Moon River by Audrey Hepburn

昨日、東京の虎ノ門ヒルズで行われているTiffany Wonder展に足を運んだ。これはあのジュエリーブランドのティファニー社の大規模な展示会で、じつに500点ものアイテムをじっくりと観ることができる。

これは単なるジュエリーの展示会ではない。特別に制作された巨大タペストリーでの歴史紹介にくわえて、石留めや研磨、手彫りの職人さんの実演などもある。こうしたジュエリーの展示以外のひとつに、ティファニーの名を冠した映画「ティファニーで朝食を」のコーナーもあった。

ヒロインのホリーを演じたオードリー・ヘプバーンの衣装や小物とともに大型スクリーンで流れる映画の一場面。そこにはアパートの非常階段前の窓際でオードリーがテーマ曲Moon Riverを歌う映像もあった。

歌手ではないオードリーが口ずさむ飾らない歌声。彼女の狭い音域にあわせて作曲されたなんて話があるけど、だからこその自然さ、気取らなさが、ひとりの女性の本来の姿を浮かび上がらせている。そこにあるのは、歌手の歌声ではない、俳優の歌声の魅力とでも言うべきなにか。

ある人を想って歌う歌、思い出を振り返って歌う歌、そうしたテーマはありきたりだけど、それらをさり気なくにじませたこの曲の歌詞はこの場面のオードリーにぴったりだ。

映画の中ではティファニー社は、高級娼婦的なホリーの側面を象徴するラグジュアリーブランドとしての役割だった。しかし、この歌とオードリーのイメージがあったからこそ、ラグジュアリーなのにどこか清楚なブランドイメージが定着したのではないか。

たまたま昨日虎ノ門ヒルズで聴いたこのMoon River。歌のプロではない、市井の人びとの口ずさむ歌って、こうだよな。心を揺さぶる歌唱力や超絶技巧の演奏力はもちろん良いのだけど、これもまた素晴らしい音楽だという気づきがあった。

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