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パーソナルトレーナーの女性の方への10シリーズ_#5

「パーソナルトレーナー」の女性の方に、ロルフィングの「10シリーズ」を体験してもらった「感想」を紹介している記事も、今回で5回目の「セッション5」になりました。

セッション5に関しては、「大腰筋と腹腔空間」にフォーカスしていきます。

大腰筋」は「脚の起点」となる筋肉で、「みぞおち辺り横隔膜)」から「股の付け根(大腿骨の小転子)」まで伸びています。

縦に細長い筋肉が左右の「大腰筋
その上のパラシュートのような形が「横隔膜
その上に乗っているのが「心臓」です。

つまり、上の図のように、「みぞおちから、脚が生えている」と、ざっくりイメージしてもらっていいかと思います。

骨的視点」で見ると、脚の起点は「股関節」なのですが、「(骨を動かす)筋肉的視点」になると、この「大腰筋」から脚が始まっていると考えることができます。

今回のセッションでは、その「大腰筋」にアプローチすることで、「脚を長く使えて、歩く時に自然に歩幅が広くなる」という感覚を体感してもらえたらいいなと思います。

もう一つの「腹腔空間」というのは、「内臓が収まっているお腹の空間」になります。

僕たち人間は、「様々な臓器や器官が織り成す、複雑な連携システム」のおかげで、食べたご飯の栄養を吸収したり、血液の循環を維持したり、酸素、二酸化炭素のガス交換をしたり、余分なものは排泄したりすることができます。

もしも、身体の「姿勢」に「歪み、偏り、捻れ」があると、内臓が収まっている空間が「窮屈」になってしまって、「内臓の動きの制限」を引き起こしてしまうことがあります。

ある内臓の動きが鈍くなると、関連している他の内臓にも影響が出てきて、それが「全体の連携システムの不具合」にまで連鎖していくと、「病気」や「心身の不調」につながっていってしまう可能性もあります。

つまり、僕たちの「健康」というのは、「内臓たちが、互いに連携し合いながら、元気にのびのびと働いてくれている」ことによって日々支えられていて、そのためには、「広々とした空間」が必要なのです。

今回のセッションでは、「内臓が収まる腹腔空間の中で、窮屈なところにスペースを与える」ように、手で働きかけていきます。

前置きが長くなってしまいましたが、より理解を深めたい方は、後半の「解説」もご覧になってみてください。

前回までの感想はこちらにまとめてあります。

それでは「セッション5」の感想をどうぞ。

セッション5の感想

ロルフィング5回目

今日は約1ヶ月ぶりのロルフィングセッションでした。

五回目は大腰筋のリリースです。
わたしの要望で、ふかーく説明していただきました!

大腰筋は脚部と背骨をつなぐとっても大切な筋肉で、上部では脊柱そして横隔膜とつながり、下部では大腿骨とつながります。(1)

テンセグリティの考え方(2)や、大腰筋の起始、もしくは「心臓から脚が生えているイメージ」で動くと効率のいい動きができたり、それを腕や首につなげていって、それらが関連し合いながら動くイメージも教えてもらいました。(3)

今まで大腰筋のことを学んだことはありましたが、今回の大友さんの大腰筋の様々な角度からの説明のおかがで、パーソナルトレーナーとして、お客さんの動きの改善に役立てそうで、とっても参考になりました!

いつもとっても勉強になりますが、ムーブメントに関しても、とっても詳しいので、ロルフィングセッション以上の価値を感じます!(4)

今日のセッションも、いつも通りにエネルギー療法からはじまりました。

今日はわたしの身体が比較的に静かな感じで、特に何も反応がなかったのですが、左腰の下に手を置いてしばらくすると、左の太ももが静かにゾワゾワしてきました。いつも何でゾワゾワするかはわからないですが、ゾワゾワが収まるとスッキリします。(5)

次に大腰筋のリリースの前に、胸郭の上部に少しアプローチすることで、大腰筋に施術した際に、上(頭)の方にリリースしたエネルギーの「逃げ場」を確保する作業をしていると説明してくれました。(6)

それが終わると、いよいよ大腰筋のリリースをしてもらって、大腰筋の長さを正常な長さに戻してもらいました。

お腹側からゆっくり指を滑らせて大腰筋まで到達させて、収縮していた筋肉を緩めてくれました。(7)

最後に身体全体を仕上げてもらって、今回は終了しました。

セッションが終わった後は、呼吸がしやすくなって、自分の中に入ってくる空気の流れがよくなった気がしました。(8)

さらに地に足が付く感じがして、腰の詰まりもなくなり、頭の位置もセッション前よりいい位置を取れるようになりました!(9)

大腰筋もスムーズに動くようになり、脚を前に出したり、太ももを持ち上げたりするのが楽にできるようになりました!

