「安倍派のパーティー券問題」は派閥政治が持ついかなる問題を教えるか

現在、政界で新たな問題として浮上しているのが、自民党の派閥による政治資金集めのためのパーティーに関して、安倍派がパーティー券の販売利益を還流させていたという問題です。

派閥は保守各党が統合を重ねて誕生した自由民主党にとって、結党時に前身となる各勢力を基礎とする、保守合同の産物の一つと言えものです。

そして、1956年12月の総裁選挙によって劣勢であった石橋湛山が優位に選挙戦を行っていた岸信介に決選投票で勝利したことで、権力を掌中に収めるための基本的な単位として派閥の重要性が認識されました。

その後は特に1964年11月から1972年7月まで続いた佐藤栄作内閣の下で、派閥の大小が政治力と直結する派閥政治が全盛を迎えることになります。

1980年代から1990年代にかけての政治改革の潮流の中で小選挙区制が施行されると派閥ではなく総選挙での公認権を持つ党本部の地位が相対的に上昇し、一時は派閥政治が影を潜めたかに思われたものの、2012年12月に発足した第2次安倍晋三内閣が長期政権化したことで、再びその意味に重みが増してきたことは、政治における理想と現実の関係がいかなるものであるかを教えます。

それとともに、政治資金の動きに関する法律が現在に比べて緩やかであった時代はともかく、自民党政治の根幹ともされた派閥政治が党の金権的な体質を生み、国民の支持を失っていったという過去を眺めれば、今回のような派閥単位での不正な資金の運用は、政治資金規正法をはじめとする関連法規が制定された背景をないがしろにし、政治のあり方そのものをゆがめかねないものです。

何より、自民党がかつて2度にわたり政権政党の座を失ったのは、国民がその金権的な体質を嫌い、汚職や不祥事を顰蹙し、あるいは国民を軽視して党利党略、個利個略を優先する姿勢を許さなかったためであることは明らかです。

その様な経緯を忘れたかのような今回の一件は、一面において過去の失敗に学ぶ謙虚さを失っている自民党の現状を物語るとともに、他面では過去の事例と同様に国民の支持を失う日が遠くないかもしれないことを告げます。

それだけに、今回の出来事に対して自民党が党としてどのような対応を取るかは重要ですし、自らも池田勇人以来の伝統を持つ宏池会の一員であることを誇り、派閥単位での政治を志向する岸田文雄首相にとっても、党総裁として果たすべき役は小さくありません。

殷鑑不遠という言葉が思い出される状況に際して、今後の動向が注目されます。

<Executive Summary>
What Is the Meaning of the LDP's Political Fund Scandal? (Yusuke Suzumura)

The Abe Faction of the Liberal Democratic Party faces the political fund scandal. On this meaning, we examine the meaning of this issue and the adequate attitudes for them to solve the scandal.

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