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アンモナイト

先週、門柱に使った石材について書いたら、ありがたいことにTwitterで日本古生物学会(公式)さんからコメントをいただいた。この石材にこだわったリフォーム、妻には売りにくくなるリフォームだと呆れられたのだけど、もっと自慢しても良さそうだ。調子に乗って、今回も化石の話を書くことにした。

前回の終わりに書いたとおり、寒くなる前に、洗浄とニスがけをしようと考えていた。秋まっただ中の10月下旬、今朝はさらに肌寒くなった。この週末は天候が良い。これは待っていられない。そういうわけで、門柱を洗ったら、もともとかなり薄くなっていたネームプレートの文字が消えてしまった。折角なので、文字のデザインをアールヌーボー調に変えて描き直した。頁岩の色が薄くなったので、今度は濃い緑色で。下の写真は、左から洗浄前、洗浄・ニス塗布後、そして加筆後のネームプレート。

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このアンモナイト化石入り頁岩を入手した2015年、一日一画ブログに、木炭で描いたスケッチを載せていた。その時の記録によると、このアンモナイトはダクティリオセラス(Dactylioceras sp.)。日本古生物標本横断データベースによると、結構国内に標本が収蔵されているようだ。同じドイツのホルツマーデン産のものは北大総合博物館にあるらしい。ちなみに、ダクティリオセラス属のアンモナイトは、日本の山口県と福井県からも見つかっている。

わたしがモンゴルで働いていた時、同僚の古生物学者にアンモナイトの専門家がいた。縫合線と呼ばれる、殻の表面に現れるパターンで100以上の種に分類できること、そして、示準化石として古生代〜中生代の編年に使えることなどを教えてもらった。また別の機会に、ある数学者からは、アンモナイトに見られる幾何学について教わった。そういえば、黄金比の例に挙げられているのをどこかで見たことがある。

蚊取り線香のような単純な渦巻は、アルキメデス螺旋と呼ばれる。一方、自然界に見られる渦巻模様は、対数螺旋などと呼ばれる。一巻きごとに大きくなり、相似形を繰り返すという。台風や銀河もこの対数螺旋というが、どうやらアンモナイトもそうなのだという。

また、複雑な縫合線は、海岸線などに例えられるフラクタル構造らしい。アンモナイトの縫合線は、隔壁という内部構造が表面に出たものだ。断面が見える石材では、表面の縫合線は観察できない。しかし、表面にフラクタルのパターンを持つ生物の断面だと思うと、断面に見られるアンモナイトの隔壁の中にも、どこかフラクタル的な要素を探してしまいそうだ。

門柱のネームプレートには、ひとつしか化石がないけど、門柱下部に貼り付けたジュライエローには大量の化石がある。よくわからないものも多いけれど、よく観察したら、何かの化石であることはもちろん、フラクタル構造などの幾何学的な発見もありそうだ。

幾何学で思い出した。最初のリフォーム時。淡い期待を抱き、ダメもとで、始祖鳥で有名なゾルンホーフェンの石材を取り寄せたのだった。残念ながら、化石はない。その代わりに、二酸化マンガンが染み込んでシダ状のパターンを示す通称デンドライトが、石材の周辺部に確認できた。このゾルンホーフェンの石材は、結局外構のリフォームに使うことはなかったので、放置していたのだけど、門柱の掃除をする際に見つけた。あらためて見ると、デンドライトもきっとフラクタルだ。

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化石が入っている石灰岩は、風化に弱いので、もともと内装向きではある。むしろ、墓石などに使う花崗岩などの火成岩の方が、外装には適している。火成岩は火成岩で、岩石組織や鉱物が観察できて楽しい。火成岩にせよ堆積岩にせよ、石材を使うことは、特に子供のいる家庭にとっては教材にもなり一石二鳥だと思う。見た目もだけど、わたしが石材にこだわった理由には、実はそうした教材としての側面もある。子供たちには、化石の話はしているけど、幾何学の話はまだしていない。

外構のリフォーム時に聞いた話だけど、最近はそもそも石材を使わないことが多いらしい。特に、郵便受けや宅配ボックスを兼ねる門柱には、わざわざ石材を貼ることは稀だという。非常に残念なことだ。

話が散漫になってしまった。最後に、我が家のもうひとつのアンモナイト的なものを。ここにも対数螺旋やフラクタルは隠されていそうな気がする。

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