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ベストアルバム2022 50選

 年末年始体調を崩して記事が結局かなり遅れてしまい、旬を過ぎてしまった感は否めないのですが、やっぱり愛して聴いた音楽たちなので記録として残しておこうと思った次第です。
 2022年は2021年よりもちょっと音楽への熱量が多かった年でした。私はなるべくサブスクを使わず、自分でデータを所持することにやたらと拘るんですが、今回の選出も所持しているコレクションの中から選んでみました。
 今回とは別に上半期と下半期に分けて、ベスト10選と気になった曲100選のSpotifyプレイリストを作ったりもしたんですが、やはり年間ベストもやっておくべきだなと。それだけちょっと情熱的に音楽を聴いたのだと思います。では前置きはこんなものにして早速やっていきます。順位は付けずアルファベット順に枚挙していきますよ。
 ちなみに下記のプレイリストが内容とリンクしているので流しながら読んで頂けると楽しめるかと思います。是非聴いてみてください!


Aldous Harding / Warm Chris

Aldous Harding / Warm Chris

ニュージーランドのSSWによる4thアルバム。シンプルで温かみのあるトラックに全体的に緩やかで飄々をした歌唱、ポジティブなボーカルメロディがキュートな作品でした。

Alex G / God Save the Animals

Alex G / God Save the Animals

(Sandy) Alex Gとも名乗っているフィラデルフィアのSSWの9枚目。気付いたらもうベテランですね。ひねくれたアレンジがクセになる。いつもの特徴的なハイトーンボイスエフェクトを飛び道具に細かいところまで気の利いた一枚。

Alvvays / Blue Rev

Alvvays / Blue Rev

カナダのバンドの3rd。インディー・ポップ・バンドなんですけど、ドリームポップ、シューゲイズ、ギターポップなどインディーロックの美味しいところのエッセンスがギュッと詰まって、しかも青春を感じさせる甘酸っぱさがとにかく最高。M1のPharmacistなんかはYo La Tengoを思わせるギターノイズにニッコリ。

Anja Lauvdal / From a Story Now Lost

Anja Lauvdal / From a Story Now Lost

ノルウェーのピアニストのデビュー・アルバム、Laurel Haloプロデュース。とは言え内容は電子音楽で、ニューエイジを思わせるコロコロしたトロピカルな音色をたまに覗かせたりするアンビエントサウンド。静謐さとともに何処かドメスティックな雰囲気を纏ったアルバム。

Beach House / Once Twice Melody

Beach House / Once Twice Melody

アメリカのドリームポップデュオによる8枚目、完全セルフプロデュースで4つの章に分割されたコンセプチュアルな作品。いや、まさにBeach Houseといった幽玄で淡い色合いの青春音楽。いや青春音楽の部分は完全に主観ですが。個人的にはTeen Dream以来の傑作と思いました。

Big Thief / Dragon New Warm Mountain I Believe in You

Big Thief / Dragon New Warm Mountain I Believe in You

アメリカのフォークバンドの5thアルバム。2枚組という長大さを感じさせない暖かく優しい、感涙必死の至福の時間。下記で紹介するアーティスト含めて2022年はフォークシーンがグッと盛り上がった雰囲気があり、その最先端にいるバンドだと思います。

Black Country, New Road / Ants from Up There

Black Country, New Road / Ants from Up There

イギリスのロックバンドの2nd。前作と違ってバンド名として統一してのアルバム。アートポップ味もあるドラマティックな一枚で、これもまたフォーク・ロックの潮流を盛り上げた一因となっていると思います。ボーカル脱退後は新曲を引っ提げてそれぞれのプレイヤーがボーカルを取るという形でライブを行いました。これからの活動も楽しみなバンドです。

black midi / Hellfire

black midi / Hellfire

イギリスのソフィスティケートされたプログレッシブ・ロック・バンド。胃もたれするほどパワフルで、超絶技巧な混沌とした曲展開に思わず笑ってしまう。楽曲の表情も多彩で、ある種サウンドトラックのような物語性を含んでいる。

