【複雑機構】スプリットセコンド・クロノグラフとは?

こんばんは。yutaです。

今回は以前紹介した複雑機構と呼ばれている
腕時計・懐中時計に搭載される機能についての説明です。

0.スプリットセコンド・クロノグラフとは?

7大複雑機構と呼ばれる複雑機構※の一つとなります。
そして7大複雑機構とは、下記にあげるもののこととなります。

・ミニッツリピーター
・トゥールビヨン
・パーペチュアルカレンダー
・スプリットセコンド・クロノグラフ
・パワーリザーブ・インジゲーター
・レトログラード
・ムーンフェイズ

※時計を作るための技術の中でも、複雑で
  高度な技術が必要とされる機構

また、下記3つの複雑機構は3大複雑機構と言われており、
上位に位置されています。

・ミニッツリピーター
・トゥールビヨン
・パーペチュアルカレンダー

1.クロノグラフ詳細

まず、クロノグラフと呼ばれる機能についての説明です。
ストップウォッチ機能を備えた懐中時計または
腕時計のことを指します。

言葉の由来として、
ギリシア語で「時間」を意味する「 chronos(クロノス)」と
「記す」を意味する「graphos(グラフォス)」の
合成語となっています。

そして、今回の表記である「スプリットセコンド・クロノグラフ」の
機能については次の通りとなります。

■スプリットセコンド・クロノグラフ機能

ストップウォッチ用の針を2本持ち、
中間タイム(スプリットタイム)の
計測などを行える特殊なクロノグラフとなります。
(スプリット = 分かれる、分割などの意味)

通常のクロノグラフと同様の運針を行う針をクロノグラフ針、
もう1本の針をスプリット針と呼ぶものとして
機能を説明すると次の通りとなります。

スタート/ストップボタンを押すと2本の針が同時に動き、
秒単位の計測を開始する。計測の途中でスプリットボタンを押すと
スプリット針が停止。一方クロノグラフ針は運針を続ける。

つまり、複数の計測を簡単に行う機能です。

Split second Chronagraph

動作については下記動画で確認出来ます。

また、スプリットセコンドの上位形として、
A.ランゲ&ゾーネが2018年に発表した
トリプルスプリットがあります。

■トリプルスプリットとは

クロノグラフ計測に関わる3つの積算計
(クロノグラフ秒針、30分積算計、12時間積算計)すべてが、
スプリット(ラトラパンテ)針をもつ超複雑時計となります。

つまりクロノグラフ用の針だけで6本もっていることになります。
そのため、ふたつの時間を最長12時間計測し、比較することが
可能となっています。

ちなみに価格は¥20,240,000-
※2モデル有り、各限定100本

元々複雑だったものが更に複雑となっているため、
高価格帯の金額となっています。
参考までに。

そして、これらのクロノグラフが開発、商品化されるまでには
下記の長い歴史があります。

Chronagraph

2.クロノグラフ歴史

ちなみに、クロノグラフのストップウォッチ機構を考案したのが
イギリスの 時計職人ジョージ・グラハムで1702年に考案。
「クロノグラフの父」と言われています。

それから時が流れて1816年、フランスの時計師
ルイ・モネ(1768-1853)が1816年に開発した
天体観測用の「60分の1秒計」が世界初のクロノグラフとされています。

※ギネス記録を取得しています。

続く1821年には、同じくフランスの時計師である
ニコラ・リューセック(1781-1866)が、インクで時間を記録する
「秒インジケーター付きクロノグラフ」を製作しています。

■クロノグラフの開発

そして、1831年、ブレゲ工房のオーストリア人、
ヨーゼフ・タデウス・ヴィンネルがスプリット・セコンド機能を発明。

※フェルディナント・アドルフ・ランゲが師事していました。
   (ランゲ&ゾーネの創業者)

1844年、スイスのアドルフ・ニコルが時計の針をゼロに
リセットする機構を開発。
現在でも、ほとんどの機械式クロノグラフに使用されています。

現在のクロノグラフの原型などと言われています。

■クロノグラフの商品化

そして1879年、ロンジンが世界で初めてクロノグラフを商品化。
懐中時計型の「ルグラン」と呼ばれるものです。

ただし、クロノグラフの特許を取得したのは、
ホイヤー(現タグ・ホイヤー)で1882年に取得し、
そしてクロノグラフ市場に本格的に参入。

1889年、世界初のスプリットセコンド機能の付いた
クロノグラフ懐中時計を発表し、同年のパリ万博の
銀メダルを受賞しています。

■クロノグラフとオリンピック

1896年のアテネの第1回近代オリンピックで、計測に初めて
ロンジンのストップウォッチが採用されました。
ただし、公式記録は目視による1秒単位のものでした。

1916年にホイヤーが1/100秒単位で計測できるストップウォッチ
「マイクログラフ」(Micrograph)を開発したことにより、
1920年のアントワープ・オリンピックでは、ホイヤーが公式計時を担当。

