2022年のロベルト・クレメンテ・デーが示す「大リーグにおける多様化の推進」の一側面

現地時間の9月15日(木)、大リーグではロベルト・クレメンテ・デーが催されました。

これは、1955年から1972年までピッツバーグ・パイレーツに所属し、通算3000本安打を記録したものの、1972年12月31日にニカラグア地震の被災者に救援物資を届けようとした際に起きた航空機事故により落命したロベルト・クレメンテ選手を讃え、没後30年となる2002年に始まった催事です。

クレメンテ選手の没後50年目、さらにクレメンテ選手の背番号21と同じ21回目の開催となった今年のロベルト・クレメンテ・デーでは、パイレーツの選手、監督、コーチが全員背番号21を着用したほか、他の球団でもラテンアメリカ系の選手が背番号21のユニフォームを利用するなど、クレメンテ選手に敬意を表しました。

また、タンパベイ・レイズは、トロント・ブルージェイズとの試合に先発したのが全員ラテンアメリカ諸国で生まれた選手という、大リーグ史上初の取り組みを行いました。

本拠地タンパはヒスパニック系米国人が多い地域であるという特色を考えれば、レイズがラテンアメリカ系の選手のみを先発出場させるという措置は、プエルトルコ出身のクレメンテ選手の功績を称賛するには格好の方法であったかもしれません。

しかし、これまで大リーグの歴史の中で行われてこなかった出来事が起き、しかも途中で選手の交代があったとはいえ11対0でブルージェイズに勝利したことは、今回の試みが単なる形式的なものではなく、ラテンアメリカ系の選手のみで試合を行えるほどこれらの地域出身の人材の層が厚いことを示します。

さらに、たとえ1試合のみであるとしても、大リーグの選手の出身国や地域の内訳を見れば少数派に属するラテンアメリカ系の選手のみで試合開始に臨むことは、2020年に入ってから本格化した、性別や人種、あるいは出身国・地域などの枠を超えた人材の登用を進めようとする大リーグ機構の政策とも合致するものです。

その意味で、今回のロベルト・クレメンテ・デーは大リーグにおける人材の多様化の推進の一端が示されたと言えるでしょう。

そして、来年以降のロベルト・クレメンテ・デーでどのような取り組みがなされるか、興味深く思われるところです。

<Executive Summary>
The Roberto Clemente Day 2022 Shows an Aspect of Diversity in the MLB (Yusuke Suzumura)

The Roberto Clemente Day 2022 is held at the MLB on 15th September 2022. On this occasion we examine a meaning of the day based on a viewpoint of MLB's diversity policy.

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