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Soap strange journey/石けん持って、旅しよ

固形石鹸メーカー・・・いや、石けん屋としてのフェニックス。
言ってはみたものの、これは一体どう言う意味なんやろうか。僕自身もわからんかった。
カタチも色も匂いもようわからん答えを探しているうちに、いつの間にかそれはひとつの、大きな、そして奇妙な旅となっていた。
これは、今も続いているその旅の道のりや出会い、そのとき生まれた泡のようなナニカをあるときは今の姿であるフェニックス、またあるときはそのオリジンである皆様石鹸として言葉や文章にしてみた、まあ旅の感想文みたいなもんです。

ジャケット・ミーツ・フロオケ・イン・セントー
〜高丸温泉さんにて〜
ひと昔前、石けんとお風呂が今よりもっとニコイチだった頃、同様に石けん屋と銭湯(普通公衆浴場)も密接なカンケイやった。皆様石鹸もその歴史の中で銭湯とはとても深いつながりを持っていて、当時の石けん屋の当たり前の身だしなみとして様々なノベルティアイテムを持っていたことを知った。そのきっかけになったハナシ。

石けん屋の身だしなみ。その中の一つに風呂桶(洗面器)があることを、ある方が銭湯で現役(!)で使われている皆様石鹸の風呂桶をSNSで紹介されていることをたまたま見て知った。のちに知ることになるが、この方は島風呂隊の方であった。たくさんの銭湯をみている島風呂隊の方々もこんな風呂桶を見たことがなく、そもそも皆様石鹸って一体?という内容の投稿。
鮮やかな赤のボディにくっきり銀色で「皆様石鹸」。ケータイの画面越しでも、その姿に僕は見惚れて言葉を失った。しかも現役で使用中て。場所!神戸?行ける!

皆様石鹸が銭湯向けの商売をしていた期間はそう長くなく(正確な記録は残っておらず長くてもおそらく戦後30〜40年)、その際に作られた各種ノベルティは未確認のものも含めて種類も数も少ないと思われる。

一眼見たくて居ても立っても居られなくなった僕は突撃訪問しようと神戸は垂水、山陽電鉄滝の茶屋駅から少し歩いたとこにある街の銭湯、その名も高丸温泉へと向かった。
銭湯の暖簾をジャケット羽織って、あんなにドキドキしてくぐることは後にも先にも無いと思う。
明らかに場違いなカッコと雰囲気で入ってきた僕を女将さんは番台から不思議そうな顔で眺めた。僕は緊張しながらとにかく自己紹介(もちろん皆様石鹸&名刺)をし、フェニックス(=旧皆様石鹸)であることと僕たちがルーツを探す旅をしていること、風呂桶を一眼だけでも見たくてタマランのですというお話しをした。夢中で一方的に話していたのでちゃんと話せていたのかはわからないが、女将さんはしっかり聴いてくださった。

「ああ、あれかいな、ちょっと待っててな」

そう言うと女将さんは女湯に入って行き、しばらくするとお湯のぬくもりが残ってまだ温かい風呂桶を持ってきてくださった。
感動の瞬間やった。

高丸温泉には合計7個の風呂桶が残っており、中には新品未使用(!)のものが一つあった。現役で使用されていた事もあり、当初は見せていただくかお借りできれば充分ありがたいと思っていたが、僕の話を聴かれた女将さんが「会社の活動に役立ててください」と5つを譲ってくださった。

女将さんに御礼を伝え、高丸温泉を後に・・・する前にもちろんひとっ風呂浴びさせていただいた。
おろしたての皆様石鹸一個で上から下まで丸洗い、熱めのお湯を受け取ったばかりの真っ赤な風呂桶でざぶざぶとかぶり、素晴らしいタイル絵を眺めながら湯船にぷかり。
「ああ、この世界の中にウチの石けんて当たり前のようにあってんなあ・・・」
「そのときと今現在と何が違うんやろ」
みたいな思いがボ〜っとお湯に溶けていった。
風呂から上がったスッポンポンの僕に女将さんがめっちゃフツーに
「湯加減どうでした、気持ちよかったやろ」
「これ飲んどき、オロ●ミンC。」
キンキンに冷えたんを飲み干す僕を尻目に、他のおじいはんのお客さんになれた手つきで湿布を貼ってあげてる女将さん。

ああ、これか。この雰囲気。ここにはまだちゃんとあるんや。
ウチと僕らが忘れかけてたもんが・・・。

「貴重なものを僕らに預けてくださってありがとうございました、またこれからも寄せてもらいます」
「よかった、あんたらが持ってる方が意味があるやろうから。またお風呂入りに来てくださいな」

こうして高丸温泉を後にした。のれんくぐる時には、最初の緊張は泡になってどこへやら。そのかわりにぽかぽかしたもんがずっと僕の中に残っていた。11月の夕暮れ時のそよ風が心地よかった。

次のおはなし
この出来事をきっかけに、僕自身が銭湯の世界に文字通りとっぷりと浸かっていくこととなった。

風呂桶のお礼に皆様石鹸を女将さんにお渡しすると、銭湯を通じてこういった活動をしたいようであれば、おもしろい人がいると言われた。
その方こそ「旅先銭湯」をはじめとした多数の銭湯関連書籍の編集者であり、島風呂隊の発起人でもある松本さんであった。女将さんはその場で松本さんに電話をしてくださり、一度会ってお話しましょうということになった。

場所はもちろん高丸温泉。
フェニックスに入社以来初めての湯船の中での全裸商談。
再び脱衣場でオロ●ミンCを片手に繰り広げられる高丸温泉史、そして銭湯の現実。
皆様石鹸がきっかけとなって始まった旅。それは僕の旅であり、フェニックスの旅であった。
次回、「銭湯、その深さ」お楽しみに。

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