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「逆上がり」のある人生。(2022年6月コラム)

最近、息子が自転車でどこかに出かけようと誘ってくる。毎日、学校が終わって帰ってくると、今日はどこに行くのか聞いてくる。

行ったことのない道を、二人で自転車で進んでいく。行き止まったり、きれいな景色に出会ったり、見たことのない公園を見つけたり。

その公園には、鉄棒があった。大中小の3つの鉄棒。

僕は、「逆上がり」ができない。

体育学部出身で、保健体育の教員免許も持っているけど、「逆上がり」ができない。

運動神経は悪くはない。ある程度のことなら何でもできるし、そもそもトレーニング指導を仕事にしていたから、様々なエクササイズのお手本を見せれないといけない。

けど、「逆上がり」ができない。

食わず嫌いみたいなもので、鉄棒はどうも好きになれず、近くに鉄棒もなかったし、仲のいい友だちも、そんなに鉄棒で遊ぶ子はいなかったと思う。

そうして、僕の人生からは、「逆上がり」がすっぽりと抜けてしまった。

息子が、「逆上がり」をしようとしている。

僕もできないし、できなくて困ったこともないし、なんとなく教えてあげるけど、できてもできなくてもどっちでもいい。「逆上がり」くらいできなくても、どうってことないのだから。

でも、あれ?今日はなんだかできそうな気配がする。

「ちょっと待って、できそうだから動画撮ってみるね」

「え、え、できたじゃん!!」

息子の人生には、「逆上がり」がある。

当たり前だけど、そうやって、僕とは違う人生を彼は歩んでいくのだなと、不思議な気持ちになった。

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