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敷地という因縁


今日は建築設計の話。
2023年1月に約3年半続いたプロジェクトが引き渡しを迎える。
年月を考えると相当大きなプロジェクトのように思うが500平米未満の小さなオフィスである。

コロナもあって規模縮小など紆余曲折あった訳である。

僕にとってはいくつかの意味で特別に思入れ深いプロジェクトである。
プロポで勝ったプロジェクトであり初めての都内プロジェクトでありマネージメントをちゃんとした初めてのプロジェクト。
初めて尽であるが一番が敷地との因縁である。

話は約9年前に遡る。
2014年の春。僕は東京に居た。
トウキョウ建築コレクションという全国の修士学生のための展覧会に入選してヒルサイドテラスで展示出来る機会を得たからだ。

大学の後輩に車を出して貰い夜通し名古屋から東京に模型を運ぶ。

途中、原宿の辺りで道に迷い込んで路地に入ってしまった。その時、たどり着いた場所から
大変美しく代々木競技場が見えたのだった。
東京の都心にこんな見晴の良い空地が残ってるなんて奇跡かと思った。
しばらく代々木競技場を見て丹下健三の設計力と建物の歴史にドキドキしたのを良く覚えている。

トウキョウ建築コレクションの結果は散々であったがそれがきっかけのひとつになって今勤めている設計事務所で働くことになった。

2019年の春。
事務所にプロポーザルの案内があった。規模的にはスルーするはずであったがプログラムが面白いので参加することになり敷地見学へ。Googleで表示された住所に行くとなんとも言えない3方に閉じられた難しい敷地だと思った。
しばらくして主催から案内がありGoogleの表示される場所と実際の敷地が違うとなった。
もう検討をスタートしていたが気を取り直して再度敷地を見に行くと驚いた。
美しいあの景色が残るあの場所であった。
チームは大盛り上がりして、確か提出まで2週間ほどの厳しいスケジュールであったが無事勝利を納めた。

2021年の冬。
何度かの設計変更を行いながらもコンセプトである木の組積と風景をつなぐトンネル状のシェイプは残ったまま実施設計、予算調整を終えて着工した。

ウッドショック、資材高騰など着工してからも問題は山積みであったが偉大な施工者と何より施主の理解によりなんとか竣工にたどり着いた。

2023年1月。
長い長い旅のようだった。気づいたらとっても遠くに来てしまっていた。
9年前の春にあの景色を見なかったら僕は今きっとここには経ってなくて。
あの日見た感動的な景色が僕をここまで連れて来てくれたんだと思うと感慨深くなってしまう。

きっとただの偶然だし自分の人生にそんなドラマチックなことはないことはわかってるんだけどもう少し勘違いしても良いんじゃないかなって思ったんだ。

建築が出来てもあの風景が変わらないように設計しました。


竣工間近の建物

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