『N響ザ・レジェンド』が示したジャン・フルネの「ドイツ音楽に対する手腕の確かさ」

昨夜は、19時20分から21時まで、NHK FMで『N響ザ・レジェンド』を聴取しました。

今回は「フランスの巨匠 ジャン・フルネ ドイツ音楽プログラム」と題し、ジャン・フルネの指揮したドイツ音楽の特集が組まれ、1991年のNHK交響楽団の定期公演の様子などが紹介されました。

第1曲目はフルネとNHK響の最初の共演となった1958年11月12日のラジオ番組『希望音楽会』の公開収録の様子で、ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』が取り上げられました。

この曲の勘所となる第1フルートの演奏の確かさから、当日の演奏を担当したのが吉田雅夫であろうと推察されたのが印象的な内容でした。

続けて放送されたのは、1991年9月18日に行われた第1150回定期公演の実況録音です。

番組内でも池辺晋一郎さんが紹介されたように、フルネはオットマール・スウィトナーの代役として第1150回定期公演に登場しました。そして、健康状態の悪化により、スウィトナーがNHK響と共演したのは1989年11月の第1096回定期を最後となっています。こうした経緯を踏まえると、この日の録音はひときわ感慨深いものです。

第1150回定期公演の第1曲目はメンデルスゾーンの序曲『ルイ・ブラス』で、瑞々しく彩り豊かな演奏を聞くと、フルネが「フランス音楽の指揮者」に留まらない手腕の持ち主であったことが改めて実感されました。

第2曲目のヒンデミットによる交響的舞曲は、管楽器の流麗さと弦楽器の滑らかさが印象的で、フルネの指揮は作品の持つしなやかさと端正さを浮き彫りにしていました。

最後に放送されたブラームスの交響曲第2番については、1995年6月4日にNHK教育テレビの『芸術劇場』で放送された際に視聴しており、私が演奏そのものに接するのは25年ぶりとなります。

フルネが指揮者として最後の演奏会を行ったのが東京都交響楽団の第619回定期演奏会であったこと、さらに国際的に活躍する外国人の指揮者が日本の楽団の演奏会で引退したのは異例であったことは広く知られるところです。

そして、結果論的ではあるものの、約70年に及ぶ指揮活動を終える際に選ばれた作品がブラームスの交響曲第2番であったこと、さらにNHK響の定期公演への登場が最後となった第1150回定期公演でも同じ曲が選ばれていたことは、フルネにとってこの作品の持つ意味の大きさが窺われました。

今回改めてフルネの指揮によるブラームスの交響曲第2番を聞くと、やはり管楽器の扱いが巧みであるばかりでなく、第4楽章の最終小節に向けて時に結び付き、時に離れる旋律を緻密に練り合わせて彫の深い音楽に仕上げる点に、大いに手腕を発揮していることが実感されました。

東京都響での「引退公演」を東京文化会館の最前列で鑑賞した時にはひときわ思い入れのある作品であることが実感されました。そして、今回1991年の録音を聞いたことで、改めてフルネの幅の広さを確認できたところでありました。

<Executive Summary>
"NHK Symphony Orchestra" Shows Jean Fournet's High Ability for German Romantic Music (Yusuke Suzumura)

A radio program of the NHK-FM entitled with "NHK Symphony Orchestra the Legend" was on the air on 19th September 2020. In this time German Romantic music, including Brahms' second symphony, was broadcasted. Conductor was Jean Fournet.

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