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旅へと駆り立てる1冊の本

海外へ旅することに憧れていた当時18歳の自分を、実際に旅人に変えたのが、石田ゆうすけさんの「行かずに死ねるか」だ。

この本は、30歳前後で安定したサラリーマン生活を離れ、自転車で約5年の世界一周に繰り出した作者のエッセイで本当に面白い。
気取らず、ダイレクトな文章なのに、著者の心情、登場人物、風景の描写が緻密で感情移入しやすく、本当に世界を自分も旅をしているような感覚が味わえるのはもちろんのこと、関西人丸出しな感じで終始笑えるのもいい。面白すぎて実家への帰省途中の電車の中で読み始めたが、降りるべき駅で降りるのを止め、終点の駅まで読み続けたのを覚えている。

自転車で旅をしていることもあり、この本には聞いたこともないような場所がたくさん出てきて世界が広がるのに加え、旅へのロマンがどんどん膨らむエピソードが詰め込まれている。例えば、ユーコン川を1週間かけてカヌーで下りオーロラを見る、旅先で出会った仲間とアフリカを自転車で縦断する、といったものだ。一般的な観光地へ出向くのではなく、未知の場所へ出向くこと、旅先で出会うユニークな人たちとの会話、関わり方など旅の醍醐味や希望が詰め込まれている。

読み終わった頃にはいても立ってもいれなくなり、気づいたら友人を誘い、ユーコン川のあるホワイトホースという街までのフライトを購入していた。
はじめての海外がユーコン川だった。今思えばはじめての海外で韓国や台湾、東南アジアなどの定番を選択せず、普通とは言い難い旅先を選択したことがアイデンティティを形成したし、月並みな旅はしないというやんわりとした取り決めが自分の中で行われた。その取り決めはやがて普通の人生は送りたくないというものに変わっていったかもしれない。

いずれにせよ旅のあり方そしてもしかしたら人生のあり方を形成してくれたのが、この本だった。これまでにない旅へあなたを駆り立て、そして人生に変容を起こしてくれる本だと思います。よければ是非。


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