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ビジネスと優しさ

昨日はパッケージの業者とミーティングをしていた。

このコロナの影響で、実は一番困っていたのはパッケージのところで、ここが完全にストップしていた。それがようやく動き出したので、なんとか今年の秋までのローンチには漕ぎ着けそうだ。

この業者は、インターンの最中に私が見つけたのだが、今日はそのことについて少し書こうと思う。

あなたがもし香水ブランドを立ち上げようと思ったら、最低でも以下の業者を見つける必要がある。

① 香料メーカー
② 瓶、キャップ、スプレーの業者
③ パッケージの業者
④ ボトリングやパッケージングをしてくれる工場

①はそもそも数が限られいるし、独立している調香師と働くと、その調香師から香料を買うことになるので、割合簡単に見つかる。
②に関しても、香水関連の瓶やキャップ等を一括して取り扱っている業者はそう多くない(結果的に、規模の小さいニッチフレグランス間では、瓶やキャップがかぶることがよくあるのだが)。これも比較的簡単に見つけることができる。
④は探すのに少し苦労する。工場ごとにやってくれるオペレーションに結構な差があり、自分のブランドに合った工場を選ぶことが重要となってくる。私はインターン先が使っているところが結果的に良さそうだったので、そこに決めた。瓶やキャップを扱っている業者に聞いてみると結構コネクションがあったりもする。

③に関しては、業者の数が多く、良い業者を選ぼうとすると実は一番大変なのがこれではないか、と私は密かに思っている。もちろん、どんな業者でも構わない、ということであれば、星の数ほどある業者の中から目をつぶって選べば良いが、実際に身銭を切って発注するとなると、そういうわけにもいかないだろう。

インターン中の一つのミッションに、コスト削減があった。私がインターンをしていたブランドは、パッケージの部分にコスト削減余地があったので、より良い業者を探すべく、パッケージ業者が集まる展示会に足を運んだ。今はなくなってしまった、Pack & Giftという展示会だ。

私が足を運んだ翌年に展示会がなくなったことからも、あまりうまく運営できていた展示会ではないことが見て取れると思うが、その最後の悪あがきだったのか、その年のテーマとして「パーソナライゼーション」を全面に押し出していた。そのため、シンプルなパッケージをしてくれる業者は少なく、小ロットの凝ったパッケージを提供している企業が多く詰めかけていた。

その中でも、シンプルなパッケージを提供している業者をいくつか選び、話を聞いて回っていたのだが、とにかく対応が悪かった。ある業者なんかは、展示しているパッケージに触らないでくれ、とまで言い出した。
ただある意味当然と言えば当然で、ニッチフレグランスブランドが一回でオーダーするパッケージの量はたかが知れている。そんなところに時間と労力を使っても無駄、と考えるのは無理はない。とはいえそれを差し引いても酷い対応をされた。

そんな中、ある業者だけは、真摯に対応してくれ、後日オフィスにて細かい議論をする約束までしてくれた。

オフィスに戻り、上司に話を聞いた業者の説明をし、一番親切にしてくれたその業者を推薦した。なぜその業者が良いと思うかを聞かれたので、
「一番親切だったから」と答えた。
結局、以降この業者と取引をすることになり、無視できない金額のコスト削減をするに至る。それまで使っていた業者に比べ、値段が大幅に安く、技術的にも優れていた。配達までの時間が若干かかること以外は乗り換えない理由はなかった。

ところで、この業者とは発注までに何度かミーティングを重ねることとなるのだが、別の仕事の関係で、そのうちの一つにどうしても参加できなかった。
(その日は百貨店でのポップアップストアにて販売員として売り場に立つことになっていたのだが、その直前にカバンを盗まれてしまい…というのはまた別の話…)
後から聞いた話だが、私のいないミーティングの席で、上司がポロッと「展示会の中で一番親切だった、ってユータが言っていたよ」と話したそうだ。それを聞いて、その業者の担当者は、目に涙をうっすらと浮かべていたらしい。

冒頭にも書いたとおり、この業者に私のブランドのパッケージも発注する予定だ。細かい調整にもきちんと付き合ってくれるし、値段も安い。オーダーの最低ロットもかなり融通がきく。
「遅れてしまったから、このプロジェクトは急ぎで対応してほしい、と工場には僕から伝えておくよ」
そんな提案ももらった。

親切であることがどれだけビジネスにおいて有効なのかはわからない。もしかしたら先述の展示会で、私を邪険に扱った業者の方が、ビジネス的には成功しているのかもしれない。親切にしてしまったがために、私たちのような小ロットでの儲からないビジネスに着手せざるを得なくなってしまっている可能性も否定できない。

しかしながら、仕事という、日々の時間のかなりの部分を使うアクティビティにおいて、気持ちの良い相手と一緒に何かができるというのは、それだけで幸せなことであるようにも思う。
今、異国の地で独りで仕事をしていてひしひしと感じるのは、当たり前のことではあるが、仕事相手との関係性はビジネスにおいて非常に重要だ、という事だ。こちらの要求に対応してくれるかどうかは、往々にして関係性で決まる。その点において、外国人である私は多かれ少なかれハンデがあることは否定できない。

今回のパッケージ業者の「工場に急ぎの案件であることを伝えるよ」という一言は、元を辿ると、もしかしたら私の「一番親切だったから」発言が引き出した可能性がある。私は展示会にて親切にされて嬉しかったし、向こうも私の評価が間接的に伝わったことを喜んでくれていたのかもしれない。そうであったとしたら、このような形で仕事ができるのはとても幸せなことだ。

昨日のミーティングが、この業者との出会い(かれこれ2年ほど前になる)をふと思い出させたのでここに書くことにした。ここまで読んでくださってありがとうございました。

昨日は昨日でだいぶポンコツだったが、今日は今日とて、新しく買ったランニングパンツでルンルンと走りに行ったら、値札を取り忘れている事にあとで気付く程度にはポンコツでした。

次回も乞うご期待!

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