農場を持つ一つ星レストラン、BLUE HILLへ行ってきました。
「農場の隣にあるレストラン」
魚を捌いて、切って、お皿にのせるだけの料理が華の一皿となる、食材を活かすことが料理人の仕事と言わんばかりの考えがある日本料理で働く僕にとって、まさに理想のキャッチフレーズを持つレストランBLUE HILL。
「農場の隣にあるレストラン」
というフレーズだけ先に聞くことになったので、一体どんなところかと少し調べてみると、シェフのDan Barber氏はアメリカの現在の食生活の現状と彼が考える道徳的かつ美味しい食生活の定義を綴るような本を書き、2009年のタイムマガジンの「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたような人との事。
「もうこれは行くしかない」
と思い、即電話。
残念ながら農場のすぐ横にある方の店舗には行けなかったのですが、ニューヨークのマンハッタンにある方の一つ星の持つ店舗の方に予約を取ることができたので、行ってきました。今回はその食レポです。
West 4 Streetから徒歩三分。小道の脇にひっそりとBLUE HILLはありました。
少し階段を降り、中に入るとおそらく責任者のような方が最高の笑顔で出迎えてくれました。さすがは星付きレストランです。
席に案内され、周りを改めて見渡すと薄暗い店内に大きめのBGMとキビキビと動くスタッフ達の姿が。。。
自然な野菜をコンセプトとしているとはいえ、やはりそこはやはり一つ星のレストラン。穏やかながらもピリッとした空気はありました。最高です。
少し待つと、ドリンクのメニューが手渡されます。
上の方の暑いメニューの方がワインリスト。
さすがに一人でワインを一本開けたら最後の方の記憶が曖昧になってしまうと思い、いつも通り日本酒を注文。
日本酒を待っていると、飲み物のよりも先に一品目が到着。
畑で採れたキュウリに酒粕を使ったソースが敷いてあるという一品。
Blooklyn Kuraというブルックリンにある酒蔵から仕入れているという酒粕を使ったレモンとライムのソースがしいてある、キュウリのパリパリ感と瑞々しさを楽しむ一皿。
そうです、このBlookryn Kuraというのはまさしく今僕が注文した酒蔵さんのお酒。レモンの効いた酒粕のソースが日本酒と何とも合う…
苦味と酸味が抑えられ、日本酒の甘みが増すような組み合わせでした。
酒蔵で作った酒粕をソースして、その酒蔵のお酒を味わえるなんてなんとも贅沢な...既にきて良かったと思いました。
キュウリを味わっていると、続々と石?に乗った食材達が運ばれてきます。
甘いハバネロ
ザ・新鮮な野菜。香りと食感が心地とも良い一品。
トマトウォーター
全く甘くなく、むしろ塩っぱくて、ピリピリとした辛味もあり、酸味が強い。
旨味も強く、アジアっぽい香辛料。の香る食欲の増すような一品でした。
レバーチョコ
動物の香りが口の中に広がる濃厚な一品。動物の香りなのになぜか嫌な感じがしない、上品な動物の香り(語彙力が酷い)。
重めな中身の引き算をするように、周りに添えられたカカオの香りとサクサク感が全体のバランスをとっています。
ツナタルタル
レモンの酸味が良い。さっぱりとした一品。
一見生なのですが、少し火入れしてあるマグロが入っていて、パリパリの生地とのつなぎ役になってくれています。芸が細かいです。
と、今ザーッと説明したのが前菜です。
こんなように並べられました。(すいません、キュウリは食べ始めてました)
まさに自然をモチーフとしたレストランと言った感じの前菜。
手で食材の温度などを感じながら食べるというのもミソですね。食材を「味わう」だけでなく「感じながら」食事がスタートしました。
二品目はこちら「トマトと自家製チーズ」
トマトは三段活用されていて
一番下に濃厚さと酸味が売りのドライトマト
真ん中にトマトの香りと旨味たっぷりの生地があり
一番上にフレッシュなトマトの薄切りにディルが添えられていました。
中にはみじん切りにしてマリネされた玉ねぎ、周りにはいちごのソースがあり、そして何よりこれでもかってぐらいふわふわな自家製チーズ。口に入れた瞬間は濃厚なのにも関わらず、すぐに溶けていくこのチーズ。
これらがトマトをさらに引き立ててくれるような一品。至福。
今更ですが、トマトって美味しいですよね。
さすがは野菜を売りにしているレストランだなぁ、なんて考えていた時に来た三品目はこちらで、鶏と舞茸のフライ、フレンチソースとキュウリのピクルス添え。
フレンチソースはドレッシングのような味わい。軽めで、酸味は強い。
舞茸は塩をした後ソテーし、旨味を凝縮させてからフライにしたような味わいで、鶏もかなり塩が効いていて、ハンバーガーを連想させるような味付けとなっていました。
全体的に見ても、なかなかしっかりとした味付けが印象的だった三品目でした。