Burial / ANTIDAWN EP

Burial / ANTIDAWN EP

ああ、Burialさん、あなたの音楽をいつも楽しみにしている。昔のBurial好きからすると最近のBurialはアンビエンスで、非常に退廃的で静謐故に、昔のダブステップのリズム感を求めるとアレ?っとなる。とは言えこのノワールで濡れたコンクリートのような音楽は彼にしか作れない世界観。私はもはや彼のファンなので正当な評価を下せない。

Caroline / Caroline

Caroline / Caroline

イギリスの8人組によるデビュー・アルバム。フォークを基調にポストロック、ミニマル・ミュージック的なアレンジをした作風が非時代的で個性となっている。私が今年はフォークが盛り上がっていると思った要因の一つ。スタイルは違うけれど音質がちょっと2000年代のGY!BE周辺などのポストロックの潮流を思い起こさせる。

Cass McCombs / Heartmind

Cass McCombs / Heartmind

アメリカはカルフォルニアのオルタナ・カントリーっぽいSSWの10枚目。まあ、2009年のアルバムCatacombsで出会ってから毎回楽しみにするくらいファンなんですが、今作は亡くなった友人たちに捧げられた優しく、ちょっと明るい曲調が多いです。カントリー風の作風を中心にスピリチュアルジャズ、ゴスペル、ギターポップ、クンビアといったエッセンスを織り交ぜて奏でられています。

Caterina Barbieri / Spirit Exit

Caterina Barbieri / Spirit Exit

イタリアの作曲家の6枚目くらい。モジュラーシンセを使ったアンビエント~ニューエイジ。シンセミュージックはここ10年くらい徐々にアンダーグラウンドからオーバーグラウンドへ浸透してきた気がします。リヴァイヴァルな作風が今では普通の価値観となって再認識されているような印象。この作品は全体的に幽玄で曖昧な風景を描いているんですが、しっかりドラマティックな展開などもあってサービス精神旺盛です。

Cremation Lily / Dreams Drenched in Static

Cremation Lily / Dreams Drenched in Static

イギリスの電子音楽ソロユニットの8th。ノイズ、ダンスミュージック、シューゲイズ、ダークアンビエントをブレンドしたジャンルレスなごった煮。その不穏なユニット名同様、破壊的でドラマティックな世界観を持っている。ちょっと2000年代のThird Eye Foundationなどの雰囲気を彷彿とさせる破滅的な音楽。

Destroyer / LABYRINTHITIS

Destroyer / LABYRINTHITIS

カナダのSSW、Dan Bejarのインディー・ロック・バンド・プロジェクトの13枚目。っていうかもう13枚目なのが驚きです、光陰矢の如し。2010年代から続いてきた80年代風の音楽リバイバルの潮流を汲むようなソングライティングがダンスミュージックの文脈を加えて立ち現れる。叙情的でありながらあなたの青春になりうるフレンドリーな作品。

FKA twigs / Caprisongs

FKA twigs / Caprisongs

イギリスのR&B~Avant-GardeなSSWのミックステープ。今までの完璧主義的なアートに対して、こちらは彼女のホームパーティーで踊るようなラフな温度感になっている。普段の彼女の作品がわからないという人でもとっつきやすい内容になっているので、入門編にも良さそう。

Florist / Florist

Florist / Florist

アメリカはブルックリンのフォークバンドの4th。アンビエント要素の非常に強いひんやりと柔らかいフォークアルバムで、仄かな電子音、サンプリングのオブラートに包まれている。ヴォーカル曲は親しみやすく、歌なしのアンビエントは洗練されている。ささやかで素敵な時間を作ってくれます。

Grace Ives / Janky Star

Grace Ives / Janky Star

アメリカはブルックリンのSSWの2nd。Roland MC-505をぶん回して作った前作に、ギターやピアノの楽しい響きを加えて作り上げた超キャッチーなポップ・アルバム。アタックの強い音を多用しながら、その上を飄々と飛び回るボーカルに思わずニッコリ。10曲27分というコンパクトさでありながら、カラフルな満腹感に満たされる。