翌々日にアルティメットの練習を一日中していましたが、足も攣らずに、走り切ることができました!大腰筋がしっかり働いてくれている気がします!
徐々に身体が出来上がってきている感覚がしてうれしいです。(10)

次回も楽しみです。

より理解を深めるための解説

(1)『ターザン』などの一般向けの雑誌にも特集されることがあるくらい、注目されることの多い筋肉です。

「大腿骨の付け根(小転子)」に付着していて、鼠径部を経由して、骨盤の内側の壁に沿うように上に上がっていって、脊柱(背骨)の下側にある「腰椎」の横にくっついています。

身体の「移動」に関わっている筋肉で、主な働きは「脚を前に出す(股関節の屈曲)」ことですが、「脊柱の安定(体幹、コアの剛性を高める)」や、「呼吸の補助(呼吸の主役である横隔膜の「脚」と呼ばれる部分とつながっていて、息を吸う際に、横隔膜が下に下がるのを助ける)」にも関係しています。

最初の方で、「脚の起点」にもなっていると書きましたが、「パフォーマンスが高い人」に共通していることの一つとして、「大腰筋が上手に使えている」というのがあります。

ロルフィングの創始者の「アイダ・ロルフ」さんに、彼女からロルフィングを学んでいる生徒の一人が、「アイダさん、もしも『ロルフィングをする必要のない人』がいるとしたら、誰ですか?」という質問をしたことがあるそうです。

その時に、アイダさんが答えたのが、「フレッド・アステア(リンク先で動画が観れます)」という人で、タップのダンサーでもあり、歌手でもあり、俳優もしていて、その世界では「伝説の人」として語り継がれていて、最近、映画化もされたことでも有名な人です。(あの「マイケル・ジャクソン」にも影響を与えたとも言われています。)

なぜ、フレッド・アステアさんを選んだのかという「理由」が、先ほどの「
(脚の起点である)大腰筋を長く、上手に使えているから」というエピソードもあるほどで、「セッション5」がとても重要なセッションであることを示しています。

実際に、フレッド・アステアさんのダンスの動画を観てみると、「脚がスラッと長く、スタイルがよく見えて、重力を感じないほどに軽やかに踊っている」のが印象的で、まるで、最初に載せた「大腰筋の図」がダンスしているようにも見えてきます。

そして何よりも、「動くのが気持ちよさそう」です。

「動くことが気持ちよく感じる」というのは、僕の「ロルフィングのゴール」でもあります。

(2)「テンセグリティ」というのは、アメリカの「バックミンスター・フラー」という、建築家でもあり、デザイナー、発明家、思想家、詩人など、「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」とも称される人がいるのですが、その人が提唱した「コンセプト」です。

「建物(構造物)」を考える際に、「いかに少なく軽い材料で、最大限の強度を得るか」という課題に対して、バックミンスター・フラーさんが唱えたのが、この「テンセグリティ」というもので、実際に「The North Faceのテント」などに実装されていたりします。

僕たちの「身体の構造」にも、この「テンセグリティ」が見られるのではないかという考えがあって、「バイオテンセグリティ」と呼ばれています。

ロルフィングのセッションを受けていると、「首がすーっと伸びました」であったり、「身体全体が膨らんで、広がっていった」というような独特な感覚があるのですが、それは個人的に、「人体のテンセグリティ構造の働き」が影響しているのではないかと考えています。

こちらの動画で、テンセグリティのモデルが、「圧縮力に対して、全体が拡張しようとする働き」を観ることができますが、ロルファーが手で加える「圧縮力」に対して、受け手の身体の構造全体が「拡張」しようした時に、先ほどのような感覚が出てくるのかもしれません。

また、「部分というものはなく、すべてが全体に影響を与えてしまう」という働きもあるのですが、「足を触れているのに、首が伸びてくる」ことであったり、「右の腰を触れていると、呼吸が深くなってくる」というような、セッション中によく起こる反応を生み出す「背景」になっているのではないかと感じています。

(3)陸上競技選手や、プロダンサーの人などは、「心臓から脚が生えているように」という「キューイング(動作の指示、誘導)」があるそうです。

1で紹介した「フレッド・アステア」さんを観察すると、「心臓から2本の脚がぶら下がっていて、操り人形のように軽やかに踊っている」ように、僕には見えるのですが、「左右2本の腕」も、「上に伸びる首、頭」に関しても、「心臓が起点になっている」ように見えてきませんか?

