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【AISTS #18】 ユースオリンピックの意義 ― 競技と文化交流

今週いっぱい、ローザンヌで開催されている冬季ユースオリンピック(YOG: Youth Olympic Games)のボランティアのため、講義はありませんでした。明日から再開します。
AISTSでは毎年ボランティアのプログラムがあるのですが、今年はちょうどYOGがあったので、プログラムの一環としてボランティアに(必須で)参加する、という位置づけでした。

僕も今回関わるまではあまりよく知りませんでしたが、ユースオリンピックはなかなか意義のある大会だなーと思ったので、まとめておきます。
日本では報道が少ないようですが、日本の若手アスリートの活躍に加えて、文化交流を目的とした様々な取り組みも興味深いです。

ユースオリンピックとは

JOC(日本オリンピック委員会)のサイトに詳しく記載されています。

ユースオリンピック競技大会は、国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長が2007年に提案した、15歳から18歳までのアスリートを対象とした国際総合競技大会です。オリンピックと同じく夏季・冬季に分かれ、それぞれ4年ごとに開催。2010年に第1回夏季大会がシンガポールで開催され、205の国と地域から約3600人の選手が参加、26競技201種目が実施されました。

いまローザンヌで開催されている「第3回ユースオリンピック冬季競技大会」には、80カ国/地域から1,880人のアスリートが参加し、16競技81種目が実施されています。
ちなみに2018年の平昌オリンピックでは、92国/地域から2,925人、15競技102種目でした。

今大会には5つのコミットメントがあり、大会期間中の取り組みだけでなく、持続的にレガシーとして残していくことが重視されています。

1. Youth – Valorization & Talent development: ‘’For young people, by them and with them’’
2. Sport – Intelligent development of sport and infrastructures
3. Olympism – Contribution to promote the Olympic values of tomorrow
4. Innovation – Development of ideas for a sustainable world
5. Partnership – Building new long term synergies

オリンピックの過度な商業化や肥大化に対する批判があるなかで、ユースオリンピックでは、
・民間スポンサー無し(IOCと自治体が費用を分担)
・チケット販売無し(開会式のみ有料、屋内競技は要予約)
・放映権販売無し(Olympic Channel で無料配信)
という運営です。グッズ販売は少ししています。

競技会場新設も原則禁止とされており、今大会のために新設された大きな施設は、選手村 Vortex だけで、これは今後の留学生の住居として活用されます。
ローザンヌでは、留学生に対してリーズナブルな住居の数が不足しており、移住当初に苦労することが多く、その改善が期待されています。

IOCとしても、オリンピックがこのままでいいとは考えておらず、ユースオリンピックを通して将来のあるべき姿を探っているといえます。
20年後、30年後の世界を考えるには、多くのヒントがある大会だと思います。


実施競技

ユースオリンピックの実施競技の特徴を2つ挙げます。

1. 非オリンピック種目のトライアル
2. 国/地域の混合種目

1. 非オリンピック種目のトライアル

ユースオリンピックは、オリンピックで採用されていない種目をトライアル的に実施する役割も担っており、今大会はノルディック複合女子と山岳スキー(Ski Mountaineering)が実施されました。

夏季大会はもっと多く、2018年ブエノスアイレス大会では、フットサル、3人制バスケットボール(3x3)、ビーチハンドボール、スポーツクライミング、ブレイクダンスなどが実施されました。
スポーツクライミングは2020年東京大会、ブレイクダンスは2024年パリ大会からの採用が決まりましたね。

2. 国/地域の混合種目

基本的にはオリンピックと同様に、アスリートは国/地域の代表として出場するのですが、いくつかの団体種目で国/地域混合チームを作って競います。「Mixed NOC」と呼ばれます。

今大会では、3人制アイスホッケー、フィギュアスケート団体、スピードスケートチームスプリント、ショートトラックリレー、カーリングダブルス、山岳スキーリレーがこのフォーマットで実施されました。

この年代で、海外で同じスポーツに打ち込む仲間と出会えるのは非常に良い機会だと思います。
お互いに刺激を与えながら、将来、より大きな舞台で競う関係になれたら素敵ですよね。


ちなみに、日本選手の現時点(1月19日22時)の獲得メダル数は以下の通り、欧州諸国がひしめく中で5番手と健闘しています。
金メダルは以下の通りです。
・スピードスケート男子500m 山本悠乃(ゆうだい)
・スピードスケート男子500m 蟻戸一永(もとなが)
・スピードスケート男子マススタート 蟻戸一永
・フィギュアスケート男子 鍵山優真

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ドーピングの問題で国際大会からの排除処分を受ける(可能性がある)ロシアも、今大会はロシア選手団として出場して活躍しています。


文化・教育プログラム(CEP: Culture & Education Program)

競技に加えて重要視されているのが、大会を通した若者(アスリートに限らず)の文化交流や教育です。

ユースオリンピック競技大会の理想は、スポーツ・文化・教育が一体となったイベントを実現することにあります。文化・教育プログラムは、競技会と同等の重要な要素です。同プログラムでは様々な活動を行い、オリンピックの意義を実感し、友情や相互の尊重を表現できるようにすることを目的としています。

選手同士の交流はもちろん、オリンピアンとの交流も若手アスリートにとっては貴重な機会です。
今回は、フィギュアスケートの鍵山選手がパトリック・チャンさんからをアドバイスをもらったと話題になっていましたね。
アスリートとしてのキャリア形成やオリンピズムの浸透のためのプログラムも準備されています。

また、ローザンヌの大学に通う学生も、様々な形で大会に関わっています。
例えば、研究のためにアスリートの運動データを取得するなど、この年代のスポーツ選手が一堂に会する貴重な機会を使った取り組みが見られます。
ボランティアスタッフとして参加している学生も多いです。

更に、若者に限らず、地元の(特に年配の)方々にとって今大会の開催は嬉しい、誇らしいことのようで、ボランティアとして関わる方が多くいたのが印象的でした。
フランス語しか話せない方もいて、コミュニケーションに苦労はありましたが、普段接することのない方々との交流はよい経験となりました。


終わりに

明日から、久しぶりに講義が再開します。
これから3週間、スポーツにおけるテクノロジーをテーマとした講義とグループワークの予定です。


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