Healing Potpourri / Paradise

Healing Potpourri / Paradise

アメリカはサンフランシスコのチェンバー・ポップ・バンドの4枚目。ソフトロック、サイケデリックを程よく混ぜたリラックスできるシーシャのような一本。柔らかでポップな内容は、ちょっとThe High Llamasの良いとこどりをしたような具合で非常にフレンドリー。

Isa Gordon / For You Only

Isa Gordon / For You Only

スコットランドはグラスゴーの電信音楽プロデューサーの1stアルバム。最近のニューエイジやエレクトロニカのリバイバルの流れを組みつつ、終いにはちょっとプログレ感もあるクセだらけの電子音楽。時代の流れを汲みつつも少し逸脱したスタイルが個性を生んでいる。

Isik Kural / in february

Isik Kural / in february

イスタンブール出身グラスゴー拠点のアンビエント風味の電子音楽家。ピアノやギター、フィールドレコーディングを駆使して温かみのあるフォークトロニカを聴かせてくれる。この時代にフォークトロニカというのもなかなか珍しいような気もして、ちょっと郷愁を覚えてよく聴きました。

Jockstrap / I Love You Jennifer B

Jockstrap / I Love You Jennifer B

イギリスのエクスペリメンタル・ポップ・デュオの1stアルバム。今までEPでそれぞれいい味出している音を聴かせてくれていたけれど、今作では腰の座った幅広く実験性の高いポップ・ミュージックを披露してくれた。ボーカルのGeorgia Elleryは先に紹介したBlack Country, New Roadのストリングスを担当しているが、音楽性はずいぶんと違う。これからも注目していきたい人物だ。

Kaitlyn Aurelia Smith / Let's Turn It Into Sound

Kaitlyn Aurelia Smith / Let's Turn It Into Sound

ロスアンゼルスの電子音楽家の9枚目くらい、もう9枚目?今年のKaitlyn Aurelia Smith & Emile Mosseriのコラボ含めたらもっと作品発表しててすごい精力的。今作は今までのアンビエント~ニューエイジの括りから大きく飛び出てダンスミュージック、或いはハイパーポップまで幅を広げて、独特の変態的エレクトロニックミュージックに昇華している。

Kali Malone / Living Torch

Kali Malone / Living Torch

スウェーデンはストックホルムで活動するミニマリストコンポーザーの4th。前作のオルガン中心のイメージが定着していたので、今作の電子音楽とトロンボーンやクラリネットなどを駆使したドローン。M1は抑制された静謐な美を主軸としつつ、M2などはよりドラマチックになっているのも非常にエモい。繊細で叙情的なドローンが好きな人はマスト。

Kate Bollinger / Look at It in the Light EP

Kate Bollinger / Look at It in the Light EP

アメリカ、バージニアを拠点とするSSWのEP。作品としては2枚目でアルバムはまだという新人。コロナ禍に入ってから俄に増えてきたベッドルームポップの一葉。メロウでキュートなガールズSSWに弱いのでちょっとツボに嵌っちゃいました。M2が特にかわいくてリピートした記憶。

Li Yilei / Secondary Self

Li Yilei / Secondary Self

中国出身、イギリスはロンドンで活動するサウンドアーティストの4th。前作の之 / OFは一貫性のあるアンビエントであったのに対して、今作はそれぞれに違った様々な実験的な試みが散りばめられている。基本的にはミニマルでアンビエンスな実験音楽が展開されるが、美というものが和音だけで成り立っているわけではないと再認識させられる。

Lucrecia Dalt / ¡Ay!

Lucrecia Dalt / ¡Ay!