この大会から、機械による1/5秒単位のタイムが公式記録として
用いられるようになりました。

そして、1932年ロサンゼルス大会ではオメガが公式計時を担当し
公式記録は1/10秒単位にまで進歩しました。

■戦争の影響によるクロノグラフの進化

少し時間は前後しますが、1913年、ロンジンより
世界初の腕時計用クロノグラフムーブメントを
搭載したモデルを発表しています。

※1915年にブライトリングが世界初の腕時計クロノグラフとして
  「30分タイマー」を発表していますが、上記モデルよりも
  時系列が後のため、世界初ではない様です。

この時期は、第一次世界大戦真っ只中だったため、
腕に身に着けることのできる腕時計の需要が高まり、
時計も飛躍的に進化を遂げました。

1934年、ブライトリングから今日の典型的なデザインである
2つのプッシュボタン式のクロノグラフ「プルミエ」が発表。

この2つ目のボタンは、針をリセットするためのもので、
リセットが簡単にできるようになったことで、
連続計測ができるようになりました。
 
1940年代に第二次世界大戦が始まり、クロノグラフも進化。
1942年、ブライトリングから速度や燃料消費等の計算ができる
回転式の計算目盛を装備した「クロノマット」を発表。

1952年には、「クロノマット」をベースにした
パイロットクロノグラフ「ナビタイマー」(Navitimer)が発表。

Navitimer

文字盤の周囲に様々な目盛りが記されており、
ベゼルを回転させてベゼル上の目盛りと文字盤の目盛りを
対応させることで、かけ算や割り算が出来ます。

さらに地図から飛行距離と時間を算出し、
飛行中の高度補正や燃料消費も計算出来ます。

あらゆる飛行計算ができる航空計器として、重用されました。

そして戦後、1957年にはアポロ計画に採用されるオメガの
「スピードマスター」が誕生。
1963年にはカーレースのレーサーのためロレックスから
「デイトナ」が登場します。

時代の流れとともに求められるものが変わってきます。

■自動巻きクロノグラフの誕生

自動巻き腕時計は広まっていたものの、自動巻きクロノグラフは
製造されず。

ところが1969年に、ブライトリング、ホイヤー、
ハミルトン、デュボア・デプラの4社が共同開発し、
自動巻きクロノグラフムーブメント「クロノマティック」
(キャリバー11)を発表。

同1969年、セイコーは「キャリバー6139」を、
ゼニスは、「エル・プリメロ(El Primero)」(キャリバー3019)を発表。

ここで自動巻きのクロノグラフが誕生します。

■クオーツショックからの復活

自動巻きクロノグラフが誕生した1969年、
セイコーが初のクオーツ式腕時計「アストロン」が発売。

大量生産とコストダウンでクォーツ時計は世の中に
急速に広まり、スイスの時計業界は相次ぐ倒産や
整理統合等で、大幅に衰退。

ですが、1980年代になると機械式時計が
再び脚光を浴びます。
多くの有名メーカーのクロノグラフに
ETAバルジューの7750が採用されます。

つまり、ムーブメントの共有によってクロノグラフの
製造が容易になります。

他にはゼニスは1986年、他社に提供していた
エル・プリメロを搭載し、自動巻きクロノグラフを復活。

そして1988年には、ロレックスのデイトナが
手巻きから自動巻きになりました。
エル・プリメロをベースにしたムーブメントが
採用されています。

そして21世紀になると、ロレックスが完全自社開発の
自動巻きクロノグラフを搭載したデイトナを発表。
この後、スイス大手メゾンは続々とムーブメントを
開発していきます。

2005年には、フランク・ミュラー、ジャガー・ルクルトが、
2006年にはパテック・フィリップがオリジナルの
自動巻きクロノグラフを発表。
 
各社とも次々に新作を発表し、現在に至ります。

3.最後に

いかがでしたでしょうか。

他のものなどもそうですが時代と共に成長してきたのが
分かります。

もしオリンピックや戦争が無かったら、また別の成長を
遂げていたのかもしれないですね。
それはそれで興味深いですが。

そして、これからも時代に併せて変化を遂げていくものと
考えると楽しみでもあると考えています。

今日もご覧いただき、ありがとうございました。


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