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「他人に読んで貰う」文章を書きたい時にその2


「他人に読んで貰う」文章のために必要な「語彙力」ってなんだろう?

SNSではよく誰かの発言やテキストに対して「語彙力が高い」という表現が使われます。私はその多くは、「読んだテキストから何らか気付きを得た時」に使われる事が多いと思っていますが皆さんはどうでしょうか。

ところで「語彙(ごい)」という言葉が指すのはどういう意味でしょうか

語彙(ごい)とは、ある人やある国が持っている単語総体のことをいう。日本語の語彙といえば日本語単語総数のことを指し、Aさんの語彙といえば、Aさんの知っている単語の数のことを表す。

実用日本語表現辞典

weblioに納められた実用日本語表現辞典の説明がわかりやすいと思ったので引用させてもらいましたがSNSで感想に使われる場合については「書き手の言葉の使いさばきのスキル」を指す時に使われる事が多いのではないかと思います。
つまりは「言葉の使い所(選び方)が上手い」という感じです。

「難しい言葉を使っていないのに多くの情報が伝わってくる」
「直接的な表現がないのに何をしているか理解出来る」
私が挙げているのはこういうケースの話です。

これとは別に「見た事のない言葉を使っている」「一般的ではない言葉を多く知っていて使いこなしている」という「言葉に対する知識」についても「語彙力が高い」という言い方がされる事もあります。
こちらについては「言葉に対する知識が豊富」という意味で「言葉の使いさばきスキルが高い」に含まれるかと思います。

どちらも「語彙力が高い」で良いかと思うのですが「他人に読んで貰う」を目的にした場合、優先度が高いのは「使いさばきのスキル」の方かな、と思います。

「使いさばきのスキル」と「言葉の知識」は繋がっているので切り離して考える物ではないんですが、私は「使いさばき」は「読みやすさ」、「言葉の知識」は「作品の特徴や雰囲気を出す表現の豊かさ」に使われる物という認識で書いていますのでそのつもりで読んでいただければと思います。

このnoteは「他人に読んで貰う」=「読み手にとってわかりやすいテキストを書く」ためのメソッド(方法)の一例として書いていますのでそれを目的とした私なりの「語彙力をアップさせるためのやり方」を書いてみたいと思います。

文章を書くために「効率良く語彙力を上げる」方法の例

では「他人に読んで貰う」事を目的として語彙力を上げる場合、どうしたらいいのか、私なりに一番効率が良いと思う方法を書いてみます。

  1. 言葉の意味を理解する

  2. 言葉の使い方を確かめる

  3. 知らない言葉を減らす

  4. 使える言葉を増やす

優先順位としてはこんな感じかな?と思います。以下、項目についてそれぞれどういう事が解説してみます。

1.言葉の意味を理解する

これはどういう意味かといいますとテキストを書く時、使う言葉はなるべく「自分なりに意味がわかっている」物だけで書けるようになる事を目指して欲しいという目標です。
言葉でやり取りする会話であれば文法が崩れている事も多いし意味がわからない言葉があれば聞いて確認したりできます。ですが「文章を読む」場合は「書き手の出してきた情報(文章)」は読み手に対して一方通行で終わります。
その時、使われている言葉の意味が書き手と読み手で違っていた場合、読み手は書き手の言いたい事が理解できないかもしれません。

私達は何か書く時に単語一つ一つ、全ての意味を確認しながら使うという事はほぼありません。誤用を正しい物として確認している事も多々あります。ただ、普段あまり使わない、特にしゃべる時にはあまり使わず、文章の時だけに使うような言い回しや言葉を使う場合「絶対に間違いがない」と確信できる時以外はこまめに検索して辞書の解説を見るクセを付ける事を切にお勧めします。
※ちなみに私は今「切に」を検索して一般的には「切に」は「願う」をセットにして使う物で「切」単体では「熱心に」という意味があるという事を確かめました。

2.言葉の使い方を確かめる

これは「言葉の意味を理解する」をもう少し進めた段階になります。私達が言葉を覚えるのは多くは既に存在している他人の作った作品からです。
かつては市場に流通する文章の大半は「作家」や「編集者」「校正者」と言った、何かしらの「プロ」の手で書かれ、目を通された物でした。
ですが今は違います。ネットに関しては、私も貴方も含めたアマチュアが書いたテキストの方が圧倒的に大量です。作品という体裁にかかわらずSNSなどでは「つぶやき」が多量の文章になっています。
誰もが自由に作品や思っている事を他人の目に触れる形で公開できるようになったのはとても良い事なのですが「誤用が誤用として認識されないまま広がって行く」リスクが隣り合わせの状態である事を理解していないと思わぬ事故が発生する事があります。

わかりやすい例だと「一般的にはけなす意味の言葉を褒め言葉として理解している(またはその逆)」場合、意味が真逆になってしまいますよね?
私の体験で実際に齟齬が発生した例で言うと「香ばしい」があります。
「香ばしい」は正しい意味合いでは「物が焼けて香り高い匂いがする」というポジティヴな表現ですがネットスラングでは「うさんくさい」とか「頭がおかしい」「痛い」といった意味合いで使われています。

