NHK交響楽団第1987回定期公演

昨日、NHKホールにおいてNHK交響楽団の第1987回定期公演が行われ、NHK FMでの実況中継を鑑賞しました。

今回は、ショスタコーヴィチの交響曲第8番が取り上げられました。指揮はジャナンドレア・ノセダでした。

ノセダがショスタコーヴィチを得意とするのは、ロンドン交響楽団と行ったショスタコーヴィチの交響曲全集の録音からもよく分かります。

一方、NHK響にとってショスタコーヴィチはいつでも演奏できるものの、必ずしも得意とはしない作曲家です。

従って、両者の組み合わせがどのようなショスタコーヴィチを作り上げるかは、この日の公演の最大の関心事でした。

それでは、どのような結果が得られたかと言えば、粘り強さや重厚さはないものの、各旋律が明瞭な輪郭を伴って描き出されることでかえってショスタコーヴィチの音楽作りの、底光りする恐ろしさがよく表現された演奏となりました。

例えば、第1楽章の木管楽器や第2楽章の金管楽器などは躍動感があり、それだけなら軽やかさに比重の置かれた演奏になります。

しかし、例えば後景に退いている弦楽器に対して冷淡なまでの無表情さに徹することを通して、蠢動と静謐の色合いを際立たせる様子などは、楽団が指揮者によって新たな表現方法を手に入れ、指揮者も楽団を通して自らの思い描く音楽を仕立て上げられるという、ある種の理想的な関係が実現されていました。

もちろん、息が切れるような心もとなさを感じさせる場面も皆無ではなく、改めてショスタコーヴィチは中盤をいかに乗り切るかが重要であるかを示していました。

それでも、様々な表情を見せる作品を最後まで豊かな音量とともに演奏したことを含め、今回はとりわけNHK響にとって得るところの大きな公演であったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 1987th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK symphony Orchestra held the 1987th Subcription Concert at the NHK Hall and broadcasted via the NHK FM on 16th June 2023. In this time, they performed Schostakovitch's 8th Symphony. Conductor was Gianandrea Noseda.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?