ドイツはベルリンベースのエクスペリメンタルアーティストのサントラやコラボを除けば7枚目あたりだろうか。実験性の高い音楽が印象的だが、今作はラテン調のボーカル曲を中心にドラマティックで幽玄な音楽に驚く。出身地のコロンビアの血が流れた彼女なりの再解釈と技術による異化のように思われる。新しいラテン音楽の誕生を感じる。

Marina Herlop / Pripyat

Marina Herlop / Pripyat

スペインはカタルーニャのコンポーザーの3rdアルバム。ピアノと電子音楽、そして繊細な声の重ね録りからなる、エクスペリメンタルで変態的な作品。ピアニストだけあって、テクニカルなピアノの演奏とインドのカーナティック音楽を取り入れた特殊なリズム感の音楽です。めちゃくちゃ個性的なアルバムなので未聴感を大事にしている音楽ファンは是非一聴してもらいたい。

Medicine Singers / Medicine Singers

Medicine Singers / Medicine Singers

アメリカのExperimentalなネイティブ・アメリカンのパフォーマンスグループの1st。東アルゴンキアの方言とパウワウの音楽的な表現を主軸に、電子音楽などを組み合わせた非常にユニークな音楽性が特徴的。呪術的でありながら、実験的な精神が楽曲の端々から感じられる。

Moonchild / Starfruit

Moonchild / Starfruit

アメリカはロスアンゼルス出身のR&B~Neo Soulトリオの5th。スウィートなメロディー、柔らかなでタフなリズム隊が非常に心地よい音楽を作り出している。ここ数年間のNeo Soulのブームの縁の下の力持ちと言えるような立ち位置に居て、尖ったところはないけれど、替えの利かないパフォーマンスを今作でも存分に味わえる。

Moor Mother / Jazz Codes

Moor Mother / Jazz Codes

アメリカのペンシルバニア出身の詩人のソロアルバム8枚目。Hip-Hop/Rapと言うよりはポエトリーリーディングに近い人物で、前作同様Jazzをベースにしたトラックに彼女特有の攻撃性が溶け込んでいる。とは言え初期の作品や後で紹介する700 Blissと比較すると、非常に音楽的に馴染みやすいものとなっている。このバランス感覚は前作からの延長線で得られたものだろうし、これからもフリーキーさとこの親しみやすさを乗りこなすところを見てゆきたい。

Nahi Mitti / Aisaund Sings

Nahi Mitti / Aisaund Sings

イギリスはマンチェスターのDJ、プロデューサーの1st。ダークでサイバネティクスなトラックが特徴的、同一のリズムが続くことは珍しく、何かしらの変化や異変を起こしていく。近いアーティストで良く挙げられるのは同郷のayaだが、クラブサウンドから出発して、より複雑化しているサウンドという印象を受ける。同じくトランス女性のArcaなどの音が好きなら馴染みやすいかもしれない。

Nilüfer Yanya / PAINLESS

Nilüfer Yanya / PAINLESS

イギリスはロンドン出身のSSWの2ndアルバム。Indie Rockが勢いを弱めて、R&Bが勢力を強めたここ10年間だったけれど、彼女の音楽はそのどちらにも属しつつ属さないような特異な音楽を作り出しています。音も非常に現代的で、なにかのリバイバルなどの影がないのが昨今のアーティストには珍しいポイントの一つ。それらが美しいメロディーでしっかりと支えられている。

Nina Nastasia / Riderless Horse

Nina Nastasia / Riderless Horse

アメリカのSSWの12年ぶりの7thアルバム。バンドサウンドから離れて、ドメスティックな雰囲気のあるアコースティックギターによる弾き語り。今までの叙情的でドラマティックな展開や、絶望を感じさせる暗いトーンが拭い去られ、何処か希望を感じさせる再出発の音楽。私は昔からNina Nastasiaが大好きで、ずっと待っていた新作なので彼女が帰ってきてくれて、本当に嬉しいです。

Panda Bear, Sonic Boom / Reset

Panda Bear, Sonic Boom / Reset

アメリカのボルチモアで活動するFreak Folk集団Animal CollectiveのPanda Bearと、イギリスのSpace RockバンドSpacemen 3の元メンバーSonic Boomがコラボした1stアルバム。Panda Bearらしい狂ったディズニーランドみたいなメロディーに、Sonic Boomのディレイギターが乗ってオリジナリティの塊みたいな音楽になっています。と言うか、この二人の組み合わせがこんなに良いとは誰が思ったでしょう、サイケデリックさという点ではある程度共通点はあったものの、音楽性の距離は遠いと思っていたものがこれほどの親和性を持って現れるというのは、長く音楽ファンをやっている人間にとっては嬉しいサプライズ。

