見出し画像

【AISTS #39】 34週目 全講義が終了しました (2020/6/15-21)

6月8日から教室での講義が再開したところではありますが、6月19日をもって全ての講義が終了しました。
6月中にMedicineの試験とチームプロジェクトのプレゼンがあり、その後は個人の卒業研究とインターンシップとなります。

Medicineの講義

4週間にわたって受けてきた医学の講義も今週で終わりです。
興味深かったトピックをいくつか。

Managing Injury and Illness in Sport - Concussions in Sport

脳震盪(Concussion)はスポーツ界における大きな課題の一つです。
以前は頭部を強打した後でもプレーに戻ることが称賛されるような文化もありましたが、徐々にその危険性が知られるようになってきました。

特に、短期間で2度の衝撃を受ける「セカンドインパクト」は死亡のリスクをはらみ、脳震盪の疑いのある選手をプレーに戻すことは、どのような理由があっても認めるべきではありません。

特に、ユース年代ではより慎重な対応が求められます。
ちょうど先週、UEFAがユース向けのヘディングに関するガイドラインを発表していました。
このガイドラインに沿って、各国が詳細なルールを決めて運用します。

Managing Health - Relative energy deficiency in sport (RED-S)

これは全然知らない概念でしたが、相対的エネルギー不足 Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S) という現象が、特に女性アスリートの健康問題として懸念されています。

無月経、骨粗鬆症とともに女性アスリートの三主徴(FAT)として認識されるようになり、2014年のIOCの声明でRED-Sという表現が広く使われるようになりました。

様々な症状が出る一方で、明確にRED-Sの度合いを測定する指標がないため診断が難しく、深刻化する前に対応することが重要です。
また、食事、トレーニング、心理状態、競技結果などが複合的に絡むため、要因を特定することも困難です。
現状は、症状を踏まえてリスクを赤/黄/青で診断するツールが作られています。

画像2

The Black Line: 黒人競泳選手についての映画

木曜日には、正規のプログラムではないのですが、クラスメートの一人が制作に関わった映画『The Black Line』の上映会がありました。
米国における黒人競泳選手に焦点を当て、その背景にある人種差別や経済格差などの社会問題にも触れる1時間ほどの映像作品でした。
(作品内での "Black" という呼び方に沿って、ここでは「黒人」という表記で統一します。)

本来であれば2016年のリオデジャネイロオリンピックに合わせて封切りされる予定でしたが、権利関係などの調整がつかずに見送りとなり、そのままお蔵入りになってしまっています。
Black Lives Matter の運動が広まり、1年後に東京オリンピックを控えるタイミングで、彼にとって思いの詰まった作品なのでやっぱり観てもらいたいということで、みんなで教室に集まって鑑賞しました。

陸上競技や球技では多くの黒人選手が活躍していますが、競泳では黒人選手の印象はあまりないと思います。
2000年シドニーオリンピックでの、赤道ギニア代表 エリック・ムサンバニ(Eric Moussambani)の懸命な泳ぎは覚えている方が多いかもしれません。

https://2020.yahoo.co.jp/olympicchannel/video/player/2513238

「筋肉の質が違って水泳には向いていない」という話も耳にしますが、これには明確な科学的根拠はありません。
水泳競技で活躍する黒人選手が少ないのは、社会的な影響が大きいのです。

ある黒人選手は、理由は「恐怖心」にあると言い、その背景には人種差別があります。
プールや海水浴場では黒人と同じ水に入ることをよく思わない白人から、嫌がらせや暴力を受けてきた過去があり、泳げる場所に行くことに恐怖を覚えていました。

そのような環境で育った親は当然泳ぐことができず、子どもに泳ぎ方を教えることはできません。
当時ほどの人種差別はなくなり水泳教室に通わそうと思っても、経済的な理由でそれがかなわない家庭も多くあります。
子どもが溺死する確率は、白人に比べて黒人が約6倍高いというデータもあります。
泳ぐこと自体への「恐怖心」にもつながってしまっています。

しかし、状況は少しずつ変わってきています。
カレン・ジョーンズ(Cullen Jones)は、2008年北京オリンピックの男子4x100mフリーリレーで優勝し、黒人初の世界記録保持者となりました。
その偉業自体が黒人を勇気づけるものでしたが、黒人の子ども向けの水泳教室を開催するなど、裾野を広げる活動も精力的に行っています。

2016年リオデジャネイロオリンピックではシモーン・マニュエル(Simone Manuel)が黒人女性初の金メダルを獲得するなど、世界を舞台に活躍する黒人競泳選手が増えてきました。

すでに黒人の活躍が広く認められているスポーツ以上の困難があるでしょうが、彼ら彼女らの発信はより強いメッセージ性を持つと思います。
スポーツが持つ力を改めて考えさせられる機会となりました。

講義終了の打ち上げ

全ての講義が終わったタイミングということで、金曜日はクラスメートの家でみんなで飲みました。

それぞれが自国の料理を振る舞う会を持ち回りでやっていたのですが、コロナの影響で止まってしまっていたので、やり残していた国から様々な料理やお酒が集まる会となりました。ラインナップはこちら。

Brazilian 🇧🇷  Pão de queijo
Lebanese 🇱🇧  Hommos, baba ghanouj, man'oushe zaatar, & labne
Australian 🇦🇺  Potato Salad & Pavlova
Indian 🇮🇳  Egg Biriyani & Raita (Yogurt with vegetables)
British 🏴  Scones with cream and jam & the cheesy pineapple hedgehog
China 🇨🇳  Kung Pao Chicken & Veggie Mapo Tofu
Syrian 🇸🇾  Fattoush salad
Ukrainian 🇺🇦  Vodka
Colombian 🇨🇴  Chilli con carne
Canadian 🇨🇦   Saskatoon Berry Pie & Maple Pecan Pie

画像1

このような会はおそらく最後ということで、18時から始めて結局夜中までみんなで飲み続けていました。
イタリア人が2人でシェアしているアパートですが、いつも嫌な顔ひとつせずに使わせてくれて、感謝です。

来週の予定

月曜日は、今年1月にローザンヌで開催されたユースオリンピックの責任者と振り返りのセッションがあり、水曜日にチームプロジェクトのプレゼンの予行練習、金曜日にMedicineの筆記試験です。
講義は終わりましたが、キャンパスに通う日々がもう少し続きます。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます! 皆さんのスキやコメント、SNSでのシェアが、何よりのモチベーションです。 サポートいただけましたら、スイスでの活動費に充てさせていただきます。スポーツ観戦やイベント参加など、体験の機会にはお金を惜しまず、情報発信していきます。