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ピアノ×ベースが最高だな、って感じるジャズデュオ3選

いきなり結論

ピアノとベースというのは、ポップスやジャズを演奏する上で最も相性の良いデュオ編成であり、お互いの短所を補い合える最も完成された最小編成であると考えています。

…っていうほどジャズデュオなんて有名ではないですよね。それって僕の感想ですよね、というのが正直なところなんですが。

実際のところ、ジャズの最小編成で有名なものはピアノトリオです。
ピアノとベースの補完関係に加えて、ドラマーが楽曲に彩りとアクセントを加える形式は完璧であり、ジャズやポピュラーにおいてほとんどの表現を網羅することができ、少ない人数で最大の表現をする、というスタイルはあらゆるリスナー、プレイヤーを魅了するものだと思います。

ピアノとベースの補完関係について

まず、ジャズの主成分ともいえるスウィングは、ベーシストによるウォーキングのベースラインがその根本となっています。そこに打楽器でもあるピアニストの左手コンピングで、極端に言ってしまえばスウィングは完成します。
そこに、ピアニストの右手によるメロディで曲として成立してしまいます。

そしてこのデュオの良いところは、ベーシストがメロディを奏で、ピアニストが左手でウォーキング、右手でコンピング、というような役割の交換もできることです。

加えて、ピアノの持つ打楽器的な性質によって、2人でリフレインを繰り返すようなリズミックでファンクなアプローチもお手のもの。
さらにコントラバスであればボウイングによる持続音も発音でき、ピアノのサステインペダルだけではできない表現もでき、バラードのような隙間の大きい演奏を支えたり、対旋律を奏でたり、ベースひとつで表現は大きく広がります。

このように、音楽を構成する役割を全て2人だけで完結することができ、かつ、その役割を入れ替えて曲を展開させていくこともできる。
こんなペアはそうそう存在しないのではないかなと思われます。

※ちなみにこれは奏者2人が最高レベルの演奏力を持っていると仮定した場合です。
僕はボウイングも、テーマをとることも満足にできませんし、そもそもサウンドを1人でスウィングさせることもままなりません。ご承知おきくださいませ。


さて、さんざん僕のロマンを語らせていただいたところで、「ピアノとベースっていいよな」って思えるデュオを3つご紹介させていただきます。


Carla Bley & Steve Swallow

ボウイングが云々、などと言っておきながらいきなり「エレキベース」を出してしまい誠に恐縮です。
でもね、スティーブ・スワロウのエレキベース(しかもピック弾きです)は本当に美しいんですよ。テーマで全音符を奏で続けるそのプレイは、カーラブレイのピアノの影のよう。それでいて、ソロは煌めくように美しい音色。

lawnsというこの曲はカーラ作の代表曲ですが、「芝生」ってどういう意味なんでしょうね?

スティーブスワロウとカーラブレイは公私共にパートナー関係であり、そんな背景もこの演奏にいくばくかの親密さを感じてしまいます。

Kenny Drew & Niels-Henning Ørsted Pedersen

ニールスペデルセンの寸分の狂いもない正確なリズムと音程は、フレットの打たれたコントラバスを演奏しているの?という冗談も冗談に聞こえなくなるほどの末恐ろしさすら感じます。そこに、ケニードリューの少し影のある、ステレオタイプな黒人ピアニストのような演奏でなく、どこか陰鬱でぼやけたフィルムカメラのような演奏に、きっちりピントのあった、タッチも音程も全てが完璧なベースがグイグイと場を引っ張っていく。オスカーピーターソンとのデュオよりも好きです。

どちらかというと役割の多さからピアニストが主体となることの多いデュオですが、これはどちらかと言えばベースが引っ張っていっている数少ない例ですね。

Keith Jarett & Charlie Haden

キースジャレットのピアノはとびきり美しくて、景色が浮かぶような解像度の高さと、くどさのないストレートな表現はがとても耳馴染みが良くて、素直に感動できます。すでに完成しており、他の楽器が必要とされるような余地はないように感じますが、唯一、このチャーリーヘイデンのずしっと沈み込んで地を這うようなコントラバスは、楽曲に安心感をもたらしてくれます。まるでチャーリーヘイデンのベースだけでも楽曲が成立するかのような安心感。キースもきっと安心して演奏ができるのではないでしょうか。
これぞ、デュオの理想的な形のひとつといえます。

まとめ

デュオ演奏に限らず、ピアニストとベーシストには名コンビをよく見かけますね。します。ビルエヴァンス/スコットラファロ、オスカーピーターソン/レイブラウンなど。
ジャズバンドにおける核となるこのコンビだけを取り出したこのスタイルは、いわば、出汁の味だけを楽しむような味わいかた、といえるかもしれませんね。


 

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