エアラインを題材とした短編小説です。 --------------------------------------------- 「前夜の空」 ただいま緊急降下中です。マスクをつけてください。ベルトを締めてください。 自動で再生されるアナウンスが飛行機の機内に響く。ボーイング737-800型機が急降下に入ってから2分が経過した。機内は自身の声すら聞き取れないほどの強烈な轟音が満たしているが、キャビンの座席に座っている172名の乗客の悲鳴はない。何が起きたのかもわからず、
先日16~17日にかけて台風7号が関東・東北地方に襲来しました。海水温が高い海域を通ったことで中心気圧が950hpaと非常に強い台風へと成長し、強い勢力を保ったままスパイラルの右側外縁を東日本に被せるようにして北上しました。 多くのエアラインが16日午後より欠航を決定。時間帯がきわどい時間帯の便は条件付き運航となるほか、多くの便で天候調査が行われておりネットで積極的に情報を発信していました。 基幹空港での大規模欠航ということで影響をうける便が多く、私のエアラインでは羽田や
2月。某空港から新千歳空港に向ってフライト中。 すでに19時を過ぎ、窓の外には名前のない様々な色が織りなす美しいグラデーションに彩られた空と、煌びやかな都市の夜景が広がっています。この仕事をしていると実感しますが、1日の「始まり」と「終わり」は毎日とても感動的です。 さて、目的地の新千歳空港では雪の予報が出ており、すでに降り始めていました。雪が降ると滑走路の除雪作業などが入るため一時的に離着陸が制限され、誘導路や上空が混雑してきます。そして以前投稿した記事のように、雪が空
2月某日。某空港から新千歳空港へ向かって飛行中。僕はチーフパーサーとして乗務していました。 この日のポイントは新千歳空港の天候でした。夕方から明日にかけて雪の予報がでており、我々が降りる時間帯にかぶってきそうな感じでした。雪が降ると遅延しやすいため、なるべく早めに新千歳に降り、早々に次の目的地である羽田空港へと出発したいところでした。 18時頃、新千歳空港へ着陸。お客様が降りてから次便の出発準備をしていると、窓の外にはすでに雪がチラホラ。「う〜ん、間に合わなかったか。でも
「777」 この数字を見た時、皆様は何を思い浮かべますでしょうか?広告などでもよく見る数字かと思いますが、我々飛行機ファンはこの数字を見た時、ある1機の飛行機を思い浮かべると思います。 今回はボーイング式ジェット旅客機の「No.7」 「ボーイング777」の歴史や魅力についてお話したいとおもいます。 数ある動画の中からこの動画をご視聴頂き、誠にありがとうございます。ぜひ最後までお楽しみください。 ボーイング777 アメリカのボーイング社が開発した大型双発ジェット旅客機
旅客機界のオールラウンダーは? と聞かれたら、皆様どの機種を思い浮かべますか?どのような路線や旅客数の便に投入しても安定した成果を発揮できる飛行機。「この飛行機のまかせておけば間違いはない」といわれるような飛行機。皆様のなかで、そんな飛行機はいますでしょうか? 今回は、私個人が思う旅客機界の名オールラウンダー「ボーイング767」について語っていきたいと思います。 ボーイング767 アメリカのボーイング社が開発した双発中型ジェット旅客機。 兄弟機となるボーイング757と共
いま飛行機を使うお客様は、フライトを「当たり前のように安全」と感じておられる事と思います。 これは過去から現在に至るまでにこの業界に携わってきた先輩方の成果であり、これからも業界全体で守り続けていくべき理念ですね。 では、その運航に関わる空港やエアラインの従業員が、自分の仕事に責任を持ってがんばって取り組むことも「当たり前」なのか? クレームを受けながら空港を走り回り、酷暑の駐機場で貨物や燃料を搭載したり整備したり、人目に触れずドックで故障した飛行機を重整備したり、厳し
「この飛行機は〇〇空港に着陸いたしました」 着陸後、飛行機が減速して誘導路に離脱したあたりでこのようなアナウンスが流れます。飛行機が無事に地上に降りてホッとする瞬間ですね。 すると機内では、カチャカチャッ!とシートベルトを外す音が響くことがあります。 ベルト着用サイン点灯は、安全に飛行機を運航させるための乗務員からの指示ですので、私たちは着陸後も飛行機が駐機場に到着してエンジンがシャットダウンされベルト着用サインが消えるまで、お客様にベルトをご着用いただきくよう働きかけ