つまり、「心臓から、左右の脚、左右の腕、首の5本の線が伸びているイメージ」です。

そしてそれらは、「つながり合っている」ので、右脚が地面からもらった力が、心臓を経由して、上の首の伸び、右腕の軽やかさにつながっていたり、両腕を上手に使って身体全体を上に引き上げて、両脚のさばきのキレを生み出したりと、「5本の線の張力のバランス」によって、「動きの緩急、自由さ、しなやかさ、伸びやかさ」を作り出しているのです。

そういうイメージで、スポーツ選手などの「パフォーマンスの高い人」の姿勢、動きなどを眺めてみると、いつもとは違ったものが見えてくるかもしれません。

(4)僕は「ロルフィング」をする前には、「トレーニング指導者」をしていました。

オリンピックに出場したアスリートや、プロスポーツ選手にも指導していましたし、スポーツ整形外科に勤務していたので、幅広い年齢の方にも「動きから身体にアプローチする」のが得意でした。

詳しくは、「festaのYouTubeチャンネル」で、僕がどうやって「身体に関わる仕事」を目指すようになり、「トレーニング指導者」を経験して、そこから「ロルフィング」の道に入っていったのかを説明していますので、時間があればそちらもご覧になってみてください。

実は今でも、「ムーブメントトレーニング(動きの改善)」が「母国語」のような感覚で、「身体に触れるアプローチ(ハンズオンでの施術)」は「第二言語」のように感じたりしています。

(5)今までの感想を読んでこられた方には、もうすっかり「おなじみの現象」かもしれませんね。笑

これは、「SourcePoint Therapy」というエネルギー療法をしていてい、彼女の「おためしセッション(解説2、5、6)」や、「セッション1(解説7)」、「セッション3(解説1)」でも、度々、解説してきました。

どうぞそちらの方を、じっくりとご覧になってみてください。

(6)ロルフィングでは、「Adaptability(適応性)を作る」と表現したりします。あるいは、「(構造に)遊びを作る」という感じのイメージでもいいかもしれません。

2の「テンセグリティ」でも書きましたが、僕たちの「身体」というのは、「全体がつながり合って、互いに影響を与え合っている構造」をしています。

身体の「中心(体幹、コア)」に、「捻れ、歪み、偏り、滞り」などがあると、それが施術によって「解放(リリース)」された時には、「末端(頭頚部、四肢)」に「抜けて」いきます。

「胸の辺りで詰まっていたのが、首の方に抜けていきました」というような感想をもらうことがありますが、その時には、「頭頚部の構造に、Adaptability(遊び)があった」ので、そちらに「抜けて」いくことができたということになります。

もしも、「頭蓋骨のアライメントが歪んでいる」であったり、「首周りの筋肉がガチガチに固まっている」ような状態だと、「出口を塞がされた」感じになってしまって、思うように「胸の詰まり」が「抜けない」状態になってしまうことがあるのです。

これは、仮に「筋膜リリース」などのテクニックを行う時でも、「リリースされたものが向かう先(中心→末端の道筋)」に、「Adaptability」がない場合だと、「なかなかリリースが起きない」ということがあったりします。

「前腕」に対しての「筋膜リリース」する時に、「手首が腱鞘炎で、可動域に制限がある」状態だと、うまく「抜けて」くれないというような感じです。

これを踏まえて、「10シリーズの順番」を考えてみると、「身体の構造の中に存在している制限(捻れ、歪み、偏り、滞り)が、段階的に、無理なく、効率よく『抜けて』いくような段取り」がされていることに気づきます。

ただ「制限」があるから、そこを「リリース」するのではなく、「それが抜けていく先」のことまでを考える必要があるのです。

今回の「大腰筋」にアプローチすると、「脚が伸びて、股関節にスペースができた」というように、「中心から下方の末端(脚)」に「抜けて」いくこともありますが、それは「セッション2〜4」で、「すでに遊びを作っておいた」ので、特に何もしなくても「自然に起こってくる反応」です。

