ようこそ、絶望の谷へ
去る2月17日「WAI-ARIA勉強会」を開催した。内容に関してはYouTubeのアーカイブやTogetterのまとめを見ていただくとして、主催として振り返りというか反省というか純粋に感想を綴りたいと思う。なお、技術的な補足は今回は書かないのでご容赦を。
今回の勉強会はの元々のキッカケはZennに投稿した記事から始まる。
アクセシビリティのチェックやアドバイザリー業務をやっている中で、やはり頻繁に遭遇していた間違ったARIAの使い方。自分がARIAを知ったころを思い出し、なんで間違うんだっけ?っていうのから組み立てて構成した記事だった。結局のところ「仕様を読もう」と言ったところで「仕様の読み方がわかりません」というのに突き当たる。ナナメ読みをしてしまうとどうしてもわかりやすいサンプルのコードの中からaria-labelだけを取り出して、わかった気になってしまうのだ。仕様が章立てされていて、その前にRoleの存在があったとしてもaria-labelを発見できた嬉しさに周りは見えなくなってしまう。
その「わかった気になってしまう」こと、つまり「WAI-ARIA完全に理解した」による悲劇をなんとかしたいとずっと悶々としてきたし、自分自身ももっと理解を深めたいというのもあって、開催したいと思い至ったわけだ。
WAI-ARIAなにもわからない
このゴール設定は実はちょっと後付けで、今回「仕様ディープダイブ」をお願いしたもんどさんと内容を確認しているとき
「上級向けすぎると、みんなが置いてけぼりになるね」と言われたんだけど(もんどさん優しい)、そのときにハッと気づいたというか思い出したというか、
「置いてけぼってもいいです!」と答えた。そう、これは自分自身ももっと理解を深めたい勉強会のはずだ。極振り上等。それに、きっとそっちの方が楽しい。楽しいはずなのだ。
自分がエンジニアとして駆け出し始めた頃から、いろんな勉強会に参加する中で、一番楽しかったことは自分の知らなかったことに出会えたときだ。
当日の配信中にたじまさんが、本当にこれ!これが言いたかったの!というツイートをしてくれた。勉強会やセミナーからしばらく経って、記憶の片隅に残ったふわふわな知識が、急に輪郭を帯びて役に立ち始める…!かどうかはわからないけど、勉強会やセミナーはキッカケにさえなれば充分なのだ。
とは言っても、何も宣言せずに始めてしまって、参加者がだんだんついていけなくなって心が折れていく可能性があるのも事実。そのまま開催して脱落してしまった人が「あれはただただ難しい勉強会だった」という印象だけが残るだけなのはもったいない。だから急遽ダニング=クルーガー曲線を持ち出してネタとして扱うことにした。「WAI-ARIAなにもわからない」は誰かがひとりは絶対ツイートすると思っていたし、どうせならみんなで一体感を感じてもらうのもライブ配信の醍醐味とも思ったからだ。結果、クレームらしいクレームもなく、むしろ好意的に「わからない」ことを受け止めてくれたようだ。狙い通り!
一気通貫なコーディネートをしたわけ
最近の勉強会はライトニングトークが主流で、それはそれで楽しいし今回もその形式を取ろうかどうかも悩んだんだけど、イベントとして全体で体系的に学べるものもあっていいはずだ。最初に基礎をやってしまえば、あとのセッションで基礎や前提が省ける点もよかったと思う。完璧にできたとは言えないけど、ツイッターの反応を見るに、各セッションで伏線回収的な効果が生まれていたことに気づいてくれた方もいて嬉しかった。
反省点として、もっとセッション内容をそれぞれ確認して調整すればもっとスムーズは流れにできたかも、とも思ったけど、
そこはさすがもんどさんのファインプレー。登壇メンバー同士ARIAとHTMLの関係性について伝えたいことが共有しなくても共通していて、心で繋がってるぜ!って感じでグッと来た。
みんな絶望の谷にいる
WAI-ARIAに限らず、アクセシビリティに限らず、何を学ぶにしてもダニング=クルーガー曲線の絶望の谷はある。一番良くないのはそこまで至らずに満足してしまうことだ。趣味なら構わないかもしれないけど業務で必要な知識だとしたら、それは真摯さに欠ける。
プロフェッショナルはみんな絶望の谷にずっといる。日々研鑽をし、日々新しい発見や発明をし、そして日々「わからない」に出会っている。「今の自分の判断は正しいだろうか」とずっと戦っている。
良くないのは、ひとりでそこにいることで、それは本当に絶望に感じてしまう。仲間をつくろう。仲間となら絶望も共有できる。
0円スポンサー
というわけで、仲間がたくさんいる場所を最後に改めて紹介したい。
0円スポンサーを募った理由も、仲間がいれば絶望の谷にいてもがんばれるし、さらに一緒に理解を深めていける。
もしもこれをキッカケに「WAI-ARIAなにもわからない」になった方がスポンサー企業のどこかで活躍するようなことがあったらマジで熱いので、もっと仲間とやっていきたいぜ!と思ったなら是非とも連絡をしてほしい。マジで1円も貰ってないけど、それが叶ったなら本当に飛び上がるくらい嬉しい。本当に、ホントに、連絡してね。連絡するんだ!連絡しろ!
ほかに企業でなく仲間のいるコミュニティも紹介しておくと、
ウェブアクセシビリティ Discord (@ME_TKS_主催)
があるので、気軽に参加してほしいと思う。
次は…
まだ何も決まってないけど、少しずつ計画して、開催に臨めたらいいなと思う。きっと「Alt完全に理解した」から「Altなにもわからない」になること請け合いだ。