【地方史のつむぎ方 北海道を中心に】山本竜也著、尚学社、2024年 #優読書
本屋に行く機会がめっきり減った。
というより、最近はめっきりカフェにもテニスにもサウナにも行く回数は激減しているので、本屋だけではない。
でも、AmazonやKindleによって、読まなければいけない本は手元にどんどん増え、本に追いかけられる日々だ。
先日、札幌の紀伊國屋書店の近くに行く用事があり、思いのほか早く終わったので、帰りがけにちょっと立ち寄ってみると、晴れ晴れとした気持ちになれたのが不思議だった。
たくさんの本が並んだ空間に、本好きが集まって、ゆったりとした時間が流れている。
この、たゆたゆとした時間がたまらなく良い。
現実に少しずつ引き戻されて、お店を出ようとすると、右手の先に「北海道の書籍」コーナーがあることが目が留まった。北海道に住む人たちが書いた本がいろいろと置いてある。
そこで、ふと手に取ったのが、本書だ。
同年代の気象庁の方が、北海道の寿都の空襲の歴史をまとめた話などを書かれていて、パラパラとめくって目を追っていくとなんとなく手が離せなくなった。
3,400円+税。決して安くはない本だし、読んだことがあるジャンルではない。
でも、こういう新しい本との出会いこそ本屋の良さだよな、と自分を納得させながらレジに本を持って行って、お金を払った。
「カバーをつけますか?」男性の店員に聞かれてちょっと戸惑った。
そうだ、本屋で買うとカバーがつけられるんだ。アメリカ発のECの覇者は、大正時代から続く日本独特の文化も壊していく。
そうして、珍しく本屋を通じて書棚にやってきた本書。
すごく面白かった。
自身のボキャブラリーの無さを痛感するが、本当に面白かった。
共感しかない。
北海道でも決して有名とはいえない「寿都」(すっつ)という小さな町で、先の大戦で米軍による空襲で亡くなった方の名簿を作っていくという作業を行った著者。
その過程で亡くなった方の息づかいや、後に残された人たちの戦後を追っていくことになる。
この本にはいろんな人が登場してくるが、共通しているのは、人々の息づかいだ。
政治や行政、軍、会社といった大きなシステムのなかで翻弄とされながらも、生き抜こうとしてきた人々の息づかい。
それを聞き語りによって丹念に残そうとする人たち。書き残すことで後世に伝えようとするそれぞれの使命感。
グッとくることがたくさんあった。
宮本常一の「忘れられた日本人」的な何かを感じたと同時に、政治家として戸別訪問をしていると、ときどき、似たような感覚に襲われることがあるのを思い出した。
名著です。
本好きにはぜひ読んでほしいです。
#優読書
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