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バンクーバーのクリスマスあれこれ

ご挨拶

2022年12月25日。クリスマスに初回の記事を書き始める人もなかなか珍しいと思う。

いま、私はカナダのブリティッシュコロンビア州、バンクーバー(Vancouver)に滞在している。2010年に冬季オリンピックが開かれた場所だ。永住権は8年前に取得。日加を行ったり来たりはしたものの、合計すれば11年ぐらいはバンクーバーに滞在している。

珍しく豪雪のクリスマスシーズン

23日までは今シーズン2度目の雪が降り、しかもバンクーバーとしては珍しい、積雪40cm程度になった。カナダは雪と氷に閉ざされた国ではない。西海岸のバンクーバーは気温が大して下がらす、基本的には1シーズンで一度か二度うっすらと雪が積もって終わりのことが多い。今年が例外なのだ。カナダは雪だらけというステレオタイプをお持ちの方には驚きであろう。しかし気温が下がり切らないということは、降ってくる水が凍らないということだ。冬は雨が多いので、バンクーバーの別名はRaincouverである。なお、バンクーバー国際空港の空港コードはYVRであるが、これはYes, Very Rainyの略だと揶揄される。

雪ダイブ後。バンクーバーでここまで雪が降るのは極めて珍しい。

さて、珍しく大雪となったバンクーバーだが、24日からの雨によって、雪は溶けてゆき、ホワイトクリスマスではなく、溶け残りの雪でドロドログチャグチャ灰色クリスマスになってしまったのが残念だ。

ちなみにこのような水分を多く含んだ、半液体状の雪をslushという。形容詞系はslushyである。車を運転する際は歩行者に飛ばさないように、そして車がハマらないように注意が必要がある。また、日本だとあまり無いように思うが、このような状態のフローズンドリンクをslushyとも言う。(店によってはslushやslushieという表記もある。) コーラ味とか、フルーツ味とかが色々あるので、カナダにお越しの際はセブンイレブンで試していただきたい。

クリスマスでも街中に人はいる

ところで、欧米のクリスマスと言えば、家族と過ごす休日であり、また朝から家でディナーの準備をするので、街中から人が一切消えるというような話を聞いたことがあるかもしれない。しかし、現地に住んでいる私からすれば、別にそんなことはないのが実情である。

というわけで、25日当日にダウンタウンに出かけ、街の様子をレポートしてみることとする。また、翌日26日のボクシング・デイ(Boxing Day)の様子も併せてお楽しみいただければと思う。

さて、こちらはダウンタウンの中でも特にメインストリートであるロブソン・ストリート(Robson Street)とバラード・ストリートの交差点である。

欧米のクリスマスだから人が歩いていないというのは100%真実ではない。

どうだろうか。普通に人が歩いている。確かに普段の週末よりは若干人が少ないようには思うが、無人ではない。360度見回しても無人の場所を見つける方が逆に難しい。車も普通に走っている。

ただ、飲食・小売ともに店はことごとく閉まっている。チェーンの飲食店の一部は時短営業ながらも開いていて、その他は、キリスト教に関係なさそうなアジア系の店が希に開いている程度。開いている店はむしろ大混雑だ。

考察

一般的なイメージで語られるよりも多くの人が歩くクリスマスのダウンタウンだが、しばらく街を歩いて気づいたことがある。白人はあまり出歩いていないこと。また子連れの家族も歩いていないということだ。

ダウンタウンには一軒家はほとんど存在しない。あったとしても歴史的建造物に指定されていることが多い。その代わりにアパートやコンドミニアムが立ち並ぶ。古いものはどんどん再開発されてコンドミニアムになり、ガラスの街になってゆく。工事がされていない箇所は存在しないのが現在のダウンタウンである。ちなみに、地震はまず起こらないので、最新のコンドミニアムは「柱、床(兼天井)、ガラス、以上!」というような、日本人目線からすればなんとも乱暴な建て方のものが多い。(個人的に勝手に「えぐれビル」と呼んでいる、下が細くて上が太いという、見る者の不安を煽りまくるコンドミニアムもあるので、こちらのストリートビューより見てみてほしい。)

