「液体」が使用された航空機内での事件
空港の保安検査場では、液体物が厳しくチェックされますね。開封済みのボトルについては臭いが検査され、国際線では100mlを超える容器に入ったあらゆる液体物は持ち込みができません。
なぜここまで液体物に厳しいのか?
今回はかつて「液体」が利用された航空機内での事件を調べてみました。
随時、追記していきます。
大韓航空858便爆破事件
発生:1987年11月28日
場所:アラブ・アブダビ国際空港
機材:ボーイング707型機
北朝鮮の工作員による爆破テロです。
大韓航空858便はミャンマーのヤンゴンの南沖約220km海上を飛行中にレーダーから機影が喪失。航空管制官や大韓航空の社内無線での呼び掛けにも応答がなくなった為、858便に非常事態が発生したことが明らかになりました。
後日、回収された残骸を分析した結果、残骸の多くに高温と強い衝撃を受けた痕跡があったため、何らかの理由により墜落前に機体が火炎に包まれていた可能性があることが判明。そして犯人の自供により、この墜落事故の原因が「機内に持ち込まれていた爆発物が爆発したことによる機体の空中分解」だったことが明らかになりました。
前述のとおり、この墜落は北朝鮮の工作員による爆破テロした。実行犯である2名の工作員は「大韓航空機を爆破せよ」という指令を遂行するため、日本のパスポートを偽造して身分を偽り、バグダッド国際空港→アブダビ国際空港の858便に搭乗。
アブダビ国際空港で実行犯が降機した際、豆腐サイズのプラスチック爆弾と酒瓶に偽装された液体爆弾が入った手荷物のバッグを機内に残したまま飛行機を降りました。
客室乗務員はその不審物を確認できず、そのバッグを乗せたまま同機はバンコク国際空港へ向けて離陸。離陸から5時間後に時限装置によって爆弾が爆発。機体は空中分解し、乗客乗員115名が亡くなりました。
ANA857便ハイジャック事件
発生:1995年6月21日
場所:東京・羽田空港
機材:ボーイング747SR-100型機
同年3月にオウム真理教による「地下鉄サリン事件」が発生。化学兵器による無差別同時多発テロという世界に衝撃を与えたテロ事件から3ヵ月後に発生したハイジャック事件です。
羽田発函館行きのANA857便が山形県上空を飛行中、乗客の1人がオウム真理教の信者を自称し、「サリンが入っている」と液体物の入ったビニール袋を持ち出し客室乗務員を脅迫しました。
同機は函館空港へ着陸。犯人はオウム真理教代表の麻原被告の釈放や、燃料給油と羽田空港への引き返しを執拗に要求しました。また乗客の解放や食料の搬入は一切拒否し、外部とのやり取りは人質となっていた客室乗務員が行っていました。
この事件に対し、警視庁は全国の警察を動員して機内の身元不明者を特定。また犯人の目を盗んで乗客が機内から通報してきたことにより機内の状況が明らかになり、警察による強行突入の準備が進められました。
そしてハイジャック事件発生から約15時間後の午前3時。当時の村山総理の指示により、北海道警機動隊やSAPによる強行突入が実施。最前部L1ドア付近にいた犯人は突入に気付いて後方へ逃走を図るも、L2ドアからも突入した機動隊との挟み撃ちにあい制圧、逮捕されました。
犯人は精神疾患で休養中の銀行員で、サリンだと言っていたビニール袋内の液体物は水でした。
イギリス旅客機爆破テロ未遂事件
発生:2006年8月9日
場所:イギリス・ヒースロー国際空港
イスラム過激組織「アルカイダ」による大規模な爆破テロ計画でしたが、事前に情報を掴んでいたロンドンのスコットランド・ヤードにより計24名の容疑者が逮捕され、事件は未然に防がれました。
イギリス・ヒースロー国際空港からアメリカやカナダへ向かうエアカナダ、ユナイテッド航空、アメリカン航空の合計10機の旅客機をアメリカの主要都市上空で爆破し、機体を墜落させて都市を攻撃する計画でした。
テロリストはペットボトルのスポーツ飲料に偽装した液体爆薬を機内に持ち込み、使い捨てカメラや携帯電話などの機内持ち込み可能な機器をつかって起爆させる予定だったそうです。
このテロを受け、一時期イギリスとアメリカはセキュリティ・レベルを最大レベルに引き上げ、空港の保安体制を強化。乳児用ミルクなどを除いたあらゆる液体物の持込を禁止しました。また、ロンドン・ヒースロー空港はすでに同空港へ向けて離陸した便を除くすべての航空機の着陸を禁止し、大きな影響が出ました。
中国北方航空6136便放火墜落事件
発生:2002年5月7日
場所:北京
機材:MD-82型機
乗客の1人が、自殺のため機内に放火。火災によって操縦不能に陥り、墜落した事件です。
事業に失敗して負債を抱えた男性乗客が、負債を清算するため事前に加入した航空傷害保険金を目当てとした自殺のため、飲料水に偽装した可燃性液体が入ったペットボトルを、機内に持ち込みました。
飛行中、機内後部に放火。機長が管制官に火災発生を通報後、火災によって操縦システムが損傷して操縦不能に陥り、大連空港から東に約20kmの海上に墜落。犯人を含む乗客乗員112名が犠牲になりました。
まとめ
航空業界が液体物に厳しくしている理由が少しお分かり頂けましたでしょうか。理由もなく、お客様にご不便をおかけすることなどありません。そこには必ず、安全を守るための理由があります。
かつて液体物が原因となった事件で、何百人という人々が亡くなっています。そして2020年現在もイスラム国などのテロリストが日本を標的としており、依然として警戒を要する状況が続いています。
「何事も無く目的地にたどり着く」これを当たり前のように続けるには、こうした地道な安全対策が必要なのです。
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