オフシーズンも危険と隣り合わせの大リーガー

2023年11月28日(火)、日刊ゲンダイの2023年11月29日号27面に連載「メジャーリーグ通信」の第151回「オフシーズンも危険と隣り合わせの大リーガー」が掲載されました[1]。

今回は、大リーグにおけるフリーエージェント市場を中心とする年俸の高騰の背景を、球団の経営環境のあり方から分析しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。


オフシーズンも危険と隣り合わせの大リーグ選手
鈴村裕輔

間もなく2月となり、大リーグもオフシーズンが終わりスプリング・トレーニングの季節を迎える。

大リーグの選手にとっては、オフシーズンもなすべきことは多い。

家族や友人たちと感謝祭を過ごし、クリスマスを迎えるのは当然としても、日々の過ごし方はシーズン中以上に気を遣うのである。

それは、体調の維持や健康管理だけに限らない。いかにして事故を起こさず、また事故に巻き込まれないかが重要になる。

オフシーズンに事故に巻き込まれた大リーグ選手として現在まで語り継がれるのは、1972年12月31日のロベルト・クレメンテの一件だ。

ニカラグア地震の発生を受けて救援物資を運ぶ途中、航空機の故障を原因とする飛行機事故により落命したのがクレメンテだった。

そして、通算3000本安打でシーズンを終え、どこまで記録を伸ばせるか注目を集めた中での遭難だっただけに、大リーグ機構は慈善活動や社会活動を行う選手に送っていたコミッショナー賞の名称をロベルト・クレメンテ賞に改めたし、全米野球記者協会は特例としてクレメンテをただちに野球殿堂入り選手に選出するなど、生前の功績を讃えた。

だが、クレメンテの場合は例外で、その他の選手の場合は自らが引き起こした事故によって大きな代償を払っている。

2018年以来ヤンキースの監督を務め、6年間で5回ポストシーズンに進出しているアーロン・ブーンは、選手時代の2004年1月にバスケットボールを行った際に左膝の靭帯を断裂している。

ブーンはヤンキースと交わした契約の中でバスケットボールをすることが禁じられていた。それにもかからずバスケットボールを行って怪我をしたため、ブーンはただちに解雇されている。

また、最近でもオフシーズン中にオートバイを運転し、左手首を骨折する事故にあったフェルナンド・タティス・ジュニア(パドレス)は、2022年3月に手術を受けることとなった。

この年は術後の回復を待つためにマイナーリーグでの調整を行っていたものの、この間に禁止薬物の使用が確認されたため、大リーグの公式戦80試合の出場停止が課されている。

このように、試合中は一瞬の不注意が大きな事故に繋がる選手たちは、オフシーズンも様々な危険と隣り合わせなのである。


[1]鈴村裕輔, オフシーズンも危険と隣り合わせの大リーガー. 日刊ゲンダイ, 2023年11月29日号27面.

<Executive Summary>
An Off-Season Is not for the Days of Rest for the MLB Players (Yusuke Suzumura)

My article titled "An Off-Season Is not for the Days of Rest for the MLB Players" was run at The Nikkan Gendai on 29th November 2023. Today I introduce the article to the readers of this weblog.

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