ナンチャッ篆書
お正月に書いた書き初め。
先日、さや香さんからコメントをいただいたのを機に読みなおして、最後に謎文字を載せたままだったのを思い出した。かのエントリでは、無粋だからと何も説明しなかったけど、そのままにしていたのでは、ワケのわからない篆書っぽい落書きで終わってしまいそうだ。
そういうわけで、このnoteはその謎文字のフォローアップ。
これは、日本語でも中国語でもなくて、さらには漢字でもない。実はアルファベットで書いた英語。90度かたむけるとそれらしく見えるようにしたつもり。書き初めの「無病息災」と、このコロナ禍にちなんで、”No more pandemic”と書いた。
この篆書っぽい英文("ナンチャッ篆書"と勝手に命名!)のアイディアは、わたしのオリジナルではない。10年以上前のことだけど、当時の職場の同僚に、タイポグラフィと落語が趣味という、とても素敵な方がいた。ある時、彼女から「これを読んでみてください」と紙切れを渡されたことがあった。それは、マーティン・ルーサー・キング・Jrの"I have a dream"で始まる、あの有名な演説。篆書を模した、このスタイルの作品だった。
何がきっかけで解読できたのかは、もうよく覚えていない。はじめは、漢字だとばかり思い込んで睨めっこしていて、どれかの文字で英語なのに気がついたのだったと思う。
わたしたちは、多かれ少なかれ、"思い込み"に支配されている。思想や哲学といった、抽象的で大きな枠組みはもちろんだけど、視覚的に認識できる文字のようなものだって同じ。特に、自分たちが実際には使っていない文字体系だと、印象だけで「○○の言葉っぽい」などと判断してしまいがちだ。
以前、日本語じゃないかと見せられた、タイのキャンディの包みに書かれた文字を思い出した(以下のツイート参照)。日本語っぽいのが人気なのだということだった。そういえば、英国のアパレルブランドにも日本語を使ったブランドがあったっけ。
アルファベット文化圏からは、東洋の漢字が神秘的に見えて人気だというのは、よく聞く話。日本でも、雰囲気を重視して、おかしな表現でも"横文字"が、しばしば使われている。だけど、元々の文字体系での表記を維持しつつ、外見だけ別の文字体系の書体を模すというのは、あまり思いあたらない。
その点で、このナンチャッ篆書は、かなり秀逸だ。
一見、由緒ある、あるいは考古学的に重要な存在であるかのような雰囲気を漂わせている。にもかかわらず、盛大にパロディ化してしまっている。どこどこの流派の何段、みたいな難しい事情だって全て笑い飛ばしてしまう。
篆書もどきの英文、検索してみたら、かなり本格的なウェブサイトがあった。ナンチャッ篆書なんてふざけた名前ではなく、Vertical English Calligraphyと命名されている。作品はもちろん、練習用のワークブックまで販売されている。English Brush Calligraphyの項目の中には、上で触れたキング牧師の演説の作品もある。これに倣って、好きな詩を書いてみたのが、ヘッダ画像。興味ある方はぜひ、トライしてみてください。
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