航空各社が続々と国際線を復活させています。いよいよ本当に、航空業界の「復活」が始まったように感じています。 ここ数年、コロナ感染者が減る→エアラインが盛り上がる→感染者また増える→エアラインまた減便を繰り返してきました。今度こそRTOやATBではなくTake offし上昇していきたい想いです。 国際線については、すでに需要があり復活後すぐに利益が見込める路線もあるでしょうし、今は採算が取れないけど今のうちに復活させることで相手国との関係性構築や今後の増便戦略、自社PRなど
「001便は○○空港が悪天候のため、羽田空港に引き返す可能性があります」 皆さんはこんなアナウンスを聞いたご経験はあるでしょうか? 目的地空港の天候が悪く、着陸できない可能性がある場合、このような「条件付き運航」になります。本当に着陸できなかった場合は出発空港に引き返すか(Air Turn Back / ATB)、別の空港に降りる(Divert)ことになります。 今回はその時のエピソードを。 その日は目的地空港が「濃霧」のため、条件が付いていました。 出発前にCA同
8月末は仕事でした。 強烈な中心気圧を持つ台風11号が接近する南西諸島を通過する便でしたので、当然台風の影響を警戒してのフライトとなります。 幸い目的地空港は暴風圏内からは遠く、少々風があったものの天候も晴れ。しかし東京行きの復路便の予約数はかなり多くなっていました。 言うまでもなく数日後に来襲する台風から逃れるための需要です。8月末なのもあり、学生さんなどは台風に巻き込まれて始業式を欠席してしまう恐れもあります。天候が良くで満席とあらばエアラインとしても是非とも飛ばし
福岡空港 日本で第4位の利用者数を誇る混雑空港で、2800mの滑走路(Rwy16/34)1本で運用されています。市内からのアクセスも抜群、空港内の施設も充実していてフライトじゃなくても楽しめる私の大好きな空港の1つです。 この福岡空港。実は、Rwy16運用時の時だけの大きな特徴があります。それは「国内線ターミナルと滑走路Rwy16がめちゃくちゃ近い」という点です。プッシュバックしてエンジンを始動させてタクシーを開始したら、すぐRwy16のエンドに着いちゃうワケです。 我々
飛行機の座席ポケットに必ず入っている「安全のしおり」。皆様は読まれていますか? 「安全のしおり」は機種ごとに内容が異なり、その飛行機の安全設備や脱出方法などが載っています。安全に飛行機をご利用頂くうえで大切な情報が掲載されているので、私たちCAとしては是非お読み頂きたいものです。 そんな「安全のしおり」ですが、残念ながら読んでいる人は全体の5%に満たないそうです。そして万が一、飛行中に深刻な事故が発生した時、この「安全のしおり」や機内安全ビデオを見た人と見ていない人とでは
「飛行機は揺れるから怖い」 という方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。 私たち客室乗務員は常に飛行機の中で上下左右に揺らされながら立ち仕事をしていますので揺れには慣れっこですが、飛行機に乗り慣れないお客様からすると目に見えない揺れが不意に襲ってくるというのは、あまり気持ちのいいものではないのかもしれません。 ですが、飛行機の事を知っていくと「なぜ今、揺れているのか?」が少しずつですがわかってきます。これだけでも安心感がかなり違うものです(^^) 今回は自身の体験を
「客室乗務員になる!」が目標の人は、CAになった時点で目標を喪失してしまい、モチベーション・ダウンしてしまう。 たくさんの空の先輩方が、異口同音に仰っていることです。私もこれは事実であると感じています。 採用面接での頻出質問、 「5年後、どんなCAになっていたいですか?」 の質問に対し、その場しのぎ用の答えしか用意できない(しようとしない)人は「願望が不明瞭」であることから、モチベーション・ダウン予備軍である可能性があります。 「CAになる!」というのは「結婚する!」の
2009年1月15日。ニューヨーク発シャーロット経由シアトル行きのUSエアウェイズ1549便(エアバスA320型機)が、ラガーディア空港を離陸直後にバードストライクによって両エンジンの推力を喪失し、ハドソン川に緊急着水した事故です。 「ジェット旅客機による厳寒の川への不時着水」という大事故だったにも関わらず乗客乗員全員が生還したことから「ハドソン川の奇跡」と呼ばれています。 この事故を今一度、学びなおしてみたいと思います。 事前準備無しでの不時着水 1549便は離陸か