からプライバシー侵害などとして訴えられるおそれを抱えているため、マスキングしたもの以上のものをお送りするのが難しく、今回のような対応とさせていただいております〉

 もし、プライバシー侵害などのおそれがあるならば、その部分のみを黒塗りにすればいい話。いわゆる「のり弁」(全面黒塗り)の書面を送ってきて、「これで意見を述べてください」と言われても、そんなことができる人はいるのだろうか。

 一方、メールには、希望が持てる記述もあった。

〈当社としても、本件の重要性は理解しており、当社としてできる範囲での反論はすでに弁護士に依頼のうえ、準備しております。本件は、クリエイターが誰なのかが明らかなものであるため、仮処分は却下される可能性が高く(別件において同様の判断をいただいたものもあります)、本訴において、当事者間でご対応いただければと考えております〉

 飛田元教諭とnote株式会社との間で出来レースのような裁判が行われ、私の記事が削除されるのではないかと危惧していたが、どうやら、それはなさそうである。

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