採用は投資、育成は運用
人的資本経営という言葉は2023年の人材業界バズワードだったそうで。
つまり、人材(人財)を人件費の発生するコストではなく、価値を生み出す資本・資産であると考えようよ、という言われてみれば当たり前の話。
それならば、金融資産運用と重ね合わせて理解すればわかりやすい。つまり、人材という資産を獲得するのが採用であり、獲得した資産を運用するのが育成ということになる。
採用は投資
採用業務を人材を調達する投資と考えるなら、ベストな採用戦略とは何か?
まず考えるべきは、いつ採用するか?
投資の世界では、景気が良い時でも景気が悪い時でも、決まったタイミングで一定数を購入し続ける「ドルコスト平均法」が最もリスクの少ない戦略といわれている。
採用市況は景気と連動するため、良い時期も悪い時期もつねに一定の人数を採用することで採用にかかるコストを平準化し、リスクを分散させることができる。つまり、通年採用こそがもっともリスクの少ない採用戦略となる。
次に考えるのは誰を採用するか?
誰を採用するか?とは、どの銘柄を購入するか?という銘柄選定である。
人気の銘柄はすでに値段が高騰しているため、ある程度の投資資金がないと獲得するのは難しい。もちろん、今はまだ低価格だけど、購入後に成長して大きな値上がり・配当をもたらすテンバガーを見つけたいのはみんな同じ。
そのために、様々な基準や指標で銘柄の成長性を確認しようとする。だけど、投資に絶対はない。また投資後の運用も非常に重要となる。だから、投資家である人事や経営者は、ポートフォリオを組むことで全社でバランス良く成長できることを考える。
そこで考えられるのは、銘柄としての分散投資。その中で最もリスクが少ないのが「インデックス投資」。市場の平均に連動するような銘柄構成のポートフォリオを持つ戦略である。
これを採用に置き換えると、特定のターゲットだけに絞らず、ダイバーシティやインクルージョンを考慮し、あらゆる人を幅広く選考する「インデックス採用」により多様性のある人材ポートフォリオをつくることが、長期的にもっとも安定した価値の向上に貢献することになる。
そしてもう1つ。どこから採用するか?
資本を購入するには、銀行や証券などさまざまな金融会社がある。同じように採用するためには、紹介会社や求人メディアなどの人材会社の仲介を通して調達することが多い。ただ最近では、自社で直接採用活動を行うダイレクトリクルーティングに力を入れる会社も増えている。
手数料や成功率も異なるため、どのチャネルを通すかは色々な考え方がある。しかし、大切なのは費用だけではなく自社に合う調達方法を選ぶこと。
最近では、もっとも多くの人的資本にアプローチできるIndeed PLUSを活用する企業が増えている。AIにより運用が最適化され、安定した収益をもたらすことができる、いわば採用の投資信託だ。
ここまでが投資である人的資本の獲得=採用。投資後は、利益を最大化するための運用が必要不可欠。次に、運用である育成について考えてみる。
育成は運用
運用について考えるには、まずポートフォリオを確認することから始める。
各ポジションのスキルマップを高めるだけではなく、複数の観点から確認する。プロフィットとバックオフィスの直間比率は適正か。若手ーベテランのバランスはとれているか。マネジメント層のパフォーマンスは。女性管理職の比率は。このような組織のポートフォリオは社外への開示を求められる。
最近流行りの人的資本の開示だ。運用してもらう側の求職者はもちろん、出資している株主にとっても、会社の成長を見る上で重要な情報となる。
人材の運用方針はどう考えればよいか?
投資の世界では長期保有することを前提とした「バイアンドホールド」という戦略がある。人材投資である採用が正しかったか判断するには、ある程度の時間が必要だ。積立によるキャリアパスを用意し、長期的に複利による運用をするのが良さそうだ。
もちろん、ポートフォリオの見直しも必要となる。
ビジネスの成長・外部環境に応じた「人的資本のリバランス」で最適な人財ポートフォリオを維持する。たとえば、景気上昇期には株式のようにボラティリティの高いプロフィット部門の割合を増やす。その際に、変動費となるアウトソースの活用を検討することも効果的だ。
逆に景気下降時には、安易なロスカットによるリストラは極力避けたい。信用を失ってしまうと、将来の投資コスト・運用コストの高騰を招く恐れがある。ジョブチェンジによるアロケーションで、ポートフォリオからの安定したリターンが見込める運用を目指したい。
ミレニアル世代やZ世代がメインなりつつある最近の求職者は、労働力としての自分の人生を、明確なポリシーを持たない者に任せようとは思わない。
どんな人材がいるのか?入社後にどのようなキャリアを積めるのか?先輩たちはどこに転職しているのか?自分という人財をどう運用して価値を高めてくれるのか?運用方針としての目論見書、つまり出口戦略であるキャリアパスをハッキリ明示する必要がある。
だからこそ、企業にとっては組織の透明性や転職クチコミ、採用広報などの発信が非常に重要な施策となっている。採用サイトを充実させるのはもちろん、noteやSNS、動画で広報する会社も増えている。
バイアンドホールドだけでは、今の時代には不十分かもしれない。
投資は自己責任
採用は投資。育成は運用。だから、採用も育成も会社の自己責任。
投資の原理原則は変わらない。
求人広告代理店やエージェントなどの人材会社はサポートはできるけど、採用成功を保証することも責任を取ることもできない。ましてや、企業や経営者自身が採用にも育成にも興味がなく、丸投げでお任せしてしまったら、人材会社はサポートすることすらおぼつかなくなる。
その事を、企業も人材会社も理解して、お互いできることに本気で取り組むから良い人材が採用できるし、育成も上手くいく。
何の準備もせず「即戦力を採用したい」というのは、すぐ儲かる銘柄を教えて欲しいと言ってるようなもの。そんな甘い話は滅多にない。少なくとも我々のようなベンチャー企業には滅多に入って来ない、ということを前提にした人的資本の投資戦略を考えるべき。
それじゃあ、資本力のある大手には勝てないのか…
と落ち込むことはない。リスクとリターンだけではなく、ESG投資のように自分の価値観に合う企業や社会貢献性を軸に会社を選ぶ人も増えている。だから、ベンチャー中小企業こそ自社らしさを磨き、積極的に発信をしていくことが必要。
2024年は新NISAも始まったし。金融資本だけではなく、人的資本にも積極的に投資しよう。
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