Perfume Genius / Ugly Season

Perfume Genius / Ugly Season

アメリカのSSWによる6枚目のアルバム。振付師Kate Wallichによる2019年のコンテンポラリーダンス作品のために書き下ろされた楽曲をまとめたフルレングス。その為か、アルバム全体がサウンドトラックに近い趣を持っており、これまでの作風よりも随分と演技がかっています。今までの軽やかさと比べると、重くコンセプチュアルで、逆に私は「お、こんなのもできるのか」と驚き、高く評価するに至りました。今まで通りの作風でしたら、チェックはしてもこんなに良いと感じなかったと思います。

Rachika Nayar / Heaven Come Crashing

Rachika Nayar / Heaven Come Crashing

アメリカはブルックリンを拠点とするコンポーザーによる2枚目。彼女の作品はギターを中心としたエレクトロニック・サウンドですが、今作は90~00年代のPost-Rockを彷彿させる叙情的でドラマティックな音楽になっています。タイトル曲の「Heaven Come Crashing」などは、途中で挿入されるDrum'n'Bass風のリズムも含めて、その時代の郷愁を感じさせる作品でした。この手の音楽は本当にツボなので、過去を振り返る厄介オタクになりながら、何度もリピートした次第です。

Rosalía / MOTOMAMI

Rosalía / MOTOMAMI

スペインのシンガーによる3rdアルバム。ブリブリのR&BからAlternative Reggaetonという感じの作風なんですけれど、その振り幅に風邪をひきそうになるほどアルバム内のテンションに差がある。友人のcanooooopyに「四の五の言わずに聴け」くらいの温度で紹介されたんですけれど、このDQNさは彼は大好物でしょう。

Salamanda / ashbalkum

Salamanda / ashbalkum

韓国はソウルで活動するプロデューサーデュオの3作目。泡沫を弾けさせるような柔らかなNew Ageサウンドが特徴的で、そこに絹のようにひらめくスキャットボーカルが乗り、非常に幻想的です。ここ最近のNew Ageリバイバル系アーティストの中では一番柔らかな音楽家もしれません。

Sarah Davachi / Two Sisters

Sarah Davachi / Two Sisters

カナダ出身、ロスアンゼルスベースの実験音楽家による17枚目くらいの作品。パイプオルガンやカリヨン、その他弦楽、トロンボーンなど様々な楽器を使ったDroneが聴ける。Drone音楽の多くがそうだけれど、音のゆらぎを聴くような瞑想的な時間になりがちだけれど、彼女の作品はミニマルだけれど、僅かなメロディーが美しい。

Sault / Untitled (God)

Sault / Untitled (God)

イギリスのFunkバンドの11枚目のアルバム。2022年、彼らは計6枚のアルバムを発表するというメチャクチャなハイペースで活動している上に、そのうち5枚は連続リリースでしかもNYPとういう意味の分からないサービスっぷり。内容もそれぞれにコンセプトが違ってクオリティも非常に高かった。特にこの作品は21曲という大ボリュームに広いジャンルをカバーした内容になっていてとても充実していた。

Soccer Mommy / Sometimes, Forever

Soccer Mommy / Sometimes, Forever

アメリカはナッシュビルのSSWによる3rdアルバム。プロデュースはOneohtrix Point Never!これは期待しないほうが難しい。OPN要素は余り感じられませんが、ベッドルームポップを拡張したような雰囲気と、耳に残るボーカルメロディーが秀逸。

Special Interest / Endure

Special Interest / Endure

アメリカはニューオリンズのNo Waveバンドの3rdアルバム。No Wave Punk、Industrialなどを織り交ぜたハイテンションなアルバム。Punkとダンスミュージックは相性が良いんだぞ、というのを肌で感じる事のできる良作。

Stella Donnelly / Flood

Stella Donnelly / Flood

オーストラリアのSSWによる2ndアルバム。ピアノやギターのシンプルな構成と音数の少なさが、彼女の歌を軽やかにしてくれている。メロディーも親しみやすく、低音の少なさが緩さのようなものを生んでいる。

