今後の展開を期待させる『クラシックの迷宮』の特集「N響ザ・ヒストリカル」

昨日放送されたNHK FMの『クラシックの迷宮』は「N響ザ・ヒストリカル」と題し、ジョセフ・ローゼンストックの指揮によるNHK交響楽団の演奏の録音が紹介されました。

『クラシックの迷宮』は毎月末の放送をNHKの保有する音源を基に紹介していしており、今回は2021年3月まで放送されていた『N響ザ・レジェンド』を引き継ぐ形で行われた初の試みです。

ローゼンストックが、1936年にNHK響の前身である新交響楽団の専任指揮者となり、1946年に離日するまで新響と新響が改組した日本交響楽団の発展に貢献し、さらに1956年3月から1957年3月までNHK響の常任指揮者を務めたことは周知の通りです。

今回放送されたのは以下の5曲でした。いずれは指揮はローゼンストック、管弦楽はNHK交響楽団です。

ワーグナー/歌劇『タンホイザー』序曲(放送日不詳)
「わが祖国」から 交響詩「ボヘミアの牧場と森から」(1956年3月14日放送)
ストラヴィンスキー/バレエ音楽『春の祭典』(第2部の序奏および「乙女たちの神秘なつどい」の抜粋、1956年3月10日放送)
ショスタコーヴィチ/交響曲第1番(NHK交響楽団第589回定期公演実況録音、1972年12月収録)
ゴトヴァツ/交響的コロ舞曲(場内放送とローゼンストックの告別の言葉を含む、1957年3月22日放送)

現在の水準からすれば物足りなさの残る演奏もあったとはいえ、どちらかと言えばくすんだ音色によって重厚感を強調し、次の展開から逆算して音楽を組み立てる見通しのよさは、ローゼンストックとNHK響の結び付きの強さを印象付けるものでした。

特に旋律の重心を低めに取る音楽作りは、木管楽器を中心に旋律を浮き立たせる現在のNHK響の演奏からすると隔世の感があり、「ドイツ音楽が得意」という評価を得ていた往時の楽団の様子を活き活きと描き出していました。

『N響ザ・レジェンド』は終わったものの、その時間枠を引き継ぐ形で放送時間を拡大させた『クラシックの迷宮』が特集「N響ザ・ヒストリカル」を組んだことは、2026年の楽団創立100周年という節目と、NHK響の機関誌『フィルハーモニー』に「N響百年史」を連載する片山杜秀先生が司会を務める番組ならではの試みです。

今後も、折に触れて音で聞くNHK交響楽団の100年の軌跡としての「N響ザ・ヒストリカル」が放送されることが願われます。

<Executive Summary>
The "Labyrinth of Classical Music" Starts a Remarkable Feature Programme "The NHK Symphony Orchestra the Historical" (Yusuke Suzumura)

A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcasted via NHK FM featured "The NHK Symphony Orchestra the Historical" on 24th June 2023. It might be a meaningful opportunity for us to remember development and challenges of the NHK Symphony Orchestra with historical records.

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