四品目はこちらでツナのソテーとニューコーンとオールドコーンの食べ比べ、オイスターソースがけ
より香りがあってシャキシャキしているオールドコーンとタネに酸味があるニューコーン。そのまま食べても美味しいのですが、深み、旨味、香ばしさ、に少しの酸味のあるオイスターソースと二種類のコーンを混ぜると、より複雑な味わいに。。。
ラムネのよう香りと酸味の強目のパウダーと絶妙火入れの燻製のマグロ(写真だとわかりづらいですが40度ぐらいまでは上がってそう)がこのソースともよく合います。
逆も然りで、マグロの燻製の余韻がある中でコーンを食べるとより美味しく感じる。ホタテのアクセントもまた良い感じでした。
五品目は鴨とパプリカのソテー、青唐辛子のソース添え。
脂質は低めだが、ナッツの効いた重めのソースと軽く仕上げた青唐辛子のソースで鴨肉を食べる一皿。個人的にはかなり塩分が強目で(そもそも相当な薄口好き)かなりガツンとくる一皿でした。
アメリカ人は塩分が強いのが好きというのがよくわかる一皿だったと思います。
ここでパンが出てきます。
とても柔らかく、上品な味わいのバターにナッツ散らしてあったのですが、これがめっちゃ美味しかったです。
酸味の強いパンとの相性が抜群で、甘さはバターの香りが補ってくれていました。
バリバリするぐらいの皮の食感も良く、フレンチを食べにきた時の密かな楽しみであるパンを存分に楽しめました。
楽しみつつ、次に出てきたのは牛タンのソテーに叩きズッキーニ(絶対他にもっとカッコ良い呼び方ある)が添えてあり、上からマッシュルームのソースがかかった一品。
牛タンのコリコリ感が非常によく、ズッキーニ、ライム、玉ねぎ、塩で作ったであろうソースとマッシュルームのソースと一緒に食べると口の中に様々な香りが交わり、美味でした。
ただ、やっぱり、塩っぱめでした…私にとって。味覚って難しいですね。
そして、食事の最後はこちら、畑野菜の盛り合わせ。
存分にナスの味を味わえるめっちゃナスなナス。かみごたえがあり、とても美味い。
軽く塩をしたソテーしたスイカ。
クミン、レモン、胡椒、ベーコンあたりで味付けされたポテトサラダ。
サラサラの大豆に酸味の効いた緑のソースにアクセントでスモーク感も聞いている緑のサラダ。
隠元、玉ねぎ、キュウリのアメリカ感がすごいピクルス。
それにバーベキューソースが添えられていた一皿。
言い忘れていましたが、料理自体はフレンチの要素を取り入れたアメリカ料理というカテゴリーに入るお店らしいです。
というか、アメリカの星付きのお店は和食とフレンチだったり、コリアンとフレンチだったりと、フレンチ関係のフュージョンが多いです。フレンチの技術って素晴らしいですね。
ここからデザートです。一品目はメロンとミルクのシャーベット。
今まで「ソテー+ソース」という重めな食事が続いていたということもあり、この空気を含ませたメロンと超絶軽いミルクのシャーベットはとんでもなく美味しかったです。一瞬で無くなったと言うべきか、消えたと言うべき迷うところでした。
もう一度いいます。めっちゃ美味かったです。やっぱりデザートが美味しいって最高ですね。
最後に枇杷と二種類の桃が出てきて
コース終了。
当然のごとくサービスも良く、ボリュームもあり、念願叶って来れた店だったということで、とても満足いく食事でした。
最後、余談ですがこのアメリカの一つ星レストランを通じて美味しさって本当に色々だな、って思いました。
僕は肉料理全般を比較的「塩っぱい」と感じましたが、全ての料理が大体同じ「塩っぱさ」だったので、おそらくあれは狙い通りの味付けだったと思います。
これでもし、牛タンはちょうど良かったけど、鴨は塩っぱかったとなればそれは「ミス」の可能性もありましたが、そうではなかったです。間違いなくそこの塩分濃度が好きな人を狙って作られた味でした。
一方で、自家農園で育てられた食材を丸かじりするタイプの料理は僕が食べても「美味しかったです」。
きっと、味わいというよりは手に持った感触だったり、口の中の感覚だったり、噛んだ時の音だったり、情報による美味しさだったり、そういったものが合間って感じられた「美味しさ」でした。
味わいでの美味しさもそうですが、それ以外の部分で作る美味しさもレストランにおいては間違いなく大切です。
暗めの照明や大きめの音楽など、心理学的に美味しいを作れる要素がこのお店にはふんだんに盛り込まれていました。
だから、多少塩分濃度という点で好みに合わなかったお客さんがいても、総合的に見れば十分に満足して帰れるだけの総合点を作れるのだと思います。
すごく勉強になったお店でした。
ニューヨークに行く機会は今後なかなかないとは思いますが、是非とも農場横のレストランにも行ってみたいものです。
そんな感じで、今日の話は終わります。
では^^
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