Sudan Archives / Natural Brown Prom Queen

Sudan Archives / Natural Brown Prom Queen

スーダン出身、アメリカ、ロスアンゼルスを拠点とするSSW、ヴァイオリニストの2ndアルバム。DQNさが減じてアートポップに近いかたちで昇華されたアヴァンギャルドなR&Bに、ワールドミュージックのエッセンスを織り交ぜた素晴らしく個性的なタペストリー。18曲の色とりどりな音楽に飽きることなく酔えます。

Two Shell / Icons

Two Shell / Icons

イギリスのダンスミュージックシーンに颯爽と現れた覆面デュオによるEP。UKアンダーグラウンドと言うととっつきにくそうな雰囲気があるが、ハイパーポップを経由した徹頭徹尾ポップでキャッチーなベースミュージック。音楽そのものに集中して欲しいということで、様々なメッセージを削除して匿名性を重視しているところなど謎が多いが、今後アルバムが楽しみなアーティストです。

Ulla / Foam

Ulla / Foam

アメリカのアンビエントアーティストによる6枚目くらいのアルバム。Glitch、Ambient、Electronica、こういった90年代後半から00年代を風靡したジャンルを表す言葉がしっくり来る儚く美しい音楽の数々。ここ数年の70~80年代リバイバルがオーバーグラウンドで活躍する中、最新のサウンドはいよいよPost-RockやElectronica、Glitchがリバイバルされるのではないかと密かに期待しています。

Weyes Blood / And in the Darkness, Hearts Aglow

Weyes Blood / And in the Darkness, Hearts Aglow

アメリカはカルフォルニアのSSWの5thアルバム。コロナは音楽家たちの活動のあり方を変えた。それは様々な形で制作現場、または音楽に対する姿勢を今一度アップデートさせるものになったはずだ。このアルバムは優しく包み込むようなドラマティックな音楽が中心になって我々の生活を包み込むような包容力を持っている。一曲ずつにある音楽は世の中を肯定するようなポジティブなパワーを内包している。

Yaya Bey / Remember Your North Star

Yaya Bey / Remember Your North Star

アメリカはワシントンを拠点とするSSW、1stアルバム。落ち着きのあるジャジーなR&B、Hip-Hopを中心としたスムースな楽曲はアコースティックな温かみのある楽曲は黒人問題を中心とした様々なマイノリティの人種の思想が深く絡み合っている。しかし私は所詮マイノリティの中で更に下にゲロがたれてくる黄色人種としてその活動の価値判断は上手くできない。ただ彼女の音楽が心地よく、人の心に寄り添ってくれるのはわかる。

yeule / Glitch Princess

yeule / Glitch Princess

シンガポール生まれ、ロンドンを拠点とするSSWの2ndアルバム。前作のサイバーパンク風のエレクトロニック・ミュージックをより抑制し、実験的なでパラノイア的に変革したの今作です。彼女のビジュアルはサイバーゴスといった個性的な見た目をしており、これがなんだか癖になるいい感じの可愛さなのも魅力的。メンタルヘルス、ゴシック、サイバーパンク、こういった要素がフェティシズムによって徹底的にコンセプチュアルにまとめられている。生き方がそのフェチをより強固なものとしている。魅力的な女性。

700 Bliss / Nothing To Declare

700 Bliss / Nothing To Declare

いよいよリストの最後、前述のMoor Motherとニュージャージー出身のDJ Haramによるユニットのデビュー・アルバム。Moor Motherの攻撃的な側面が全面に出たタフなアルバム。ノイズ、パンクと言ったエッジの効いた要素の集合体。ファイトスタイルで向かう事象をぶっ飛ばしてくれるようなエネルギーがあります。

とまあ、私のベスト50はこんな感じになりました。思えばこの作品も紹介したい。こっちも良かったなぁと無限に悩める方策の2022年だったように思います。アルバム・オブ・ザ・イヤー、大幅に遅れたけれど、2023年もみんなでいろいろこいつは良いぞ、などと言い合って知見を広げていきたいですね。あー、音楽は良いぞ。

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