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カミナシがAIスタートアップを子会社化した理由 ~現場SaaS×AIの未来~

こんにちは、カミナシの河内です。
ニュースリリースにあった通り、カミナシはAIスタートアップである株式会社StatHackの株式を取得し100%子会社としてグループにジョインいただきました。

今回はカミナシからの視点でM&Aに至った背景を書きたいと思います。
(StatHackの詳細はCEOの松葉さんがnoteで公開してますので、こちらをご覧ください)

StatHackについて

まずはじめに、StatHackについて紹介します。

StatHackは、東京大学松尾研究室発の AI スタートアップです。
製造業向けに画像認識AIを中心としたシステム開発をおこない、研究の知見をビジネスの実践に移してきました。

金属パイプ製品の検品を行う外観検査AIの事例

松尾研究所でチーフAIエンジニアを務めるCEO松葉さんを中心に、非常に優れた技術を持つメンバーが集まっているチームです。彼ら自身もスタートアップとして成長しており、これからのスケールも見え始めているという状況でした。

M&Aに至るまでの経緯

偶然の出会い

きっかけはCoral Capital主催のStartup Aquariumに講演を聞きにきていたCEO松葉さんとたまたまブースで会話をしたことでした。

松葉さんはAIエンジニアとして高い技術力を持ちながらも経営者として素晴らしい事業を立ち上げており、若くしてすでに高い視座と長期視点を持たれていました。
純粋に何かに一緒に取り組みたいと感じたとともに、彼らの技術によって現場がどのように変わったかを知り「現場の未来を大きく変えられる技術に違いない」と強く記憶に残ったのを覚えています。

その後、別の機会に設けたミーティングの場で何らかの形で協業・提携していけないかという打診を行い、何度も対話を重ねる中で最終的に世の中に対して最もインパクトが出せる形として、100%株式を取得する結論にいたりました。

StatHackの売上はこの1年で前年度対比で5倍に伸びており、すでに大きく黒字化を達成しています。こうした勢いのある会社の場合「自らやる」という選択肢を取ることも多いはずです。CEOの松葉さんもその可能性を常に持たれていました。
お互いの理解を深める中で、結果的に「仲間になる」という選択をしてくれたのは、私たちにとっても幸運なことでした。

M&Aに至った背景

カミナシは既存のプロダクトが一定のPMFを達成し、第二、第三の矢を作っていくフェーズです。経営陣の中では以前から「自社が持たない技術的なケイパビリティを持つ」もしくは「自社との親和性のあるプロダクトを持つ」スタートアップのM&Aは1つの選択肢にあがっていました。

過去に数社のスタートアップと条件面も含めた具体的な検討をしたこともありました。ただ実際に条件面含め双方の利害が一致し、事業シナジーやカルチャーマッチも含めたPMIのイメージを持てるスタートアップと出会えるケースはなかなかありません。

そんな中、日本を代表する大手企業をはじめ、現場を持つ企業向けにわずか2年で多くの取引実績を作り、優秀なメンバーが揃うStatHackのグループへの参画はカミナシにとって短期間で新しいケイパビリティを獲得できる絶好の機会でした。

StatHackの視点では、ちょうど受託開発モデルからSaaSモデルへのビジネスモデルの転換を進めていたタイミングであり、新プロダクトのβ版を開発していたところでした。
しかし、受託開発で得たキャッシュをもとにビジネス組織を0から構築し、プロダクトをスケールさせていくためには多くの時間と労力を要します。
StatHackにとってはカミナシのリソースや顧客基盤を使い、強みである技術を世の中に広められることはメリットのある選択肢でした。

早速ですが、本日StatHackとして初のSaaS「Count AI」をリリースしています。出荷前製品の目視検査をAIが効率化してくれるAI SaaSです。
β版の段階で鉄鋼やパイプ業界を中心にすでに複数社での導入が決定しており、これからカミナシの顧客基盤を活かしながら対象業界の拡大を目指していきます。

近しいミッションとカルチャー

「ミッション・ビジョン・バリュー」をセンターピンにおいた経営を行っているカミナシにとって、お互いのカルチャーやミッションに親和性が高かったことも意思決定をする上で大きな理由になりました。
StatHackは「業界最高のUXでソフトウェアを提供し、働く人の幸せを達成する」というミッションを持ち、製造業を中心にAIを活用したシステムを提供してきました。一方でカミナシは「ノンデスクワーカーの才能を解き放つ」というミッションのもと、さまざまな現場にSaaSを提供しており、目指す世界は共通しています。

また、カルチャーもお互いに「現場に泥臭く足を運ぶ」ことを大切にしていたり、「最先端の技術を、レガシーな現場に実装することにワクワクする」など共通するものが多く、M&Aのアンチパターンとしてありがちなカルチャー融合の失敗というケースも心配する必要がありませんでした。

現場SaaS×AIの未来

9月にサンフランシスコで開催された世界最大のSaaSカンファレンスであるSaaStr Annualに参加してきました。

その中で感じたことはAI×SaaSをテーマにしたセッションやブースが想像を遥かに超えて多かったということです。日米との温度差を肌で感じました。

BessemerによるとThe Cloud 100に入るSaaS企業のうち過去8ヶ月だけで55%の企業がGenerative AIを取り入れた新機能や新プロダクトとしてリリースしたそうです。また、何らかの形でAIをプロダクトに活用している企業は全体の70%を占めます。それくらい米国ではSaaS企業がAIを取り入れる流れは、極めて早いスピードで進んでいます。

その中でもアナログな作業が日々行われているノンデスクワーカーが働く現場でAIを活用することによるのびしろは計り知れません。

特に相性が良いのがStatHackが得意とする技術である画像認識技術です。
多くの業務システムは、CSVのように表形式で表現できる「構造化データ」を取り扱うことに長けています。

一方で現場で取得できるデータの大部分は画像や動画、音声を中心とした「非構造化データ」です。ゆえに、現場のデータ活用は進んできませんでした。

しかしAIを使えば、これまで活用が難しかった画像などの非構造化データから意味のある情報を抽出できる可能性が見えてきます。現場に眠っている膨大な非構造化データが宝の山になりうるわけです。

まずは「モバイルデバイス×画像認識AI」から取り組んでいきますが、中長期的には動画や音声など現場に存在する様々な非構造化データをAIで活用できるように進めていきます。

またGenerativeAIをはじめ、テキスト以外の領域でもAIの技術革新が直近1〜2年で急激に進んでいます。これらの技術を活用した新たなイノベーションの創出も検討を進めていきます。

AIはノンデスクワーカーの働き方をどう変えるか

もちろんAIはどんな課題も解決してくれるような魔法の杖ではありません。
例えば、100%の精度が求められるワークフローの中で活用することが難しかったりと、適用する業務によって向き・不向きがあります。
そのため、AIの役割は人の仕事を代替することではなく、人の仕事をサポートするパートナーになることだと考えています。

StatHack CEOの松葉さんが「AIは五感を強化する」という話をしていました。私がイメージする未来は「AIがノンデスクワーカーの能力を拡張する世界」です。
現場で働くノンデスクワーカーがカミナシのインターフェースを通じて、蛇口を捻るように簡単に最先端の技術にアクセスし、イノベーションを享受できる。それによって、ノンデスクワーカーが本来持っている才能や創造性が発揮される世界。
こんな世界をStatHackのみなさんと一緒に作っていきたいと考えています。

懇親会でStatHack松葉さんがカミナシメンバーにプロダクトのデモをする様子

今回は以上です!

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