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議論中に生まれる違和感は誤謬のせい

はじめに

こんにちは。ITエンジニアをしているTRMです。
突然ですが皆さんは議論の最中に『前提や方向性に違和感を覚えたものの、その違和感を上手く説明でなかった』というような経験はありませんか?私は日々の仕事やマンション理事で、これらの違和感を覚えたものの適切な言葉で説明できないがために、その場で何も言えずモヤモヤした記憶があります・・・。
ある日これらの経験を振り返った時、実は違和感の原因には特定の現象があり、それらの現象には聞き慣れない名前がついていたことを知りました。

違和感は「誤謬」が原因

「ごびゅう」と言います。皆さんは日常の中でこの言葉を聞いたことがありますか?一般的な言葉だったならお恥ずかしい限りですが、自分は3x年以上生きていて聞いたことも読んだことも無い言葉でした・・・。

誤謬とは論理学や議論において、推論や論証の過ちや間違いを指す言葉で、これがあると論理的に正しい結論にたどり着くことができません。自分は議論における違和感の大半はこの誤謬があることで起きていると思いました。誤謬には話し方によってそれぞれ名前があるので、よく起こりがちであろういくつかの誤謬について紹介します。

誤謬の名前と例

※論理学を専門に学んだことがない筆者の解釈なので、誤りがありましたらご指摘ください。

ストローマン

議論相手の主張を歪曲し、その歪曲された主張に反論することで相手を打ち負かそうとする話し方です。

例: 会社でリモートワーク制度継続の是非を議論をしています。ある役職者が
「緊急事態宣言中、オフィスに出社する社員はウィルス感染のリスクを負って出社するので、日当を出すべきではないか」
という主張に対し、ある社員が
「リモートワークの社員が評価されない仕組みはおかしい。会社のカルチャーにとって悪影響がある主張だ!」と反論しています。
役職者はリモートワークの社員については、まだ何も言及していないにも関わらず、「評価しない」と言及したかのような前提で反論しています。

レッドヘリング

本質から外れた情報を持ち出して議論の焦点を変えることで、本質的な問題を避ける話し方です。

例: WebサービスのDAUを伸ばすために、Like機能を追加する是非を議論しています。
あるデザイナーが「僕は画像と文字をポストする機能が欲しいと思っています。あと前々から思っていたんですが、ユーザー同士のコミュニティ機能も追加したほうが良いと思ってて、それは要するに云々〜・・・」という議論の趣旨から外れた提案をし発散的な議論が展開され、本来のLike機能の議論が進んでいません。

循環論法

論理の結論が根拠として使われる話し方です。

例: マンション理事で宅配ボックス設置の是非を議論しています。賛成派の田中さんは
「設置することで住民の生活が便利になり、セキュリティが向上する」
と言い、反対派の鈴木さんは
「設置には購入代金以外にもメンテナンス/管理の費用がかかる。さらには設置場所や設計に関する問題もある」
と反論しますが、これに対して田中さんは
「設置によって住民は荷物を受け取るために家にいる必要がなくなり、不在時の配達や盗難のリスクが減少し住民の生活が便利になり、セキュリティが向上する」
と言い返します。
そもそもこれらの田中さんの主張は「宅配ボックスの設置で住民の生活が便利になる」という結論そのものに基づいていて根拠が循環しており、セキュリティ向上の根拠を示しているようで示せていません。

人身攻撃(アドホミネム)

議論相手の人格や属性を攻撃して、彼らの主張が間違っていると主張する話し方です。

例: マンション理事で機械式駐車場廃止の是非を議論しています。廃止賛成の吉田さんは
「駐車場利用率が低下している現在の状態では、将来のメンテナンス費を捻出できないのですぐにでも廃止すべき」
と言うと、反対派の車好きの福井さんが
「吉田さんは免許も車も持っていないので、意見は全く当てにならないし意味がない」
と反論します。
そもそも吉田さんが免許や車を持っていないという事実は、主張の正当性とは無関係です。吉田さんの意見は、機械式駐車場の導入に関する議論の根拠や論理性に基づいて評価されるべきです。

終わりに

以上、自分の過去の経験において覚えた違和感とそれに当てはまる誤謬を紹介しました。皆さんもどれかに当てはまる反論を受けたり耳にしたことは無かったでしょうか?
私は、こういった誤謬の名称と説明を知っておくと、今後待ち受けている様々な議論の質が上がるのではないかと思いました。この記事が誤謬を知らなかった過去の自分のような人達に対し、少しでも気づきを得る機会になってくれると嬉しいです。

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