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バトンを渡すだけでなく、種を蒔くだけでなく

アクセシビリティカンファレンス福岡が閉幕しました。参加者、関係者、すべての人に感謝を申し上げます。

本当に、心からありがとう。

伝えたいことが山ほどやって、言葉が渋滞しています。ここにたくさん書き留めておきたいところですが、既にいくつかお話しをしたり、書いたりする機会を頂いているので、またそのときにお伝えしたいと思います。

今回は、このイベントを開催できたことをほんの少しだけ分析して、これからのことを書き記しておきたいと思います。

手にあったバトン

思い上がりと思われるのは承知の上ですが「アクセシビリティカンファレンスを福岡で開くのは自分しかいない」と本気で思っていました。もしも他に考えている人がいたとしても、僕の持っている熱量には誰も敵わないだろうと。

そして僕の手にはバトンがあるとも思っていました。我流さんをはじめ、福岡で今までアクセシビリティにまつわるイベントを開催してきた人と多く交流してきたし、アクセシビリティに限らずともイベントの大切さや効果などを多くをその現場から学んできたという自負があります。そのバトンは手にあって「あ、走ってもいいんだ」「いや、むしろこれは走らないとまずいのでは?」と、誰かに追い抜かれるというプレッシャーがあるわけではなく、誰かを追い抜きたいということもないのですが、手にバトンを持っている感覚が「走れ!お前の思うように好きなだけ走ってみろ!」と言われた気がしたんです。「そこに山があるから」ならぬ「手にバトンがあるから」という理由です。

走れと言われて走れるか、走りたいと思ったところで走れるかというのは別問題ではあるものの、これもまた、走れる自信がありました。カンファレンスの運営経験はあったし、登壇の経験も、一般参加の経験もあったので、誰が何を求めているのか、欲しがっているのかも嗅覚が備わっています。小さい規模でも配信経験やUDトークの活用など、必要な知識や経験も、「ちょっと頑張ればできそう。まあ、なんとかなるやろ」と自信があり、走るイメージ、ゴールテープを切るイメージができていたんです。

開花していた種

そして大事なポイントは、登壇できる有識者や専門家のレベル、参加者のモチベーションが過去最高に盛り上がっていて「今走り出せ!」と背中を押されたのもありました。

かつて東京から持ってこられた種が福岡に蒔かれ、それが開花し、それを専門、得意分野とする人が何人も生まれたこと。専門にはせずとも常にそれを考えられるようになったり、当たり前に無意識にやっている人が増えたこと。生業ではないのに当事者意識を持って関心を向けてくれる人が現れたこと。

それらが必然的に、でも奇跡のように、重なった結果生まれたのが、今回のアクセシビリティカンファレンス福岡だったと思います。

つぎはどうする

これを継続するにはどうしようと考えました。継続することをプレッシャーに感じているわけではありません。「続いたら面白いなあ」程度です。でも、それでも、自分以外にも「続いたら嬉しい」と思う人がいるなら、続ける方法を少し考えてみたいと思うんです。

僕は勝手にバトンを想像し、勝手に受け取ったと感じていただけなので、それを無理矢理誰かに渡して「じゃあ、次はあなたね、ほなさいなら」ということはしたくありません。それはその時点で、僕らが受け継いだ何かをすでに欠いています。だからバトンを渡すんだけど、渡すときに、何を一緒に渡すのか、どう声をかけていくのかが重要かなと思っています。単に渡すだけではなく、先回りして環境整えておく、種を蒔いておくこと、受け取って走れる状態にしておくことも大切です。

継続するには、1から1にバトンを渡すことも必要な要素ですし、種をたくさん蒔いて開花に期待することも良いアプローチだと思います。しかし、あともうひとつのアプローチとして「バトンを増やす」「感染させる」というのがありなんじゃないかと思ったのです。それが他でもない「アクセシビリティカンファレンス名古屋」ですね。

福岡は僕しかいないと思っていましたが、僕と同じもしくは僕より情熱を持っている人がいるなら、絶対にやってほしい。だからと言って地域の異なる場所を任せるのも違うので、ならいっそ、この手に持っているバトンを増やして、彼に渡してしまえばいいのです。そしてそれは感染するように広がってもいい。

来年の福岡は言い出しっぺとして実行委員長を継続しますが、再来年はどうするかはわかりません。開催しないかもしれないし、開催するかもしれない。手元にバトンを持ったままでも、走れないなら無理に走る必要はありません。そして、たとえば今回のカンファレンスを見た人が独自でまったく別のイベントを立ち上げるのは大歓迎で、それは僕が蒔いた種が開花したことを意味しますし、そのときにはバトンは勝手にその人の元へテレポートするのだと思います。

いろんなことを経て、結果的に誰か胸に届けばなんだっていいのです。

今回のアクセシビリティカンファレンス福岡2023が、アクセシビリティの、デザインの、福岡のイベントの、九州のイベントの、日本のイベントの、世界のイベントの、歴史の中で閃光したことは事実なのですから。

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