でも、感想にある「胸郭、頭頚部(中心から上方の末端)」には、「まだ遊びがない」ので、「大腰筋」に触れる前に、少しだけ施術をしたという感じになります。

(7)「大腰筋」は、いわゆる「インナーマッスル(深層筋)」になるので、身体の「奥の方」にあります。

1で書いたように「腰椎」の横に付着しているので、「後ろ側(背中側)」から触れたらよさそうにも思いますが、そこには分厚い「脊柱起立筋群(背筋)」であったり、「腰背腱膜」があるので、それらが邪魔になってしまいます。

ということで、ロルフィングのトレーニングでは、「前側(お腹側)」から入っていくように教えてもらいました。

けど、「お腹側」には、「内臓(主に小腸、大腸)」があるので、それを「避けて」いかなければ、大腰筋には「到達(アクセス)」できません。

そんな時にイメージするのが、「海の中の海藻」です。

「海(腹腔空間)」に、「海藻(小腸、大腸など)」が「漂って」います。

「ゆっくりとすーっと進む(指が沈み込むように、ゆっくりと圧を加える)」ようにすると、海藻が「ひらっと避けて」くれるので、「絡まる(腸などを傷つける)」ことは少なくなります。

しかし、「一気にぐいっと進む(圧を一気に加える)」ようにしたり、「ジタバタする(お腹の中で指をあちこちに動かす)」と、「絡まり」が起こってしまいやすくなります。

そんなイメージで、「大腰筋」に「沈んで」いくようにします。

この「沈む」という感覚はとても大事で、ロルフィングのトレーニングの最初の方で、何度も何度も練習します。

身体は「幾層にも重なった、複雑な膜構造」をしているので、「どのレイヤーに働きかけるのか」という「意図」が大切になります。

もしも「狙っている組織」が、今回の「大腰筋」のように「深層」に位置していると、その分だけ「沈む」のに時間がかかります。

つまり、「深層=力が必要」ということではなく、「力」はあまり必要なく、ゆっくりと「沈む」のというのがポイントなのです。

(8)1に書きましたが、「大腰筋」の働きの一つとして「呼吸の補助」があります。

呼吸の際には、「横隔膜」というドーム型の筋肉が上下に動くことで、空気が口から体内に入ったり、出ていったりするのですが、横隔膜には「脚」と呼ばれる、背骨に張り付いている縦に長い部分があって、その左右それぞれの脚が、大腰筋と「手を取り合うように、つながって」います。

「大腰筋と横隔膜は、膜を介して接続している」ということですね。

そのために、息を「吸う」際には、横隔膜が「収縮」して「下に下がる」のですが、その時に大腰筋も適切に「収縮」することで、その動きを「サポート」しています。

もしも、大腰筋の動きに「制限」があると、横隔膜の動きにも影響が出てくるので、「浅い呼吸」になりやすくなってしまいます。

その逆もしかりで、今回のように「大腰筋の筋膜リリース」を行うと、「息が吸いやすくなって、たくさん空気が入る」などの「呼吸の変化」も起こってくるのです。

(9)これも「大腰筋」に関係しているかと思いますが、大腰筋が「過度に収縮した(硬くなった)状態」が継続すると、「腰椎の前彎(前方へのカーブ)」がきつくなります。いわゆる「反り腰」の状態です。

その大腰筋がリリースされて緩むと、前彎の度合いが正常になって、「背骨が上下に伸びた」ような感覚になったりします。「腰の詰まりがなくなった」というのも、多分そのためかなと想像します。

さらに、大腰筋と関係が深い筋肉に「頚長筋(または頭長筋)」という、背骨の前に付着している「首」の筋肉がありますが、大腰筋が緩むと、その影響でそれらの筋肉も解放されて、「首が伸びた」感じであったり、「頭の位置(目線)が高くなった」感覚が得られたりします。

(10)身体の「中心(体幹、コア)」に近い「大腰筋」が適切に働いてくると、「末端」の「無駄な力み」はぐっと少なくなります。(先に何度も登場した、「フレッド・アステア」さんの動きが、まさにそれを表しています。)

身体が「統合」されてくると、「力み」はどんどん少なくなってきて、「パフォーマンス」は高くなってきます。

この調子で、どんどん身体が「出来上がって」いくといいなと思います。


お問い合わせ先

Rolfing House festa|ロルフィングハウスフェスタ
https://www.rolfing-festa.com/

電話:090−2954−8207(大友)
メール:info@rolfing-festa.com

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