バンクーバーのダウンタウンの中でも、前述のバラード・ストリート以西ならびにウェスト・ジョージア・ストリート(West Georgia Street)以南はウェストエンド(Westend)と呼ばれる。少し前の話で恐縮ではあるが、私が2004年に語学学校に通っていたときに先生が説明してくださった話によれば、このウェストエンドは、ニューヨークのマンハッタンに次ぎ、北米で2番目に人口密度が高い場所ということだ。全体としての順位も18年経過すれば上下はあるだろうが、当時から比べればコンドミニアムも増えた(すなわち同一面積により多くの人が居住できる)ため、絶対的な人口と人口密度はさらに増加していることは間違いない。

このようにとにかく人がギッシリ詰まっているバンクーバーのダウンタウンであるが、一軒家はほとんど無く、アパートやコンドミニアムばかりである。そして、そのような集合住宅も、1ユニットに1家族が住んでいるだけではなく、主に留学生がシェアハウスで住んでいることが多い。貸主としても、1家族に1ユニット丸ごと貸すよりも、中・短期滞在の学生や労働者に部屋ごとに貸した方が全体として家賃収入が多くなる。そういう入居者は家具を用意するのが困難なので、貸主が家具を用意するが、IKEAで安く家具を揃えれば初期投資などすぐに回収できる。(ひどいところはリビングルームを衝立で仕切って、生活音や光ダダ漏れで生活させてまで家賃をむしり取っている。さらにひどいと、リビングルームをさらに分割して2人住んでいる。プライバシーも尊厳もへったくれもあったものではない。)

このような住宅事情からすると、クリスマス当日に朝からきちんとディナーを準備するような層、つまり、白人で、カナダ生まれで、クリスチャンで、子供がいるというような「いわゆる家族」は比率として少ないということだ。また、いたとしても親世代は郊外に住んでいることが多く、(子供がいなかったとしても)そちらに集まってクリスマスを祝うのが普通だろう。バンクーバーのダウンタウンには公立高校は1軒しかない。その高校には5学年(8年生から12年生 = 日本の中学2年から高校3年相当)で500人しか生徒がいない。郊外なら5学年で1,700人程度の生徒がいる高校があることからも、子供がいる家族はダウンタウンには少ないことの何よりの証明である。

つまり、何が言いたいのかというと、巷でよく言われる、クリスマスは家族で過ごす休日であり、欧米のクリスマス当日は街がゴーストタウンになるというのは、必ずしも真実ではないということだ。ひっそりとする街や場所はもちろん存在するが、それは住民の性質によるところが極めて大きい。バンクーバーのダウンタウンでクリスマス当日に歩いているのは、そのほとんどが、カナダに家族がいない留学生や外国人労働者だと推察される。このような、実際に住んでいるからこそわかることを、今後も配信していければと思う。

クリスマスツリーと寄付

クリスマスに小難しい話ばかりしていてもしょうがないので、街の様子を少しお楽しみいただければと思う。

ダウンタウン美術館裏にて。

こちらはダウンタウンのクリスマスツリー。写真を撮る人で結構混み合っている。ちなみに写らないように配慮はしたが、この写真の左側、美術館側ではアラビア語の垂れ幕と旗を掲げて、何やら主張している団体がいた。

奥に見える城のような建物はフェアモント(Fairmont)・ホテル・バンクーバー。フェアモントと言わずとも、ホテル・バンクーバーと言うだけでこのホテルを指すという、名実ともにバンクーバーの象徴となるホテルだ。中に入ってみよう。

ロビーにて。

クリスマスと言えどもホテルは年中無休。レストランも開店しており、華やいだ雰囲気がロビーに漂っている。

ちなみに上の写真のツリーの星、ツリーの大きさに対して何ともアンバランスだと思わないだろうか。なんとこの星、シャンデリアである。このホテル、通年そこにあるものをベツレヘムの星に仕立て上げるというウルトラCをやってのけるのである。

各企業・団体提供のツリーたち。

ちなみにツリーはこれだけではない。ロビーを見渡せば、至るところにツリーがある。いや、むしろ多すぎる。実は、様々な企業や団体が提供したツリーでホテルのロビーが埋め尽くされているのだ。

