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映画備忘録:『殺人の追憶』がすごい

※ネタバレ含みます。

映画備忘録。今回見た作品は ポンジュノ監督の「殺人の追憶」。

ストーリーは、実際にあった殺人事件「華城連続殺人事件」を題材にしている。この事件は、1980年代にソウル近郊で起き、10人もの女性が強姦され殺害された。この映画が上映された年は2003年。この時まだ犯人は見つかっていなかった。その後、2019年に別の強姦殺人で服役していた男が華城連続殺人事件の犯人だということが判明した。しかし、この事件の時効は既に成立してた。

ソンガンホ演じるパク刑事とキム・サンギョン演じるソ刑事がタグを組んで事件可決に奮闘をする。次々と女性が夜中に強姦され遺体として見つかり、一向に犯人の目処が立たない状況が続く。そんな中、有力候補として上がった男がいた。パク・ヒョンギュという男である。パク刑事たちは、直ちにパク・ヒョンギュの身柄を拘束し尋問をするも口を割らず、一向に証拠があげられななかった。

そんな中、新たな犠牲者が出る。その遺体にその精液が付着しており、その精液でパク・ヒョンギュが犯人かどうかがようやく分かるチャンスを得た。ここでソンガンホ監督の作品っぽいなと思うのが、このDNA検査をアメリカに依頼するところだ。作品中では、当時の韓国ではDNA検査をする整備が整っておらず、アメリカに外部依頼を出さなければいけない設定になてっている。このアメリカに依存している韓国の姿は、グエムル-漢江の怪物でも見られる。

この検査の結果が出れば、全て終わると思っていたパク刑事。

ようやく検査結果が。

結果は、陰性。パク・ヒョンギュが犯人という証拠をあげれないまま映画はエンディングに。

そして最後のシーンがとても印象的なものになっている。場面は、その事件から数年後。パク刑事は、刑事をやめセールスマンになっていた。パク元刑事が、セールス中に自分が昔担当してた連続強姦殺人事件の最初の遺体が発見された場所を通る。パク元刑事は、遺体が発見された田んぼの溝を中を覗き込む。そこには何もない。すると通りかかった少女が声を掛ける。

少女「そこに何かあるの?」

パク元刑事「ただ見ているだけだよ」

少女「そう。少し前にも同じようにしている男の人がいて、その人にも同じような質問をしたよ」

パク元刑事「その男はなんて?」

少女「昔ここでやったことを思い出しに見にきたんだよって」

パク刑事「どんな人だった?」

少女「普通の顔の人」

最後にパク刑事がカメラの方を睨みつけるように真っ直ぐ見つめて映画が終わる。

この最後のシーンは、これが上映された年にまだ華城連続殺人事件が未解決事件だったのを考えるととても印象的に映る。まるで、パク元刑事が、画面越しにいる”犯人”を見つめているかのように感じる。

もしかしたら、当時本当の犯人は、この映画を見ていたのかもいれない。殺人鬼は、自分の犯した殺人の現場に戻り、反芻して興奮をするというのは聞いたことがある。もしかしたら、犯人はこの映画を見て笑っていたのかもしれない。そう考えると、この映画がとても印象的にかつ恐ろしい作品だなというのがよくわかる。

これを当時映画化しようとしたソンガンホ監督に感服する。ソンガンホ監督の作品はこれ以外にもたくさん見ているので、備忘録として残していきたいと思う。

では、次回。



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