事故が起きたテキストでは「本当に彼は香ばしい人柄だった」という感じの表現に使われていたのですがこれを読んだ人はどう理解するでしょうか?
書き手さんの意図としては「ネットで時折香ばしいを目にした結果、香ばしいを人間に対して使用する場合、趣深いという意味合いになるという認識だった」そうです。
この誤用のポイントとして
・香ばしいは褒め言葉として使う場合は匂いに対する物
・人間に対して使うのはスラングであり、けなす意味合いとなる
この二点を知らなかった結果、読み手は「『彼』は性格的に問題がある人なのかな?」と考える表現になってしまったのです。

現在ではWeb公開していたアマチュアのテキストを編集や校正なしで紙媒体にして市場で販売するスタイルが当たり前なのでネットに限った話ではないのですが「教科書や辞書など信頼できる校正が入っていない物から覚えた言葉には誤用があるかもしれない」という意識でいるくらいでちょうどいいかもしれません。

言葉は生き物なので元々使われていたのとは違う意味で使う人が増えればそちらの方が「その時点では正しい」事になりますが「自分の言いたい事を他人に理解して欲しい」というつもりで書くのであれば一般的に使われる意味に合わせて使う必要があるかな、と思います。

3.知らない言葉を減らす

これは「未知の言葉を減らす」という意味ではありません。1.と2.で書いた事を踏まえて「なんとなくで使っている言葉」を減らすという意味です。
これは私の経験からなのですが言葉の使いさばきに自信が無い状態で書いた物と、気になる言葉や言い回しがあればきちんと調べた上で完成した物だと圧倒的に後者の方に説得力があります。
一時期、仕事で文章を書いていた時期があったので、納品するテキストだったため言葉の使い方に誤りがないかなどに注意を払う必要があったからの話で、趣味の文章にそこまで手をかけられない、という人も多いと思います。「書きたいままに書く」でもいいのですが「書く物のレベルを上げたい」という気持ちになったら確実に作文レベルが上がるので気が向いたらやってみて下さい。

4.使える言葉を増やす

おそらく「語彙力を上げる」ためにやる事として「色々な本を読む」など「インプット」が優先となるイメージが強い方も多いのではないかと思いますが、経験上では作文のスキルを上げたい場合、インプットは後回しで大丈夫です。
というのが「作文」とは料理における「調理」のスキルなので珍味やスパイスのような特別な単語をたくさん集めても「出来の良い料理」ができるとは限らないからです。
三大珍味を集めて来てもそれだけでは料理になりません。それよりもにんじんたまねぎじゃがいもを皮剥きして、食べたい料理に向いた切り方と加熱の方法が何か確認し、その通りに調理した方が料理として完成度が高い物になるようなイメージです。

インプット作業は「これが書きたい」というテーマのための資料を読む以外であればテキストを書く作業とは切り分け、並行して楽しむような感じでいいのではないかなと思います

「語彙力を上げる」最初の目標は「自分の書きやすい言葉を理解できている」事

このシリーズ全体では「他人に読んで貰う」文章を書く時に知っておくと役に立つ事をまとめているので小説や解説文などジャンルに関係なくテキスト全般について使える内容のつもりなのですが、この見出しについては主に小説向けの内容になります。

前述の通り「他人に読んで貰う」ために「語彙力を上げる」話をしているわけですが結論の一つとしては「自分が使う言葉については意味を確認して理解する」になるかと思います。
「冷蔵庫にある材料でレシピに沿わずに作っていたらなんだかよくわからない物ができた」が発生する事がありますが、言葉の意味を理解せずに書いているとそれと同じように「何が言いたいかよくわからない文章が出来た」が発生しまいます。
「粗筋も何も決めずに思い付きで書き続けたらこうなった」場合は仕方ないのですが「一応、書きたい内容はあった」のに「何が言いたいかよくわからない」になるのは「自分の言いたい事を書くのにどの言葉を使ったらいいかわかっていない」場合があります。語彙力を上げて防げるのがこのパターンです。

その1の方の記事で「同じ事を言うために別の言葉を使って2種類の文章を書いた」段落がありました。ああいう書き分けに対しても「語彙力」と言われる事がありますが使い分けはそれなりに言葉の引き出しに貯金が出来てからの話です。
文章を書き始めでそこまではまだ、という段階でしたらまずはある程度書いて「自分の言葉(文体)」をつかんで下さい。必ず「好きで繰り返し使う言葉」「特定の状態を指すのに使う時、決まって出て来る言葉」が出て来ます。「私、この言葉(言い方)が好き(よく使う)んだな」というのをなんとなくでも意識して見て下さい。
そうしたらその言葉の意味を確認したり、自分がよく使う言葉と組み合わせてバランスが良さそうな言葉を探して選んでみてください。
それができると文章全体の見栄え(バランス)が整ってくるので読みやすくなって来ます。
※ここの部分について、私は長い時間をかけてなんとなくの積み重ねで身に付けたのでメソッドとして無理やり言語化していますが体系立てて分析しろという話ではありません。なんとなく意識しておくといいよ、という程度で読んでみて下さい。

今回は「自分の使ってる言葉の意味わかって使ってるか確認しようね」と言いたいだけでこの長さですよ。
第二回はこれにて終了です。

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