ここに決めた。

なんと、ツリーの提供企業・団体に5ドル寄付することにより、どのツリーが良いか投票することができる。私もひとつ寄付してみようと全てのツリーの提供元を見た結果、BC Children's Hospitalに寄付することに決めた。子供の健康は国の未来と同義である。

テキストメッセージ(日本で言うところのショートメールだろうか?)で、本文TREE108(つまりこれがツリー固有番号)を45678宛に送ると寄付ができる。早速送信してみたら、寄付をするならYESと返信するようにと指示があった。寄付は次の電話代に併せて請求されるとのこと。YESと返信。10秒かからずに寄付が終わった。てっきりクレジットカード払いリンクが送信されてくるものだと思っていたので、このシステムにはいたく感銘を受けた。

ただ、電話代に請求するということは、カナダの電話会社でないと難しいだろう。ホテルという場所である以上、外国人宿泊客もそれなりにいるはずだ。カナダ国外の電話番号からテキストメッセージを送ったらどうなるのかが気になるところだ。カナダの電話番号でなければ自動検知され、クレジットカード支払いリンクが返信されてくるのだろうか。特にアメリカの番号。カナダとアメリカは国番号は+1、そして3桁の市外局番と次いで3桁・4桁の番号で、両国で共通なのだ。

展望台の上にもうひとつの大きいツリー。

先程の美術館裏のツリーに加えて、ダウンタウンにはもうひとつ大きいツリーがある。ハーバー・センター(Harbour Centre = イギリス英語なので両方ともスペルがイギリス英語)のてっぺんだ。円型展望台と、尖塔の先端に電飾を張り、ツリー様に仕立て上げている。美術館裏のツリーとどちらが大きいのか、ここ数年の疑問だ。

クリスマスシーズンといえば赤カップ。

その後、数少ない営業中の飲食店、すなわちスターバックスにてコーヒーを買い求め、自宅に戻った。バリスタさんも早く帰ってクリスマスを噛み締めてほしいものだ。

ぶん殴りデー、ではない

さて、一晩明けて26日だ。この日はボクシング・デー(Boxing Day)と呼ばれる。ボクシングではあるが、ぶん殴る日ではない。元々は、貧しい人のために寄付を募った教会が、プレゼントを箱、つまりBoxに入れて送ったことからBoxing Dayとなった。

現代では、この日は大きくバーゲンセールが行われることでも有名だ。ただし、近年でも日本でも知られている11月末のブラック・フライデーの方が重要性が増し、ボクシング・デーの需要は下がっているとも、どこかで聞いた記憶がある。そりゃそうだ。クリスマスプレゼントのためにしこたま金を使いまくった後に、セールだと言われても買うものなど無い。

近年はボクシング・デーどころか、ウィークになっている店も多い。26日に客が殺到するよりも、数日間に分散して客が来てくれた方が、従業員側の負担も少なくなるというものだ。

そもそも、ここ数年で、我々の買い物スタイルは大きく進化した。そう。コロナウイルスの蔓延である。数年前までなら、ボクシング・デーにはどこの店も店外まで行列ができてしまうぐらいだった。しかし、外出や他人との接触が制限されたことから、買い物スタイルがオンラインショッピングに移行しているのは確実だ。オンラインでしか売らないメーカーが、特にファッション関係で増えていることに気づいている方も多いだろう。

バンクーバーといえばのルルレモンも大混雑だが、店外まで行列ができるというほどではない。

ボクシング・デーの重要性がブラック・フライデーに対して下がっていること、そして人々の買い物スタイルがコロナで変化したことにより、店外まで入店待ちの行列をしている店は2軒ほどしか見かけなかった。しかし、ひと昔前であれば、ブランド物の店舗ですら、店外まで行列ができていることがあった。サルヴァトーレ・フェラガモでそのような光景を見たことをはっきり覚えている。ブランドが台無しである。ブランド物は、買えないからこそブランド物なのだ。

ちなみに私は、厳選された少数の物だけ持ちたいので、こういうセールに釣られて物は買わないようにしている。

さて、あと数日で2023年。どのような年になるだろうか。

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